第1話 行き来出来ない
お待たせ致しましたー
眞島怜、とあるビジネスホテルの宴会サービススタッフをバイトにしている……それ以外はごくごく普通の女子大生だ。
大学は私立大学だが、学業レベルが高いかと言えば普通。ただし、面白い選択講義があるので一年の時から受けまくっているので単位は十分に足りている。
交友関係も悪くない。講義をきっかけに顔見知りが出来て、一年のゼミで同じメンバーがそろえば……自然と話すようになり学食や弁当も一緒に食べたりするようになった。
そして……秋も深まってきた最近では。
「うぉおお、レポートが多いよぉ!!」
怜はキャンパス内の一室でテーブルに突っ伏していた。テーブルの上には雑多に様々な大きさの紙が散らばっている。
「……ほーんと、多いよね? 秋考査が近づくと」
答えてくれたのは、怜の大学内では結構な頻度で一緒にいてくれる友人だ。伊東皐月。シルバーフレームのメガネが似合う、いわゆる知的美人と言う女の子だ。
「さっちゃんはいいよね? 頭いいからサクッと終わって」
「おいおい。私だって普通の人間だよ? それに年一の特待生に選ばれるのに、日夜努力しているさ」
「それは知っているー」
怜達の大学では。
一学年にほんの数名だが、各講義の評価点を出来るだけトップをもらい……通年で少し下の評価を三つまでに押さえれば、わずかだが大学側から学費を少し免除してくれるのだ。
怜も挑戦したが、なかなか難しく……逆に、皐月は何とかクリア出来たので今年も目指しているわけだとか。怜は今年も夏までの結果を見て、すぐに諦めた。
「しっかし、怜は色々やってるねぇ? 漢文学、古典文学、創作講義、日本文化に神道系……」
「せっかくだから、色々受けたいのだよ」
文系ではあるが、多種多様な講義があるために……単位数のギリギリまで受講しているからだ。ただし、多過ぎてテストよりもレポートの方が考査期間になると多いが。
「わからんでもないが、ほどほどにしなよ? あとどんぐらいで提出出来そう?」
「んー……これと、これがあと仕上げ。こっちは今日頑張れば」
「いい感じじゃん? 愛しの彼氏様とも最近会えてないんだったら、週末には会えるんじゃない?」
「……それがさあ?」
「うん?」
皐月の言う、愛しの彼氏様こと小森裕司には最近会えていない。これには理由がある。
裕司にも専門学校とは言え、短大卒扱いになる資格を得るのに、考査やレポートはちゃんとある。今年もお互い似た時期だったので、集中するのに会わない条例を敷いたのだ。
「こもやんの方が、まだ時間かかるから……来週まで会えんのだよ」
「あや……」
「私の方が先に終わっても、部屋に行くのはダメだって決めたからねぇ」
「あんた達の決めたことだしね? ま、私も? 彼氏がこっちの部屋でのんきにゲームとかしてたら追い出すわ」
「おお、怖い」
皐月にも彼氏はいる。
裕司のように他校生ではなく、こちらの大学の四年生だ。彼も特待生なので、学費の融通もだがレポートや卒論以外は就活ばかり。
その就活も落ち着いてきたらしく、最近はのんびりと卒論に時間をかけているようだ。だから、皐月が言ったように、彼女の部屋に行く時は大抵ポータブルタイプのゲーム機を持参しているらしい。
「それでも……まあ、今まで頑張ったんだから。のんびりはさせてあげたいけど……って、怜! ニヨニヨしないの!!」
「んふふ〜、いや〜らぶらぶだなと」
「それは怜もでしょ!?」
「んふふ」
肉体の関係こそないが、怜もたしかに幸せだった。
付き合うようになって、約一年。出会って約一年半。
まさか、バイト先で彼氏が出来るかと思わなかったが。
次回は16時45分〜




