第3話『豆腐でガトショー』①
お待たせ致しましたー
決行日当日。
豆腐は、木綿でも絹ごしでもどちらでも良い。
だが、滑らかさを考慮して……今回裕司は絹ごしを選んで購入しておいた。
他にも必要材料を用意して……怜にはまず、チョコレート菓子作りで一番重要な、チョコレートを刻む作業をしてもらっている。
「やーやー、自分で作るのはほとんど初めてだから大変だー」
「……ちなみに、学生時代のは?」
「ほとんど既製品だよー。友チョコも」
彼氏は一応いたらしいが、手作りは初めてだと言うのに……年甲斐もなく、優越感を感じ取れた。まだまだ青いな……と実感してしまう。
「ん。そんなけ刻めたら大丈夫ぜよ」
このために、家のまな板ではなく百均の安くて使い捨てに等しいものを購入した。チョコレートは、刻むことで傷ついたまな板に染み込み、漂白剤を使っても完全に取れるかどうかわからない頑固汚れになるからだ。
「これを……湯煎、だっけ?」
「耐熱用のボウルに入れて、蜂蜜と豆乳入れて溶かすぜよ」
「ほーほー、私はそれをすればよろし?」
「そだね。俺はオーブンとか準備しとく」
今回は特に温度計などは必要がない。適度に溶けて、豆腐などの材料が混ざればいい。
それぞれ、順序通りに動けば……ふたりでの作業のお陰かとあっという間に生地を型に流し入れるまで出来上がった。
「ほー? 見た目はほんと、チョコケーキ!」
「焼いても、多分普通のケーキぜよ」
「今は色々レシピがあるんだねぇ?」
「だねぇ」
プロである、中尾や山越らもネットを活用するくらいだ。素人だからとは言え、馬鹿には出来ない。
裕司も一度投稿を考えた時期もあったが、なんやかんや学業と仕事を両立する事で手一杯だったので……無理だった。
今は仕事が落ち着いてきているので、可能でなくもないが……創作してまでレシピを作るのはまだまだ難しい。山越に言ったら、怠慢しているだろうと怒られそうだ。
「うぉ〜〜!! 暴力的に良いチョコの匂いぃい!!」
オーブンに入れて、また一緒に片付けをしている間に……流れてきたチョコレートのいい香りに、怜は早く食べたいと顔に出ていた。
「焼き立ては食べれんぜよ?」
「ひと口も?」
「冷めた方が美味しいぜよ?」
「ひとかけらでも?」
「…………味いまいちぜよ?」
「くぅ!!」
しかし、焼き立てはどちらかと言うと甘味が薄いので……怜には申し訳ないが、我慢してもらうことにした。
そして、出来上がれば……匂いは部屋中に充満していき、さらに怜の欲望が剥き出しになったが我慢してもらったのだった。
次回は16時15分〜




