第1話 レシピ採用
お待たせ致しましたー
結局、裕司と秀司……お互いの彼女達を紹介するで終わった、この間の帰省。
メアリーのことにも大層驚いたが、アジア圏以外の外国の血と外見を受け継ぐ以外は……やっぱり、映画などの俳優ではないただの人間だと認識出来た。
彼女自身語学堪能であるお陰で、親しみやすいところで不便もなく……妹の真衣香や怜の方にも気に入られていた。
その怜は、今日メアリーとランチに行っているそうだ。いったいなにを話しているか気になるかもだが、女同士の楽しい会話を邪魔するのもいけない。
それに、裕司は今日も今日とてシェフの卵として仕事があるのだ。
「栗とクリームチーズか……」
「悪くはないですね?」
先日、裕司が怜に振る舞った栗のサラダぽいものを……他の先輩や同僚が提案した場に持ち込んでみた。なんだかんだで、やっかみ合うほど……この職場は荒れていない。食の探求で切磋琢磨するのはいつものこと。
最近は交代で、朝のオムレツ実演提供も安定してきているので……次はコースメニューなどに加えても良いようなレシピを検討しているのだ。
「コースに入れるなら、栗を見栄え良くしたいところだが」
「ビュッフェになら、サラダのコーナーに加えるのも有りかと。スプーンで取り分けしやすいですから」
などと、裕司の提案はほぼ毎回好評だった。
「すげぇな、小森。今回もいい感じじゃん」
「小森はまかない処から気に入られていたしね?」
「山越さんが認めるくらいだもんね?」
ヒソヒソと同僚らと話すのもくすぐったい。
しかし、彼らも彼らで気に入られているのも本当だから、パワハラなどは特に起きることもない。お互いを褒め合ったりする評価もきちんと出来ている良い職場だ。
「しかも、こっちのペーストとクラッカーにサラミが良い」
「甘じょっぱいものは、ビュッフェの冷製に少ないから良いですね」
「小森。こっちは採用だ。レシピ書き出して置いてくれ」
「はい」
早速採用されたので、急いで事務室に向かう。発注作業などもなく、誰もいないので専用のパソコンを使ってレシピを打ち出していく。
決まるまでは、データもだが頭にも入れていたのですぐに打ち出せるのだ。これでフォルダなどに入れておけば、いつでも誰でも引き出すことが出来る。手書きもいいが、筆跡によっては文字化け以上の悪筆も多いので対策のためだ。
もちろん、水仕事も多い職場なので、印刷したレシピに触れればおじゃんになるけれど。
「……よし、こんなものか」
もともと、工程の少ないレシピだからすぐに出来た。
裕司は一枚プリントアウトしたものを手にして、中尾らのところに戻り、彼に差し出した。
「……甘栗と生クリーム少しだけ?」
「茹でたり、生の栗よりは……手間も考えれば、コスパ的にも甘栗の方が味もいいです」
「……わかった。俺らでも一度作ってみる。が、これはほぼ決定だ。次も頼むぞ」
「はい」
昇進などをすぐに考えていないわけではないが。
怜との生活を向上させていくためになるのなら、これくらいの努力は惜しまないつもりだ。
次回はまた明日〜




