第1話 妹のお怒り
お待たせ致しましたー
結婚を考えていないわけではない。
むしろ……裕司にとっても意欲的に考えてはいる方だ。
その理由のひとつに、少し前に三重の実家に帰ったところまでさかのぼる。
「ゆーにーちゃーん!!」
年の離れた妹、真衣香が裕司の帰省直後から、玄関で仁王立ちしていたのだった。
「……どうした、マイ?」
怒っているようにも見える妹の姿に、いくら裕司でも少しばかり驚きを隠せない。
「ちょっと来て」
玄関に荷物を置いた裕司の腕を引っ張るので、裕司は『はいはい』とついて行くことにした。リビングでいいらしく、先に帰って来ていた双子の兄の秀司がこちらを見ると苦笑いしてきた。
「お? 帰ってきたのか?」
「マイに連れて来られたんだけど……」
「俺も一緒に怒られる」
「兄貴も?」
「ふたりとも、正座!!」
「「……はい」」
来年中学生になる真衣香は、年々ませた性格がしっかりしてきたと思う。思春期手前とは言え、小学生最高学年となると色々考え方もしっかりしてくるのか。
兄としては、いつまでも甘えたがりな妹でいてほしいが、現実はそうもいかないのだろう。
「にーちゃん達」
ぷんすかぷん、と可愛く怒っているところを見ると、本気で怒っているようには見えなかった。
「「うん??」」
「にーちゃん達は……彼女さんと婚約したの!?」
「へ?」
「あー……」
裕司はともかく、秀司も彼女が出来ていたことは知っていたが。同棲しているのか聞くと、『まだ』と返された。
「彼女さんの、婚期が逃げちゃうかもなんだよ!?」
真衣香なりに、兄よりも彼女の方を心配しているらしい。これは、何かのドラマや映画で感化されてしまったのだろう。
しかし……夢を壊すようで仕方がないが、ここは現実と向き合わせようと真衣香にも座るように促した。
「マイ。ドラマとかと現実は違うんだ。現実は……正直言うと物凄くお金がかかるんだ」
「お金?」
「にーちゃんは学校行ってた時は学校行くために、アルバイト頑張っていたからさ? 前に一度会ったお姉さんとは、まだお金がないから結婚出来ないんだ」
「……そうなの?」
夢見る女の子の憧れを壊すことになったが、きちんと理由を言わねば納得しないだろうから。
隣にいる秀司も首を縦に振った。
「あと、にーちゃん達くらいで結婚出来る人もいなくないけど……お金もたくさん稼ぐのに、今いっぱい仕事してるんだよ。それが現実」
「……そうなんだぁ」
しおしおと縮んでいくように、肩を落とす妹も可愛いが……現実と向き合うことは大事だ。将来を間違った方向に進めさせてはいけない。
「とりあえず、あれだ」
いきなり、秀司が手を叩いた。
「にーちゃん達の彼女に、一緒に会いたいんだろ?」
と言うわけで、合同帰省が決定した為、いつにしようか怜にも聞こうとしていたのだった。その顔合わせで、真衣香も自分の『お姉さん』が出来るかもと大喜び。
裕司も、義理の姉になるかもしれない女性ときちんと会うので……どんな女性なのか楽しみだった。なにせ、兄が一年以上も付き合っている相手だからだ。
次回はまた明日〜




