第4話 その経緯
お待たせ致しましたー
ひとつ、気になったとすれば……だが。
「なあ、真尋」
「なぁに?」
質問する時には、彼がお汁粉のお代わりが欲しいとお椀を差し出してきた。それくらいは構わないので、注ぐついでに言うことにした。
「今まで、あんまり突っ込んだこと言わなかったけど……なんで、お前はそうなったんだ?」
「あら、そうね? ゆーちゃんには聞かれなかったから言ってなかったわ」
裕司からお汁粉のお椀を受け取ると、真尋はひと口啜ってから……少し寂しいような表情になった。
その表情を見ると、裕司もいつからだったか思い返すことにした。
「中学までは普通だったよな?」
「けど、あの頃からふんわり乙女の心はあったわ。気づいたら……男は男でも、別次元にいるんだって自覚は持ててね? んで、あーあ。自分は将来親に孫の顔は見せられないって実感したわけ」
「…………」
手術こそしてはいないようだが、真尋が普通の男としての生活を出来ないようにしてきたのは……高校の終わりからだろうか。
口調もだが、カミングアウトをするようになり……彼の両親にも伝えたことで、普段の格好は今と変わりないものになっていた。
長期休暇の時に、帰省したらめちゃくちゃ驚いたのは今でも覚えている。
「年頃になったら、パートナーを取っ替え引っ替えしてたわ。最近はやめているけど……ゆーちゃんやしゅーちゃんのように、きちんとした相手が欲しいとは思っているわよ? けど……やっぱり女の子は無理ね? 一度試そうとはしたけど……友達ならまだしも、パートナーには無理だったわ」
試みたことはあったようだ。しかしながら……真尋には酷なことだったそうで。そこまで行くと、裕司は過去に挑戦してみたらどうかと言わなくてよかったと思えた。
「んじゃ、格好は?」
「女役が……ってわけじゃないけど。落ち着くのよん、こっちの方が。ゆーちゃんにはちょっと迷惑かけたけど」
「それはもういいよ。まあ、無理に急いで探さなくてもいいとは思う」
「さっすが、ゆーちゃんね? 怜ちゃんって、ピッタリなパートナーを見つけたんだもの」
「……まあ」
裕司もお汁粉のお代わりを口にしながら振り返った。
節操なしに近い時期はあったが……怜と出会うまでは、いくらかちゃらんぽらんだった。それが、バイト先で彼女と出会い……ケジメをつけた。
それから今に至るまで、色んな思い出が出来た。
たしかに、真尋がきっかけで大喧嘩はしたが……今は怜も真尋を受け止めてくれている。だから、いいのだ。
「しっかし、このお汁粉……ほんと美味しい!!」
「餅ならいいけど、汁粉は怜やんのもあるからダメ」
「じゃ! きな粉餅!!」
「……はいはい」
色々特殊だが、従兄弟であるし、秀司とは違う意味で兄か弟のような存在だ。
普通の恋愛は出来ないが、真尋に幸あれと思うのだった。
次回は日曜日〜




