第2話 軽はずみじゃない
お待たせ致しましたー
智也らの自宅に向かうと……皐月はいなかった。
さすがに昨日今日で出勤するわけにもいかないし、検査も色々必要と言うことで……数日婦人科に入院することになったのだとか。
「さ、入って入って」
「お邪魔します」
手土産に、ホテル内にあるデザート部門が併設で販売しているケーキを買ってきた。皐月と言うよりも、智也のために。
渡すと、それなりに喜んでくれたが……すぐに食べないと冷蔵庫にしまわれた。
今から話す内容が、ケーキを食べながらするものではないからだ。
「で? 話とは?」
だいたいは予想出来るが、どのパターンなのかはわからないので……裕司は少し身構えた。
すると、智也は少し長めに息を吐いた。
「……皐月とは、結婚したい」
「まあ、それは」
「妊娠がなくても、考えてはいた。けど……いきなり、それがあって」
「……混乱してると?」
「まあね」
男女のエチケットを守っていたらしいが、ある日うっかり忘れていたのだとか。
人間、誰しも完璧があるわけではないので……それは仕方がない。
その責任を背負う智也を、裕司は別に軽蔑したりはしないのだが。
いきなり、自分が新しい生命の父親になるのは誰だって混乱するのは無理もなかった。
「……俺には、聞いて欲しかったと?」
「……皐月の友人が彼女ちゃんだし。あっちはあっちで多分やり取りしてるだろうから。俺は……すぐ浮かんだのが裕司君だったからさ?」
「どうも」
一個違いとは言え、友人のような付き合いをしているので少し気恥ずかしかったが。
「……けど、誰かに直接言えて良かった。なんか、妙に気張ってたのがほぐれた気がした」
「それは良かった」
役に立てたなら何より……と、裕司は何か飲むなら代わりに淹れようかと聞くと。智也が一緒にコーヒーを淹れるのを手伝って欲しいと言ってきた。
インスタントではなく、きちんと電動ミルで豆を挽くところから。
これは、智也が唯一こだわっていることだそうだ。
「濃さを自分で調整出来るから、学生時代から世話になってる」
「うちも怜やんがやりますね?」
「その眞島ちゃんなんだけど」
「はい?」
「皐月が……式はともかく、披露宴は君達のホテルでしたいって前々から言ってたんだ。相場とか……プランナーさんとかに予約込みで聞いてもらえる?」
「いいですよ」
会社に貢献と言うわけではないが、請け負うことが増えれば……ホテル側も喜ぶだろう。
明日あたりに確認しようと智也に約束し。
怜にも、皐月にバレないように言っていいか聞くと、智也には本職もまじえて頼むと言ってくれた。
それと、智也が淹れてくれたブラックコーヒーは喫茶店やコーヒーショップ顔負けの美味しさだった。
次回はまた明日〜




