第3話『検討、スイートポテトタルト』②
お待たせ致しましたー
大きさ、見た目の印象に加えて形など。
ひと通り作ったスイートポテトタルトだが、都築もだが紫藤はどのような感想と審査をしてくれるのか。
裕司は下っ端だが、中尾が同席しろと言ったので彼の隣に立っている。
仕事以外は、若者に負けずポジティブ思考が強い紫藤らと関わる機会は……裕司は少なかった。まかない処にいた頃は、束の間の休息と言うことで思い思いに食事をするところしか見ていなかった。
だから、今回のように近距離で仕事に関わることは初めてだ。
都築もだが、紫藤も仕事モードになったのか真剣にスイートポテトタルト達を見比べてくれていた。
「ん〜〜、こっちは沖縄土産の紫芋タルトに似てる」
「こっちは、普通のタルトにして切り分けた……三角よりも四角のムースケーキやチョコレートケーキがうちでは多いけど」
あとは味……と、ふたりはそれぞれひょいぱくとタルトを口に入れた。
「うんま!! さっすが、中尾たん!!」
「久しぶりに食べるけど……やっぱり美味しいね? これは小森君が提案した?」
「……いえ。山越さんが以前ネットで調べたレシピですが」
「それでも、お客に出せるクオリティだよ? 自信をも持ちなさい」
「……はい」
縁日などではしゃいでいた時のギャップが激しいが、それはそれで親しみを持てる。都築に褒められるとは思わなかったので、少しこしょばゆく感じた。
「……総支配人。形はどれがいいでしょう?」
中尾が聞くと、隣でまだバクバクタルトを食べそうだった紫藤に軽く小突いてから、都築は顎に手を添えた。
「そうだね? 丸だとエッグタルトに見えなくもないし。切ると断面が乾いてしまう。紫芋タルト風だと見栄えが少し心配だから……木の葉型がいいんじゃないかな?」
「わかりました」
やはり、まかない処でも出していた形に決定することになった。
紫藤も同じように頷き、タルトをまだ食べたそうにしていたが都築に引きずられるように連れて行かれたので持ち帰ることは叶わず。
とりあえず、味などは裕司らも再確認して……秋メニューへのリニューアルで登場させることになったので。
裕司を含む若い料理人らが、必死でさつまいものペーストを作ることになった。業務用のペーストもあることにはあるが……いかに重労働なのかを経験することも大事だと、中尾や板橋からの指示で裏ごしなどを頑張るのだった。
「「「いたた……」」」
そして、裕司もだが他の同僚らも裏ごしが終わると手首をさするのことが多く。
帰宅してから、怜に湿布薬などを手伝ってもらうことになった。
「大変だねぇ……」
「……個人でやるのと、量が桁違いだから」
「おおう……」
とは言え、これも仕事の向上に繋がればいいと思う。
神経痛になったら、流石に医者に行かなくてはいけないが。使わない筋肉が怠けていると思い、その日から怜とゆるくストレッチをするようにした。
次回はまた明日〜




