第4話『恵方巻きパーティー』③
お待たせ致しましたー
ひとしきり撒き終えた後。
逃げ回ったり、投げまくった時に気づいたが……いくつかは踏んづけてしまい。
手分けして、四人で片付けをしたらあっという間に終わり。
テーブルも片付けてから、いよいよ手製の恵方巻きを食べることになった。
「今年の恵方どっち?」
「南南西だってさ」
「どこどこー?」
「怜やん。あっちだ」
なので、裕司が教えてくれた方向を向き。
無言で食べなくてはいけないので、四人とも恵方巻きを手に方角を向き……いざ、と大口を開けて口に入れれば。
(美味しい……!!?)
端であるいびつな部分から口に入れたが。
裕司が提案してくれたように、白身魚にだし醤油をつけたお陰か……単純に醤油をつけただけより、ずっとずっと美味しく感じ取れた。
四人とも思い思いの恵方巻きを作ったが、怜はほとんどの具材を巻き込んだ。
ブリもだが、サーモン、マグロにツナマヨ。野菜はきゅうりを二本ほど入れただけ。個性の強い組み合わせだが、美味しければなんだっていいのだ。合間合間に、一直線ではなくバラバラに散らしたいくらの相性とも抜群。
時々ぽりぽりと食感の良いきゅうりがツナマヨといくらの味に、良いアクセントをくれる。
夢中で食べすすめていくが、ひとつ忘れていた。
恵方巻きは、食べている間に願い事をする風習があることを。
口では言えないが、怜は健康長寿以外にも……仕事や裕司とのことを願った。
まだすぐじゃなくとも、裕司といつか結婚して子供を授かりたいと言う願いを。
他の三人も、見た限りでは普通に食べ進めているが……怜と同じように何か願っているかもしれない。
それから十数分後。
何とか、恵方巻きを食べ終えた後は……まだ豆を食べる行事が残っていたけれど。裕司が大丈夫だと大きめの鍋で何か作り出した。
「ゆーくん、何してるの??」
「んー? 福茶入れようと」
「福茶??」
「節分のノルマこなすのにも、便利な日本の伝統茶」
「へー?」
梅干しに昆布の佃煮。
あと、落花生ではなく、買っていた炒り大豆。
それらを使って、鍋で煮出していくと……とても良い香りがした。
裕司は自分達以外に来客用のマグカップを怜に出すように頼んでから、四人分に分けて鍋の中身を入れていった。
「お待たせ。福茶です」
「「福茶??」」
怜と同じような反応をした皐月達だったが、香りの良い福茶のマグカップを受け取ると……『ほぅ』と言うような表情になった。
「いい匂い〜」
「これ飲むとなんかあんの?」
「節分の豆使ってるんで、食べるよりいいかと。ちゃんとした伝統茶です」
「「へー!」」
ひと口飲んでみると……梅干しも昆布もあるので……甘じょっぱい梅昆布茶を飲んでいるような気分になれた。
皐月らも気に入ったようだが、熱いのでゆっくりと飲んでいた。
「「おいし〜!!」」
「よかった」
裕司は笑顔になっていたので、振る舞った甲斐があったようだ。
本当に、料理もだが気遣いが素晴らしい婚約者様である。
「恵方巻きもだけど、こう言うノルマ消化もいいな?」
「ほんと。小森さんありがとうございます」
「役に立てて何より」
お腹も膨れたが、久しぶりなので酒でも飲もうかと言う時に。
何故か、皐月がいきなり口を押さえだしたので……怜は一瞬食中毒症状かと思ったが。
智也が慌ててシンクで吐き出させた後、裕司が呼んだ救急車でふたりは病院に。
それから、数時間してLIMEで智也が連絡してくれたのだが。
食中毒ではなく……なんと、妊娠だと判明したのだった。
次回はまた明日〜




