第4話『濃厚エビのビスク』
お待たせ致しましたー
クリスマスの仕事をお互いに終わらせて、二日後。
ほとんど、帰省の準備をしなくてはいけない時期ではあるが。怜と裕司はお互いに休み……特に裕司は有休を使ったので、休暇をもぎ取れた。まだ入社一年目の怜では、半年を過ぎても有休が与えられていないのだ。
「さあ! 今日は怜やんにもちょいと手伝ってもらうよ!!」
「おーおー! 手伝うとも!!」
街中の高級ディナーではなく、久しぶりのお家クリスマスパーティー。大人数でもなく、ふたりだけのパーティーだ。お互い、最近は怜の体調不良以外で休みがあまり被らなかったから、今日は大いに飲み食いをしようと決めていたのだ。
とは言え、チェーン店などのオードブルではなく、裕司と共同作業で一から手作りではあるが。
「うーん。怜やん、ビスクってわかるかい?」
「んー? たしか、エビのポタージュぽいの?」
「あれを作るぜよ」
「うぉお!? 家で!?」
「下ごしらえめちゃくちゃかかるから」
「頑張る!!」
昨夜から仕込んでいたらしいものもあるようだが、怜は裕司が指示してくれる内容をどんどんこなしていく。学生時代から少しずつ料理をするようになったのと、裕司と暮らすようになったお陰で……多少は手際がよくなってきた。
エビの殻を剥くなどは、少し大変だったがやり甲斐はあった。途中、水分補給用の温かい番茶を飲みながら手分けして進めていけば。
お昼を回る頃には、大体の仕込みが終わったので……一度シャワーを浴びてから仮眠。
起きたら、また残りの作業の続き……を繰り返して。完全に終わったら、また仮眠。けど、怜は先に起きて秀司手製のキーケースが入った小袋を、リビングテーブルの上に置いて。
そのあとに、裕司が起き上がったら……揚げ物などの仕上げを手伝い。
完全にテーブルに並べたら……今日は解禁、と度数は低めでもアルコールをとホテルで購入させてもらったシャンパンを開けたのだ。
「「メリークリスマス!!」」
クリスマスは終わっているが、ふたりにはこれでいいのだとシャンパン用のフルートグラスをかち合わせたのだった。
「はい、ゆーくん!」
食べる前にさっそく、と怜は裕司にプレゼントの袋を渡してやった。一瞬、目を丸くした彼だが……すぐに笑顔になってくれて袋に手を添えた。
中身を開けると、『あ』と声を上げた。
「……兄貴の」
「やっぱり、わかる?」
昔は興味がないと秀司は言っていたが、怜としてはそんなことがないと思っていた。裕司ほど、気遣いの出来る男性がすれ違いはあっても……兄弟の好きなことに気づかないわけがないと。
怜が聞けば、裕司が今度は苦笑いになった。
「この模様……兄貴が得意なやつだし」
「色々悩んだけど……芽依らのこともあったし、頼んだのだよ」
「……割引きしてくれただろうけど、高くなかった?」
「予算内だよ」
ギリギリ、だとはこの場合伏せておくが。
裕司からは、ネイルのケア用品でもお高めのものをもらえた。水仕事とか、手洗いなどの消毒が結構多い宴会サービススタッフとしては、ネイルケアはできても爪に塗ることはあまりできないからだ。
食事は、定番のクリスマス料理に加えて……ふたりで仕込んだエビのビスクは殻も使ったあとに、フードプロセッサーで砕いたお陰か……エビの旨味が濃厚でトロトロで、温めたことで塩気も甘味も程よく、素晴らしい仕上がりになっていた。
「美味い?」
「おいひー!」
ふたりで手がけた料理がこんなにも美味しいのももちろんだが……ふたりで過ごすのもとても嬉しかった。
デザートのブッシュドノエルも堪能した後、怜が秀司らの挨拶について伝えると……裕司は慌て過ぎて、椅子から転げそうになった。
次回はまた明日〜




