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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二部拾参 怜の場合⑦
156/192

第4話『病み上がりの骨煎餅』

お待たせ致しましたー


「…………ゆー、くん」


「もう一回」


「……ゆーくん」


「もうひと声」


「ゆ、ゆーくん」


「んふふ」



 喜んでくれている。


 裕司(ゆうじ)は、(れい)が練習していた新しい呼び名について……どうやら、非常に喜んでくれているようだった。


 最後にもう一度呼ぶと、感極まったのか軽くキスもしてきたし。



「……嬉しい?」



 念のために聞くと、裕司は大きく頷いてくれた。



「そりゃ嬉しいぜよ? 怜やんが呼んでくれるんだからさ?」



 ただ、どう言う風の吹き回しか聞かれたので……正直に思いついたことと、メアリーらが呼び方について相談に乗ってくれたことも伝えると……さらに裕司はニマニマしていく。



「こ……ゆーくん?」


「いやあ、あのふたりには感謝ぜよ。怜やんが俺の名前呼んでくれたんだし」


「……遅くなって、ごめんね?」


「遅くはないぜよ? けどまあ……正直言ってめちゃくちゃ嬉しい」



 と言って、もう一度強くハグした後は。まだ着替えてないからとクローゼットの方に行ってしまった。その間に、怜はコーヒーだけは入れようと自分のは紅茶にして、裕司には簡単な紙パックで入れられるドリップコーヒーを入れてあげた。


 夕飯は裕司が作ってくれるからと、お腹をぺこぺこに空かせておいたのだ。



「……ゆーくん」



 もう一度、呼んでみるとしっくり来る気がした。


 今までの『こもやん』も似合わないわけではないが、将来的なことを考えるときちんと名前呼びをした方がいいと実感が湧くのだ。



「呼んだー?」



 そして、すぐに反応する裕司がちょっと可愛い気がしてきた。先ほども言っていたが、余程嬉しいのだろう。



「んー? 今日のご飯何かなぁって」


「そろそろ。味の濃いもんとか食いたくなるでしょ?」


「うん!」


「カレイの甘酢餡かけ」


「わーい!」



 手伝うことはないか聞けば、横で調理しているのを見るだけと言われた。今日は最終日だから、療養生活はギリギリまで続けて欲しいと。


 お互いの飲み物を飲んでから、裕司はさすがプロの料理人なので手際よく汁物や副菜を作って、メインのカレイを揚げ焼きする準備を整えていく。



「骨煎餅したい?」


「!? 家庭で食べられるのかね!!?」


「そのかわり、綺麗に食べてくりゃれ?」


「うぃっす! ゆーくん!」


「うむうむ」



 また明日から、特に問題がなければ出勤していつもの日常に戻っていく。


 クリスマスは出勤だが、それはそれでいいのだ。


 これからを思えば、職業柄仕方がない。


 とりあえず、ふたりで綺麗に食べ終えたカレイの骨は、裕司がカラッと美味しい骨煎餅に仕上げてくれたのだった。

次回はまた明日〜

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