表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/192

第4話『思い出のAセット』②

お待たせ致しましたー

 だから自然に任せて気持ちを昇華させようとしたが……裕司(ゆうじ)から彼女と別れたと教えてくれたのだ。


 それがちょうど、(れい)がうっかり彼の前で盛大に転けてしまった後。


 送るから、と手を貸して帰宅する時に……裕司が言ったのだ。



「他よりも、目を離せない子を見つけたからぜよ?」



 と言って、空いている手で怜に額を軽く小突いた。それだけで、期待がめちゃくちゃ膨らまないわけがない。



「……自惚れていいのかね?」


「もちろん。今日だって、めちゃくちゃ焦った。大したことなくても、怪我した怜やんばっか優先したくらいだから。あいつとは……悪かったけど、あんまりうまくいってなかった。理由は今日ちゃんと理解したぜよ。もう、俺は怜やんに傾いていたんだって」



 相手にも怜にも失礼だろうが、と裕司が言うのに。怜は首を横に振って……打った箇所が痛むのも気にせずに、彼の首に手を回す。少し身長差はあったが、裕司も受け止めてくれた。



「こもやんがいい! 好きなの!!」


「俺もぜよ、怜やんが好きだ」


「うん、うん!」



 たしかに、少し不誠実な部分はあったが……裕司也に相手に別れを告げてきたので、真正面に近い角度で怜に気持ちを告げてくれた。


 裕司としては、もう少し格好をつけたかったらしいが……怜の今日の怪我で、余計にほっとけなくなったようだ。この子の近くに、いち早く駆けつけたい存在になれるように……と。


 道端なのでキスはしなかったが、手を恋人繋ぎにしてゆっくり帰ったのはいい思い出だった。


 それから一年くらい経つが……ゆっくりした付き合いでも怜は満足していた。


 相変わらず、ふざけた口調遊びで楽しむくらいのコミュニケーションも出来ている。まかない処では、彼の日は美味しいまかないを作って食べさせてもらえている。


 お互いの部屋も、友達付き合いだった時より行き来しているし……共寝もしている。触れ合うことはなくとも、服越しの体温が伝わる感触は怜にとって嬉しかった。腕枕とかは、裕司の大事な料理の腕なので控えている。


 皐月(さつき)に言うと、何度か呆れられたりもしたが……熟年夫婦かともからかわれた。



「こもやんは、こもやん也に考えてくれているかもしれないんだよ」


「てっきり、あんたが二十歳になったら一線越えるかと思ってた」


「……まあ、私も思ったけど。でも、いいんだよ」



 指輪もきちんと選んで贈ってくれるくらい、裕司が怜を大事にしてくれるているから。


 笑顔で答えた怜に、皐月はヨシヨシと何故か頭を撫でてくれた。


 その日は、週一だけのバイトをしにホテルに行った。テスト期間でも、少しはバイトに行かないと学費を納められないからだ。これについては、裕司から学んだ。


 そして、ちょうど裕司がまかないの担当日で……彼の口から告げられた今日のメニューには。


『豚ミンチのオムライス』があったので、怜は迷わず頼んだ。


次回はまた明日〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ