第3話 勘違いされた
お待たせ致しましたー
「うーん……急なのは仕方がないにしても」
翌日の出勤日。
裕司は中尾に智也達の事情を簡単に説明してから……総支配人の都築経由でプランナーに聞いてこいと、業務時間を使って打ち合わせとなった。
都築もだが、プランナーのひとり……鈴木と言う女性とはほぼ初対面だが、快く打ち合わせを承諾してくれたのだ。
「難しいですか?」
「ええ、そうね。特に四月に向けての披露宴の予約が多いわ。お友達さんの彼女さんは、まだ安定期じゃないでしょう? それを考えると六月以降ならなんとか。お腹は目立つでしょうけど今はマタニティを考えたレンタルドレスもいくつかあるから」
「……と言うと、七月?」
「お式は和式? 洋式?」
「それはまだなんとも……」
「現実を言ってしまうと即決がいいわ。何故かって、日本人は暦を意識して日取りを決めるの。大安が全てじゃないにしても、良い日にブライダルを進めた方がいいのは昔も今も同じなのよ」
「そこなんだよね……。俺もちょっと考えた」
都築が黙っていたのは、鈴木と同じ考えだったからだろう。
裕司としては、自分と怜の場合もしっかり考えなくてはと片隅に置いておく。ひとまず、今回は皐月と智也のプランだ。
「ご懐妊は大変喜ばしいことよ? それに、まだ若手でも費用が心配なら……うちじゃなくて、もっと安くて素晴らしいプランを組むところも紹介してあげれるわ。そこはいいのかしら?」
「ご本人からは、うちで考えてたと言っていました」
「あらそう? じゃ、あとで資料一式は揃えてあげるわ。小森君が渡してくれる?」
「そのつもりで。あと、鈴木さん達プランナーさんと打ち合わせしたいそうなので、予約日も確認いいですか?」
「ええ、いいわよ」
「良いご縁だねぇ。俺達の方も決定したら全力でサポートするよ」
「ありがとうございます」
とりあえず、簡単にLIMEで智也にメッセージを送ってから……鈴木に、一度電話での打ち合わせがしたいとも言われたので、電話番号を教えていいのかともあったため、続けて送った。
すぐに返事が来たので、今は手すきの時間だったかもしれない。返事の内容は諸々承諾したことだった。
「おう、小森。とうとう眞島ちゃんと結婚すんのか?」
ただ、まかない処に行くと……山越がとんでもない発言をしてきたのだ。
「……違いますよ。どこからの情報ですか?」
「違ったのか? お前さんが総支配人と鈴木ちゃんと打ち合わせするって、中尾の坊々が言ってたからてっきり」
「友人がおめでたになったんで、披露宴をここで開きたいから説明を簡単に受けに行っただけですって」
「なんだ。違うのか……せっかく祝いにしようとあちこち声かけたのに」
「…………は?」
何か嫌な予感がする……と、後ろを振り返れば。
同僚と先輩シェフらが、大袈裟なくらいにため息を吐いていた。
「なんだぁ……」
「とうとう、眞島さんと……って思ったのに」
「祝辞会の予約しようとか、紫藤キャプテン言ってたのに」
「……は?」
これはまずい、とまかないを食べるのは後にして……上階の怜とかの事務所に行けば。紫藤がひとり、上機嫌で何か書類を打ち出していた。
「あんれぇ? 小森君、おめでとうー!!」
「違いますから!? 源さんの勘違いです!! 俺じゃなくて、眞島さんと俺の友達がおめでたになったからプラン聞いて欲しいって頼まれただけです!!?」
「え? 違うの!?」
「俺達はまだです!!」
否定すると、紫藤は思いっきりがっくしとなってしまった。それを宥めるつもりがないので、次に怜にもきちんと告げなければ……とシフトを確認しようとすると。
休憩に行くのか、まかないのチケットを持った怜がちょうど戻ってきたところで。内容を聞いていたのか、苦笑いしていたのだ。
次回は16時15分〜




