第3話『いい塩梅、お汁粉』
お待たせ致しましたー
靴にきちんと履き替えてから向かった、お汁粉提供場所。
このスケートリンクをよく利用している客も多いせいか、既に列が出来ていた。
「やーやー、人気だね!」
「ここの半分名物だものね?」
メアリーも多少疲れたのか、うーんと腕を伸ばしていた。その時に見えたウェストに細さに、怜はこっそり自分のお腹をさすってみた。気持ち、細いとは思っていたが……やはり、そこも育ちなどの国境の差もあるのかもしれない。
自宅で、リンパストレッチか有酸素運動でもはじめようかと思ったくらい。
「……メアリー、腹」
「ん? なぁに? 嫌?」
「……まあ」
そして、メアリーの仕草が視線を集めているからと、指摘していた秀司が軽く小突いていた。メアリーは多分ニマニマしていたが、秀司にそっぽを向いた横顔が赤くなっていたのを見逃さなかった。
「……秀司君でもあんな顔するんだ?」
「……びっくりした」
「う?」
「……兄貴が、女の子にあんな態度すんのが」
「ほーほー」
それほど、弟である裕司が驚くくらいの意外性。怜とて、将来義兄になるかもしれない秀司とはまだ両手程度の頻度しか会っていないが……二卵性の双子なので、裕司とはあんまり似ていない。中身もだが外見も。
だから、あのように年相応の態度を取るのはたしかに珍しかった。
とりあえず、お汁粉の列にきちんと並び……全員分受け取ってから、フロアの端にあるテーブルに置いて食べることにした。
「これがここのお汁粉」
「餅でけーだろ?」
お汁粉の概念は日本各地で違うので、どれが正解ともないが。
このスケートリンクでは、大きめの焼き餅にこし餡で仕立てたものだった。
「わーいわーい!! 白玉じゃないお餅〜!!」
「白玉? お汁粉ってお餅じゃないの?」
「地域によるから、善哉とも間違えやすいしね?」
裕司がメアリーに説明すると、なるほどと頷いてくれた。
温かいうちにいただこうと、手を合わせてから器と箸を持つ。
「おお!」
甘味が強いが、米の味が強い焼き餅にはちょうどいい味わい。塩気も多少感じて、塩昆布の付け合わせがなかったが……これは美味しい。
お鍋で提供していたため、多少は冷めていたが……飲みやすい温度だし、いくらか温かい感じがアチアチよりも良い。
夢中で食べていると、あっという間に食べ終えてしまった。
「……いいな」
裕司も気に入ったのと、料理人と言う仕事柄味の考察をしているかもしれない。
すると、秀司が小さく噴き出すように笑った。
「味の研究は相変わらずだな?」
馬鹿にはしていなく、純粋に感心したのだろう。裕司も苦笑いしていた。
「なんつーか、癖?」
「仕事になる前からだろ? 本当に仕事にまでするとは思わなかったが」
「そう言う兄貴だって」
「……秀司君の仕事聞いたことないけど」
「俺? アクセサリー職人」
「……小森家は凝り性ばっかだー」
「でしょー?」
メアリーも食べ終わったのか、何度も頷いていた。
次回は水曜日〜




