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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第十四章 小森の場合⑦
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第1話 長野へ

お待たせ致しましたー

 年末も間近。


 ほぼ年越しと言っていいか、裕司(ゆうじ)は恋人の(れい)に前々から連れて行きたい場所に、今日向かっているところだ。


 県外も県外。特急などを使って、長野県に。



「おー……新幹線じゃないけど、早い」



 子供ではないが、怜はそれなりにはしゃいでいた。考えてみれば、デートや遊びに行くのは殆ど県内で済ませていたので……ちょっとした旅行にも連れて行ったことがない。


 今回は、夏頃に怜が克服出来た『ところてん』を食べに向かっているのだ。しかも、この冬の時期にしか食べられない『生ところてん』と言う地元ならではの美味を。


 裕司も昔の帰省はともかく、高校以降は正月でもきたかどうかのうろ覚えだった。しかし、大好きな彼女のために、それなりにリサーチしてから……母方の実家に連絡を入れると『連れてきなさい!!』と返事があった。


 大はしゃぎしないか少し心配だったが、裕司が彼女を連れていくのが初めてだから嬉しいかもしれない。



『次はー』



 アナウンスが鳴った時に、裕司達が降りる駅名が聞こえてきたので……降りる準備をして出口に向かえばすぐに車両が停止した。



「段差あるから気をつけて」


「ほいほい」



 お互いに気をつけて車両から降り……エレベーターを使って改札に行く。日帰りではあるが、裕司の祖父母にとお土産が少々あるので……移動に使えるところは使う。


 無人駅ではないが、都会に比べると規模の小さい駅の改札口はそれなりに小さい。裕司らを迎えにきた祖父もすぐに会えた。



「やーっと来たか!」


「じ、じぃちゃん。い、痛い!!」


「お前が待たせるからだ!」



 祖父と言えど、まだまだ若々しさが消えていない……裕司と背丈もあまり変わらない祖父は相変わらず元気だった。祖母はいないようだが、家の方だろうか。



「は、はじめまして!! 眞島(まとう)(れい)と言います!!」



 裕司と祖父がじゃれている間、頃合いを見て怜が祖父に挨拶をした。ちょっと緊張しているところが可愛かったが、今は愛でている場合ではない。



「お! ご丁寧に。おじいちゃんは吾味(ごみ)啓司(けいじ)って言うんだ。おじいちゃんでいいよ?」


「そ、そんな!」


「じいちゃん……」



 気が早いというか、もう怜を気に入りかけているらしい。これまで彼女を紹介したことがないので、それが嬉しいのだろう。


 祖父は寒いだろうから移動しようと、どうやら実家に連れて行ってくれるらしい。あとで、生ところてんの販売店に連れて行ってくれるかと思ったが。



「まあまあ! あなたが裕司の彼女さん? なんて可愛いらしいのかしら!!」



 祖母のひとみも、怜が挨拶したら抱き付かんばかりに声を上げていた。怜は顔を赤らめていたが、嬉しくないわけではないようだった。裕司から手土産を渡せば……長野だとこれも有名な塩羊羹を茶請けに出してくれた。


 スーパーに売っているタイプで、ひと口サイズが切り込みを入れた箇所から飛び出て口に入れやすいのである。



「……じいちゃん、ばあちゃん? あとで怜……ちゃんをところてん屋に連れて行くんだから、あんまり食べさせ過ぎんで?」



 ついいつもの癖で、『やん』と呼びそうだったから……慌てて呼び変えた。それが新鮮だったのか、怜ははにかんでいたが。



「なーに。店に行かずともここでやるさ」


「え? 買ってきたの??」


「店だと味が決まってるだろう? なら、酢醤油や黒蜜以外も用意したさ」



 今日のために、わざわざところてん突きまで買ってしまったらしい……。

次回は16時15分〜

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