第1話 プロポーズされて
お待たせ致しましたー
「……俺と、結婚してください」
裕司から、バレンタインを一緒に過ごしてひと息吐いている時に……告げられた申し込みの言葉。
ここは、高級レストランでもアミューズメント施設でもなんでもない……ふたりの同棲の場所だ。
だけど、彼からの真剣な想いは言葉と態度だけで……十分に伝わってきた。
思わず、ブワっと涙が溢れてきたが……決して、彼の想いを否定したいわけじゃない。
「……怜やん?」
「……しい」
「え?」
「う……れ、しいよ」
交際はともかく、同棲をして三年目だ。
たしかに、婚約は随分と前にしたようなものの……結婚資金がまだ必要だから、とお互いに暗黙の了解を敷いていた。
それが……今日と言う日に、裕司の方から一線を越えてくれた。嬉しくないわけがない。
「……はあ。よかった」
裕司も安心出来たのか、怜の手は握ったままラグの上にどすんと腰掛けた。
それほど緊張してくれたことが嬉しくて……怜は泣き止んでからソファの上からダイブするように裕司に抱きついた。
「うん……うん!」
「絶対幸せにするぜよ?」
「絶対は嬉しいけど……一緒に、幸せになろう?」
「あ、そだね?」
お互いにくすくす笑い合ってから……自然と顔を引き寄せあい、何度かキスをした。
ある箇所を感じてしまったのだが、怜はキスを止めようとしない裕司の肩を強く叩いた。
「ゆーくん、明日早番」
「……ちぇ」
シチュエーションはバッチリだが、お互い社会人なので仕方がない。
続きはまた別日と言うことにして……怜は、とりあえず翌日には葛木ら上司に報告することにした。
「えぇ!?」
「お? 小森君がとうとう」
紫藤は大声を上げて、葛木は相変わらず落ち着いた雰囲気で驚いてくれた。
「具体的な日程とかはこれからですが」
「スケジュールは納得のいくように決めなさい? なにせ、一世一代のイベントなんだから」
「はい」
職種の関係もあるが、理解のある上司を持てて本当に嬉しかった。
あとで出勤してきた王や優樹菜達にも、揃って泣きそうな笑顔で『おめでとう』と言ってもらえた。
「これは……プチパーティーですよ!!」
「デス!」
「え? まだ決まっただけで……」
「忙しくなる前だからこそです!!」
「俺も賛成〜〜!!」
「しどたんはただ飲む口実欲しいだけでしょ?」
「くっつんだって」
「まあね?」
裕司は裕司で厨房側で似たようなことになっているだろう、と葛木がぼやいたが。
本当にそのとおりになったとLIMEから連絡があり……別々でお祝いパーティーもとい、飲み会をすることになった。
次回は16時15分〜




