第1話『さりげない朝ご飯』①
お待たせ致しましたー
少し迷惑をかけてしまった。
怜や裕司が勤務しているビジネスホテル。そこの朝食バイキングで、『オムレツ』だけでも作り置きしないように出来ないか。
それを意見箱に入れたのだが……まさか、採用されるとは思わず、しかも実演提供するために裕司らが特訓をすることになった。
自宅でも続いたが、裕司も慣れない作業に少しばかり疲れているようだ。
しかし……宿泊の客足が少し遠のきそうな現状。少しでも改善出来れば、メリットに繋がる。だから……裕司は怜に『慣れる』しかないと言ってくれるのだ。
「…………よし」
その日の朝は、お互い少し出勤時間が遅いので。怜が怜なりに朝ごはんを作ろうと先に起きた。
お米は予約しておいたので、今炊飯モードになっている。
味噌汁は、顆粒出汁で出汁は作るので……具材は戻すだけで出来上がるものを。味噌だけはちゃんと使う。
サラダは買っておいた洗わず盛り付けるだけのパックを、ふたりで分け合う感じで。
おかずは、塩サバ。焼き加減はグリルに入れたらタイマーをセッティング。昔とは違い、コンロにもタイマー機能があるのは便利だ。
さらに……おかずにもう一品といきたいところだったが。
「……うぅ……」
出汁巻きとまではいかないが、四角いフライパンを使ってでの卵焼き作り。
何度か練習はしたものの……やはり、裕司のように綺麗にくるくるとは巻けなかった。
「ふぁ……おはよ、怜やん」
さすがに起きてきた裕司に振り返ると、彼は不思議そうに怜を見た。
「……こもやん」
「ん?」
「……朝ごはん、作ってみたんだけど」
「お? マジ」
その言葉を口にした後、機嫌良く洗面所に行ってしまった。余程嬉しいのか、寝癖直しにドライヤーを使っていても鼻歌が聞こえてくる。
となれば、気合いを入れて……怜も仕上げに取り掛かった。と言っても、塩サバを盛り付けて……卵焼きを切り分ける程度。大根おろしもチューブのものを使うだけだ。
出来上がる頃には、裕司の身支度も整ったようなのかリビングに戻ってきた。
「お待たせ」
「おお! 和食!」
「そんな大したこと出来てないよ?」
「いやいや、怜やんが作ってくれたことに意味がある!」
「そーぉ?」
「そうそう」
裕司と同棲をはじめて、二年目にもなるお陰か。
彼の的確な指導もあるお陰で、料理をほとんどしなかった怜でもここまで出来るようになったくらいだ。
「じゃ」
「うん」
「「いただきます!!」」
とりあえず、仕事への出勤時間も迫っているのでふたりで手を合わせて食べることにした。
次回はまた明日〜




