第2話『冬の生ところてん』①
お待たせ致しましたー
昼ご飯もまだだったので、半分は食事も兼ねた食事会となりそうだった。
裕司は問答無用で手伝わされたが、怜は客人だからと座らせていたけれど……バイトがテーブルセッティングなどが多いため、結局一緒に用意したいと言い出した。
お陰で思った以上に手早く用意出来たため……怜には、麺状になる前の生のところてん部分を見てもらうことが出来た。
「……これがところてんですか??」
ぱっと見、細長いブロックでうっすら緑色。
夏に裕司がまかない処で出したところてんもだが、市販だと麺状のものが保存液などに浸かり、袋詰めになっているから新鮮に見えたのだろう。
「そうさ? ここいらは寒天の製造場所が多くて……ちょいと頼めばこういう売り方もしてんだよ。寒天って、寒い天って書くだろう? だから、冬のほんのちょっとの間だけ……保存液に漬けない新鮮な状態のところてんを楽しめんだ」
「! 夏のよりももっとですか??」
「ああ。比べもんにならないよ? しっかし、裕司? 彼女ちゃんにところてん食べさせに、わざわざこっちに連れてきたのかい?」
たしかに、祖父母に言われるまでもなく、初回の旅行にしては地味かもしれない。
すると、怜が首を横に振った。
「いえ! 裕司……君が、私がところてん苦手だったんですけど。美味しい食べ方を教えてくれたので、克服出来たんです!! だから、今日はとっても楽しみにしてきたんですよ!!」
「……怜ちゃん」
本当に、嘘偽りのない笑顔だからこちらがとても嬉しく思ってしまう。啓司らも嬉しくなったのか、じゃあ食べようと……見本で器の中にところてんを突きで作って行く。
実演販売やテレビなどで見られるような、ちゅるんとした登場の仕方に……怜は『おお!』と声を上げてくれた。
「こんな感じだ。怜ちゃんもやってみるかい?」
「いいんですか?」
「自分でやってみたいだろう?」
「はい!」
ブロックのひとつを落とさないように手に持ち……ゆっくりと突きの中に入れたら、専用の棒を入れて押し出して行く。これも、ちゅるんと器の中に出ていった。
これも、あとは裕司の分やひとみのも怜が作って行く。
「さあさ。酢醤油や黒蜜もいいけど、長野だから野沢菜とかわさび醤油も用意したわ。それと、ラー油も」
ラー油のは、夏に裕司が怜に食べさせたが……怜はまず定番だからと黒蜜をかけていた。なら、裕司もと同じようにする。
いただきます、と手を合わせてから箸を動かして行く。黒蜜のおかげもあるだろうが、テングサの匂いもほとんどなく、食べやすいところてんとなっていた。
ちゅるんとした感覚もだが、噛み応えや喉越しも保存液に浸けてあるのと段違いだ。たしか、保存液に浸けていないから賞味期限なども一週間ないとリサーチした時に見たが……ブロックはまだまだある。怜と裕司がいるとは言え奮発し過ぎだ。
それほど、裕司が彼女を連れて行くのが嬉しかったのだろう。
怜本人も。
「おかわり……しちゃっていいですか?」
生ところてんが気に入ったのか、ひと皿をあっという間に食べ終えていた。
次回はまた明日〜




