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第3話『ピリ辛なところてん』①

お待たせ致しましたー

 材料は、乾燥のところてん、漬物以外だと……オクラを用意した。


 オクラは夏野菜に多いが、冷蔵庫に入れ過ぎるとしなびるのでさっさと使うに限る。


 ねばねばと、茹でた時のシャクシャク感が苦手だと言う人間もいるらしいが……(れい)は野菜については基本的に好きだと言っていたから使うことにした。


 漬物は、きゅうりとみょうがを梅しそ漬けにしたものを。これも同じく、怜が梅系は大好きだと言っていたからである。


 まかないのメニュー提案で、夏の時期に出せるように……上司の山越(やまこし)に味見をお願いすることで、今日は仕込んでいる。


 と言っても、ほとんど切ったりするだけで、あっという間に出来たが。



(げん)さん、お願いします」


「おぅ」



 今年五十三歳になるらしい、社員食堂の料理長である山越源二。


 これまで、裕司(ゆうじ)のように何名かバイトを育ててきたが……裕司のように、メニューを提案してきた人間はあまりいなかったらしい。専門学校に在籍している者もいたようだが、バイトはバイトだと彼らが割り切っていたそうだ。


 逆に、裕司は源二の新メニューを試食した時に色々口出ししたのが気に入ったらしい。そのため、裕司が試作するのを許可を出して、こう言った思いつきでも喜んで食べてくれるのだ。



「……どうでしょう?」



 答えはわからなくもないが、上司の回答はきちんと聞きたかった。



「……いいな? ところてんは春雨ぽい食感だ。漬物……と合わせるのは、俺ぁ初めてだが……コリコリした感じがところてんに合う。味付けにも、漬物の塩気以外にラー油か? 少しピリ辛なのを入れると、味に飽きがない」


「ありがとうございます」



 このメニューを考えたのは、裕司ではなく母方の祖母だが。甘いのも酢醤油も、ちょっとだけところてんで飽きた時に、サラダ感覚で出してくれたのがきっかけだった。


 これなら……おそらく、怜も食べられると思う。


 提供は仕入れの関係もあり、二日後になる。その時の、怜の反応がどんなものか……少し不安も感じたが、大丈夫だと信じるしかない。


 とりあえず、源二は試食用にと出したサラダ風ところてんはすべて完食してくれたのだった。



「ところてんの可能性が、味付けひとつで変わるとはなあ?」


「生ところてんの時期だと、食感がまた別物ですからね?」


「春雨もだが、たいてい乾物扱いだしなあ? んじゃ、夕方の副菜には春雨で麻婆にするか」


「……それ、源さんが食べたいだけじゃ?」


「はは! こう言うの食うと、どーも濃いめの味付けが食いたくなるんだよ!!」



 たしかに、裕司もだが怜も嫌いではなかった。


 麻婆豆腐のような味付けに、ちゅるんと心地よく胃袋に入っていく春雨は美味い。その美味さの秘訣を、バイトの日々目で盗んだりはしているが……なかなかコツを掴めないのは今日も同じだった。

次回は17時過ぎ〜

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