第3話『冬の生ところてん』②
お待たせ致しましたー
怜は生ところてんを結構気に入ったようで。
それからは、裕司と言うか裕司の祖父母の手前、もう一杯と遠慮していたのを……ひとみが『いくらでも食べていいわよ?』と言ってくれたのと。
「もっといくらでも食いな!」
啓司からも遠慮するなと言ってくれたのもあり……カロリーがただでさえ低いと言う情報もプラスしたため、怜は食べれるだけ食べて行く。味付けもひとみが『これはどう? これは』と、さながらペットに餌を与える勢いでどんどん与えるため……怜も嬉しそうに頬張ったのだ。
「美味しかったです……」
裕司も一緒に食べていたが、今日は彼女の方がよく食べただろう。たしかに、これだけ食べさせるのなら……店に行くより家で食べた方が元手も心配がいらない。
なので、怜が片づけも手伝うとひとみと皿洗いに行っている間に……裕司は啓司へ代金を払おうとしたが。
「いいんだって。あんなに気持ちよく食ってくれたんだ。たまにはもてなすくらいいいだろ?」
「けど……生ところてんって安くないでしょ?」
「まあ、そうだが……じゃあ、あれだ。この後風呂に出かけよう。そこんとこの費用、俺達はいいから自腹で頼む」
「……それお礼になる?」
「俺達は回数券あるしな? 地味に高いからそっちは裕司が払うんだ」
「……わかった」
そして、地元の日帰り温泉地でも実演販売の生ところてんが売っていて……味もとろろがあったため、怜が食べたそうにしていたから買ってやった。
たしかに、こちらも保存液などに浸かっていないので独特の匂いもなく、ぷりぷりとした歯応えなどが段違いだった。
「美味しいねぇ、こもやん」
湯上がりのほてった顔に、少しばかりときめいたが……可愛らしい笑顔に裕司も頷いてやった。
そこからは、バイトやお互いの学校へのお土産を買うのに啓司達のアドバイスももらいながら買い物を済ませ。
帰る頃には、念のため持ってきたキャリーバックがパンパンになっていた。
「またいつでもいらっしゃい」
「なんなら、裕司の嫁さんになって挨拶に来てくれ!」
「じいちゃん!?」
既に他の孫は結婚しているからひ孫がいるのに……本当に、怜を気に入ったようだ。怜に振り返るとめちゃくちゃ顔を赤くしていた。
「まあまあ。本当にそうなっていいのよ?」
「ばあちゃんまで……とにかく、また正月には俺来るから」
「怜ちゃんも連れてきていいのに」
「怜ちゃんは自分の方があるから!!」
特急の時間も迫っているので、怜の腕を引っ張りながら改札を通る。ホームに降りても、怜はまだ顔が赤かった。
大丈夫か声をかけようとしたら、怜がいきなり裕司の腕を掴んできた。
「あ、あれ、冗談……じゃないよね!?」
どれ、と言うまでもなく啓司の言葉だろう。
「……半分以上本気ぜよ」
「えぇええぇ!!?」
「まあ、それはおいおい」
「こもやん、どっちぃ!?」
「とりあえず、特急来たから乗ろ」
「……うぃ」
プロポーズもだが、まずは同棲もしなくては。
裕司としては、もうすぐ来る来年のために色々考えている最中だった。
次回は16時15分〜




