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【完結】ホテルグルメはまかないさんから  作者: 櫛田こころ
第二十六章 小森の場合⑬
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第4話 そんな日々を

お待たせ致しましたー

 お互いの仕事が終わっても……(れい)とは違い、一応正社員となった裕司(ゆうじ)は下っ端としての仕事が山ほどある。


 まかない処の派遣を抜いても、裕司に割り振られる仕事は多いのだ。



「……よし」



 頼まれていた仕事はなんとか終わったので、先輩や料理長を見てもほぼ終わりかけだった。最終確認をしてから……料理長に聞けば、『終わっていい』と言われたから遠慮なく帰ることにした。


 まかない処の前を通ると……こちらは当然終わっているので暗い。しかし、入口に置いてある小さなテーブルと手製のダンボールボックスの差し込みには……大量のピンクの紙が入れてあった。これはホテル内のリクエストボックスである。



(……まあ。毎日出向くわけじゃないし)



 それを寂しいなどと思うことはない。厨房の仕事は大変だが、ちょっとした息抜き気分でまかない処にも派遣してもらえるのだから……充実した日々だ。


 そして、それは私生活についても。


 裕司は着替えてから自宅に向かえば……鍵を開けようとすると、ドアがいきなり開いた。



「おかえり、こもやん!」


「……ただいま」



 この春から、きちんと怜と同棲を始めた。怜は先にお風呂を済ませたのか少し髪が湿っていた。



「お疲れのこもやんは何が良い? お風呂? コーヒー??」


「んー、とりあえずコーヒー……」



 新婚ではないので、お決まりの台詞ではなかったが、疲れは少しピークに近かったので前者を選んだ。お風呂はあとでいい気がしたので。


 リビングに行くと、机の上には色々な紙が散らばっていた。



「おお、ごめん! 卒業制作していたのでね?」



 四年生になったのだから、怜にも卒業論文やら制作があって当然。就職活動については、実は……。



「ホテル勤め決定したから……こっちに集中出来るんだっけ?」


「そうなのだよ! ほんとありがたい!!」



 怜としては、就職活動を始める前々から狙っていたらしいが……一応就職活動を始めると上司らに告げたら。



眞島(まとう)ちゃんが嫌じゃなきゃ、うちで本格的に働かない!!?』



 と、半分くらい泣きついてきた紫藤(しどう)の懇願もあり、無事に研修生としてのバッジを今年手に入れたそうだ。総支配人なども、是非と言ってくれたお陰もあるそうで。


 だから、怜は大学の卒業制作に力を入れる方に集中出来るのだ。


 怜はひとまずまとめてから、コーヒーを淹れるのに電動ミルやヤカンを動かしていく。その後ろ姿を見ているだけで……ああ、この子と今生活しているんだと実感が持てる。



「ほい、こもやん」



 引っ越しの後に、揃いで買ったマグカップに……怜はコーヒーを淹れてくれた。


 相変わらず、上手に淹れてくれる味についホッとしてしまい、怜の肩にゆっくりと頭を預けた。



「……怜やんがいてくれて良かったぁ」


「大袈裟だねぇ? ずっと一緒だよ??」


「だけども、嬉しいぜよ」



 バイト先のホテルがきっかけ、まかない処が最初だったが……こんな風に全力で甘える相手と出会えただろうか。


 裕司はヨシヨシされてた手を掴み……怜と目があったら、お互いに微笑んで唇をゆっくりと合わせた。


 安らぐ日が……いつまでも続くようにと願って。


 それから約一年後には、怜も無事に宴会サービススタッフの正社員となれたのだった。



「ふふ、家でも仕事でも一緒〜!!」


「これからもよろしくぜよ?」



 結婚に向けてのスタートを切ったと言ってもいい。周りからも応援を受けているので、お互い手に手を取って頑張っていく。


 ホテルのグルメよりもまかないがきっかけだった、とあるカップルのお話はこれまで。

次回はまた明日〜


明日から新章です!!

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