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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二部拾壱 怜の場合⑥
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第2話『味のしないまかない』

お待たせ致しましたー


「お、(れい)やん」


「こもやん?」



 まかない処に行くと、裕司(ゆうじ)が厨房に立っていた。席を外しているのか、山越(やまこし)の姿はなかった。



「今日明日は臨時で源さんの代わり」


「へ? 源さんどったの?」


「単なる風邪。無茶しないように……だけど、二日で治すんだってさ」


「あららぁ」



 風邪は万病のもと。侮るべからずとは言うが。


 山越もそこそこ還暦に近づいているので、無理はしてほしくない。それでも、二日で治るかは心配であるが。



「とりあえず、怜やんはまかないどうする?」



 看板を見ると。



 Aはチーズチキンステーキ。


 Bは麻婆豆腐。



 どちらも甲乙つけ難いが、ガッツリ食べたいのでチキンステーキを選ぶことにした。



(風邪かぁ……)



 怜は病気らしい病気を、これまでほとんどしたことがない。怪我も、大きなものは幸いしていない。


 裕司と同棲を始めても、裕司も丈夫だからか風邪を引いたことを見たことがなかった。いいことであるが、これから先もそうとは限らない。


 そのためには、適度に運動をして美味しいものを食べるに限る。運動代わりは、仕事内容でなんとかなるが栄養はしっかり摂らなくては。



「ほい、怜やん」


「はいはーい」



 裕司が呼んでくれたので、早速まかないを取りに行く。


 焼き立てなので、ジュージューとかすかに聞こえる食欲を掻き立てる音に、香ばしい匂いとのマリアージュ。


 チーズの匂いも相まって、絶対美味しいとわかるものだ。


 セットメニューなので、簡単サラダだけでなくマッシュポテトのようなものも添えられていた。スープ代わりはお代わり自由の味噌汁を注いで。


 席に戻ったら、いざ、と味噌汁で喉を潤そうとしたのだが。



(…………あれ??)



 あまり、味がしない。


 もうひと口飲んでも、それは同じく。


 念のために、マッシュポテトを口にしてもモサモサする味のない感じでしかなかった。


 メインのチキンステーキの香りも次第に感じられなくなり……食べても、絶対美味しいとわかっていた予想を裏切る結果に。


 これは……と、食事はそのままで裕司の方に行くことにした。



「ん? 怜やんどうした?」



 裕司も気づいていないようなので、怜は自分の憶測を伝えてみることにしたが。



「けほっ」



 見事に、風邪特有の咳をしてしまい。目の前で見ていた裕司がカウンターから身を乗り出して怜の額に手を当てたのだ。



「怜やん、熱い!」


「……やっぱりかぁ」



 病気にかかりにくいと自負していたが、これは流石にわかった。


 そこからは、裕司に早退しようと言われ……彼が、葛木(くずき)を内線で呼び、急いで早退手続きをしてから。同じく早退することになった裕司の手を借りて帰宅。


 家に帰ると、どっと力が抜けて……怜は玄関で倒れそうになった。



「もう少し頑張って、怜やん」



 幼少期以来の風邪かもしれないので、それは無理かもと思わず呟いてしまったのだ。

次回は土曜日〜

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