第1話 心配性
お待たせ致しましたー
怜が風邪を引いた時は、少しばかり生きた心地がしなかった。
いつも通り、元気な様子で久しぶりに作る裕司のまかないを食べていると思っていたのに。食べ始めてからすぐに……味がしないと彼女が言い出したので、額に手を当てたら普通以上に熱かった。
だから、同棲している相手と言うことで……裕司は看病も兼ねて自分も早退した。幸い、厨房の中尾からは『ついてやってやれ』と言ってもらえたので、まかない処は厨房のスタッフが代わりをしてくれることに。
ゆっくり帰宅してからは……本格的に怜の風邪が強くなって来たため、薬を飲む前に食欲を戻そうとホットタオルで気力は回復出来た。
(……心臓に、悪かった)
お互い、どちらかと言えば体は丈夫な方だったので……まさか山越の話題を出した後、すぐに引くとは思わなかった。だから、表面では普通にしてたつもりだが、裕司の心臓には大層負担が大きかった。
今も、味噌の卵おじやをたっぷり食べた怜はベッドで少し寝ている。寝る前に、一度熱を測ったが……まだ平熱より少し上。
山越が言うように二日で治ることもあるだろうが、久しぶり引く風邪だとそう言うわけにもいかない。
しかし……裕司もずっと看病出来るわけでもない。今日は急だったから中尾が許可を出してくれても、『落ち着くまで』と念を押されたのだから。
(……慌てたなあ、俺)
寝ている怜の様子をもう一度見てから、裕司はリビングでスマホを操作していた。双子の兄である秀司も風邪を引いたので、彼女であるメアリーに風邪に必要なものや食事をLIMEを通じて教えているのだ。
高校から日本に来ていても、日本人としての看病の仕方は知らないようだ。
それをメッセージに打ち出しながら、秀司の好きな食べ物も教えつつ……裕司は怜のいる寝室に少し目配せしていた。
ぐっすり寝ているようなので、あとで軽く体を拭いてあげよう。裸の付き合いもあるので、清浄する程度などは今更だ。だが、余程のことがない限りでも、風邪で命を落とすことだってある。
それが、少しずつ裕司に焦りを募らせていくのだ。ちょうど、昨日の晩にまかない処のテレビでそんな情報を見たせいだ。
「よし。こんなとこか」
メッセージを打ち出した後、すぐにメアリーからは既読とお礼にスタンプを押された。
不器用な方ではないらしいが、料理がどれくらい出来るかはまだよく知らない。出会って、まだ数ヶ月くらいの兄の彼女だ。知らないことが多いのは仕方がないのだ。
終わった後に、寝室を覗いてみると……呼吸が荒くなることもなく、怜は静かに寝ていた。
額と首元を触ってみると、汗をぐっしょり掻いていて……熱はいくらか落ち着いていた。
なので、服も着替えさせたいので……申し訳ないが、怜には一度起きてもらうことにした。
次回はまた明日〜




