第4話『オムレツレパートリー』
お待たせ致しましたー
オムレツ……と言えば、洋食の華とも言われるだろう。
外はしっかりと形づくられているのに……中はふんわりトロトロ。
日本の洋食で代表とも言われる『オムライス』となれば、食べる本人の好みによって変わって来る。チキンライスも、ドライカレーやコンソメだったり多種多様。
オリジナルをアレンジ。それは世界各国……特に、日本などではそのアレンジは多過ぎる程多い。
和を洋食。中華を和に、などなど。
それは飲食店であれ、宿泊施設であるホテルでも同じく。
だからこそ、裕司も料理人の端くれとして今日も挑んでいるのだ。
「んんん〜〜…………」
場所は、勤務先のホテルの厨房ではなく……彼女の怜と同棲している部屋で、裕司は唸っていた。
部屋には怜もいるが、裕司はキッチンで調理台の上にあるものを見ながら唸っていたのだ。
「……だいじょーぶ、こもやん?」
怜も心配になってきたのか、スマホをいじる手を止めてこっちに来てくれた。
「いや、大丈夫。俺がまだまだなだけさ」
材料は、主に卵。あと、塩胡椒にバターと牛乳やチーズ。
それに加えて、野菜のソテーや缶詰のミートソースだったりと。
これらは、オムレツの材料だ。
「……けど。私の意見で困らせたんでしょ?」
「いやいや、そこは大丈夫」
先日、中尾が言っていたように……メニューの改善については、厨房に持ちかけられていた。それが怜の意見をきっかけに、大幅改善しようと決定しただけで……全体的に怜が悪いわけではない。
もう一度説明しても、怜はウサギ耳があったら垂れているかのようにしょんぼりしてしまった。
「……お客さんへの気遣いはありがたいけどさ? 変にこもやんの仕事が増えるのは、やだよ」
「そうでもないさ?」
決して高級ホテルとは言い難い、お互いの勤め先ではあるビジネスホテルだが…………かと言って、コスト優先で妥協するわけにもいかない。
実は少しずつ少しずつ、宿泊客が減っている理由に……ひょっとしたら、朝食バイキングに問題があると取り上げられていた。
とくれば、従業員が同じ食事を交代でまかないとして食べるのだから……気になるのも無理はない。特に、社員としては新人の怜が時間をかけて気づいてくれたのだ。その意見を、まったく無視出来るはずがないと……総支配人も中尾らにあの意見書を渡したのだろう。
なので、新人としては同じである裕司とかが、実演料理をするために……日夜、オムレツの練習を家でもしているわけである。具なしのプレーンを筆頭に、チーズやほうれん草のソテーなど。
まずは、先輩らが実演練習をするのに手本を見せてくれたが……裕司や他の新人には、当然彼らのようにはいかない。あまり使わないオムレツのフライパンで手早くふんわり作るのがだ。
「……ほんと、無理してない?」
「してないしてない」
焼き加減については、要修行などは望むところ。ただひとつ問題となるのは……家で作ると飽きがくることだ。悩んでいたのはそこである。怜は美味しいと言ってくれるのだが……スタッフとしては、きちんと意見を言ってくれる。
そんな日々を繰り返していくと……やっぱり、お互い飽きが続いてしまうのだ。
とりあえず、その日最後にはミートソースをかけて、中身はチーズをたっぷり入れることで満足は出来た。
次回はまた明日〜




