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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二部拾壱 怜の場合⑥
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第4話『味覚復活の卵おじや』

お待たせ致しましたー

 おじやが出来るまで、(れい)はうとうとしていた。


 微睡みの中で見たのは、怜がなんと妊娠していて裕司(ゆうじ)に甲斐甲斐しく世話されながら……のんびりと日々を過ごしている風景だった。


 お互い笑い合い、とても幸せそうだった。指にはそれぞれ……数年前に裕司が贈ってくれたのとは違う、結婚指輪が左の薬指に光っていた。つまりは、結婚していると言うことで。



(……こもやんの、赤ちゃん)



 これは何年後の風景だろうか。


 顔つきとかは何とかわかるくらいなので、何歳とかはわからない。


 二十代か三十代か。三十代以上だと出産のリスクが高いと聞くが……どちらにしても、愛する人との子供は嬉しいものだ。


 いつか、叶えたいと思ってぬるま湯のような眠りに浸っていると……裕司に体を揺さぶられたので、起きることにした。



「んー?」


「怜やん、おじや出来たぜよ?」


「……起きるぅ」



 起きると、夢で見た内容は頭から抜け落ちるものだが。怜はおぼろげだが、なんとか覚えていた。食事は、リビングで食べるかと思いきや、トレーに載せたものをベッドに持ってきてくれた。



「ほい、気をつけて」



 怜がヘッドボードにもたれかかったら、膝上を整えてトレーを置いてくれた。


 ほわんと湯気が立っていて……器を見ると、薄茶色のお粥に卵をたくさん使ったものが入っていた。あしらいには小ネギ。誰がこれを食べ物ではないと言えようか。



「いっただきまーす」



 絶対美味しいとわかるそれを、怜は落とさないように手を添えてからスプーンで口に運ぶ。


 トロトロ、卵のふわふわ感が口に近づけるたびにわかる気がした。軽く息を吹きかけてから……ゆっくり口に入れた。


 まかない処では、あれだけ味がしないでいたのに。


 塩気、卵の硬さ。まろやかな風味。


 そのどれもが、いつも通りではないが少しでも感じ取れた。


 あのホットタオルが効いたのか、少しだけ微睡んだせいか。


 ぱく、ぱくとひと口ずつ食べることが出来たのだ。



「……大丈夫そうだね?」



 裕司は怜の額に手を当てて、そう答えた。熱が引いたような気もするが……裕司からは『まだ安静に』と言われた。



「……ダメかね?」


「風邪はぶり返しも怖いからねぇ? まだまだゆっくり寝てた方がいいよ。シャワーももうちょい後の方がいいかな」


「はーい」



 そこまで言われると、従わざるを得ない。


 裕司もあまり風邪をひかない方ではあるが……実家だと、双子の兄である秀司(しゅうじ)の方が酷かったらしい。


 ふたりで、もし今引いてたとしたらメアリーに看病されているんじゃ、と冗談で言っていたら……怜のスマホに、『シューが風邪ひいたの! 何食べさせたらいいの!?』と連絡が来たのだった。



「……俺が返事しとく。怜やん、おかわりは?」


「いるー!」



 まかない処の料理を残したのはもったいなかったが……味噌の卵おじやはいくらでも食べられた。味覚復活も出来たので、都合三杯おかわりしてから次に見た夢は。


 少し前に見た夢と違い、出産を終えて赤ん坊を抱えてふたりで囲んでいる風景だった。

明日からまた毎日更新しますー

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