第2話 勘違いの勘違い①
お待たせ致しましたー
奴を、自宅に入れるか入れないか。
しかし、外で会うとしたら……また怜が戻って来た場合、彼女を怒らせてしまうだろう。逆も同じく。
けれども、打ち合わせのためにも彼と通話以外の接触をしなければならない。だから、裕司は決めた。彼を自宅に入れることを。
もう既に、近くに来ていることもあるので仕方がない部分もあるが。
「おっじゃましまーす!!」
見た目だけなら、裕司くらいの背丈がある……どこをどう見ても、女性。
しかし……中身は全然違って『男』だ。しかも、ゲイで恋愛対象は男である。
「……真尋。何しに来た?」
このはちゃめちゃな格好の従兄弟の名を呼ぶと、彼は手に持っていた紙袋を裕司に渡しに来た。
「ンフフ〜? この間会った時に思い出したのよん? ゆーちゃんや彼女ちゃんに食べてもらいたいお菓子があるなって」
「……そんために、わざわざ来たのか?」
「しゅーちゃんに住所聞いて、あとはマップで調べたわ〜」
「……はぁ」
なんというタイミング。
思い切りのいい行動をするのは、真尋に関しては今更なので特に言及しない。しかし……怜に伝えるのを忘れていたため、彼の存在もすっかり忘れていた。真尋はただの従兄弟。しかも、特殊な趣味の持ち主だと言うのは当たり前過ぎていたので、女性だとは認識していない。そもそもが身内だから。
「んで? 彼女ちゃんを迎えに行くのどうすんの?」
真尋は、心まで完全に女ではない。ゲイの定義はどう言うものかいまいちわかっていない裕司だが。とりあえず、解決は早い方がいいと……怜の逃げ場となった、伊東皐月とその同棲相手の部屋に行くことにした。
真尋はうきうき気分であるのが少し癪だが。
「……何しに来たんですか?」
皐月も仕事が休みだったのか、応対はしてくれたが部屋には入れてくれないのか……思いっきり不機嫌で扉を半分以下開けた。
「……誤解をときに」
「怜をあんなに泣かせて?」
「……マジか」
「マジです。……後ろにいるのは?」
「はぁい? あたし、小森真尋。ゆーちゃんの従兄弟よん?」
「……………………は?」
皐月もいきなりの真尋の自己紹介に意味がわからないのだろう。しかも、口調がオネエだから……余計に混乱したかもしれない。
扉を勢いよく開けると……彼女は裕司ではなく、真尋を凝視するかのように見つめ続けた。
「あらん?」
「……その声。女……じゃない?」
「残念だーけーど? いわゆる、オネエでゲイよ? あたしは」
「……小森……じゃなくて、裕司さんの従兄弟?」
「そうよん? お茶してた相手、あ・た・し」
「…………れーいー!!」
扉をガシャんと閉めて、皐月は怜に事情を説明しに行った。
まだ中には入らせてもらえないようで、裕司は真尋と廊下で待つことにした。
次回は金曜日〜




