眠たい私は、友達に膝枕をしてもらう
二作目だよ。
読者が甘味を感じられる作品だといいのですが。
「膝枕してー」
「え?やだ」
辛辣だなぁ
これだから、最近の若者は思いやりがなくていかんな。
「あんたも若者だろうがよ」
「私はいいの」
何もないお昼休憩。
屋上で幼馴染のカノちゃんと、二人でくつろいでいた。
彼女の髪は金髪で、時々乱暴な言葉使いをしたりする。そのせいなのか、周りから不良だと思われてしまっている。
でも、私は知っているのだ。彼女が本当は優しくて、いい子なのを。
髪だって染めた訳じゃなくて、元から金髪だったりする。
それにしても、お昼ご飯の後で、ポカポカと暖かいこの時間は無性に眠たくなる。
そして、眠たくなったからと言って、学校に枕がある訳が無い。
「という訳だから、膝枕して」
「何が、という訳か分からないけど、自分の中で完結するなよ」
どうやら膝枕する気はないらしい。仕方ない…なら他を当たるか。
そう思い、立ち上がった瞬間に手をつかまれる。
「どこ行くんだよ」
「膝枕を探しに」
それ以外に、何の理由があろうか。
ちなみに第一候補としては、保険の先生だ。以前、土下座して頼むとしてくれた。
え?保健室なら枕があるって?
野暮なことを聞かないでよ、ウサギさん。
膝枕と保健室のかたい枕、どっちがいいかな?・・もちろん膝枕さ。
ってこんな話は置いといて、カノちゃんが手を離してくれないんだけど。
早くしないと時間が・・・私のスリープタイムが!
カノちゃんの顔を見ると、なぜか膨れっ面をしていた。
「あんた、それ頼むのはだれでも言い訳?」
「ん~、そうだね。私の好みの子なら」
「そう・・・・・好みね」
あ、ちょっと機嫌がよくなった。
カノちゃんは、すぐ顔に出るからわかりやすい。
「それじゃあ、私は行かなくてはいけないので。そろそろ、手を離してほしいなぁ」
そう告げると、カノちゃんはなぜか俯いてしまった。手をつかむ力も増した気がする。
「私の…貸して…る」
カノちゃんはそのまま、今にも消え入りそうな声で言う。
俯いているから、表情がわからない。
「へ?ごめん、もう一回お願い」
「だから!私の膝を貸してやるって言ってるんだよ!」
今度はしっかりと顔を上げ、発言する。
その顔は真っ赤で、だれがどう見ても恥ずかしがっている。
「無理しないで、いいんだよ?」
「してないから、早く寝ろよ!!」
地べたに座りながら、膝をポンポンと叩いている。
じゃあ、遠慮なく寝させてもらおうかな。
「ど、どう?」
「うん!やわらかくて、すべすべ。私の期待通りだよ」
何より、普通の枕にはない程よい人肌の暖かさが心地いい。
「そう…よかった」
やっぱりお昼寝には膝枕だよね。
流石に、夜の睡眠時間はお布団と枕に沈みたいけどさ。
枕と言えば、抱き枕ってあるよね。
私は試したことないけど、寝やすかったりするのかな?
そっと、私の髪に触れるカノちゃん。そのままゆっくりと、私の頭をなで始めた。
撫でる手が心地よくて、だんだん意識がぼやけていく。
・
・
・
「……ん?あ」
ぱっと目を開けると、頭上に居たはずの太陽は地平線に沈もうとしていた。
寝息が隣から聞こえ、視線を向ける。
そこには、仰向けの私を横からガッツリと、ホールドする友人がいたのだった。
「なぜ、膝枕からこの体制に」
とりあえず、さぼりだとかは置いといて。
コアラのように抱き着く、友人ちゃんを起こさないと。私が身動きできない。
「お~い、起きて~夕方だぞ~」
「ん~後、一時間」
典型的な寝言を、後一時間もしたら真っ暗だっつぅの。
というか、寝言は可愛いな。
「起きなよ、帰るよ!」
「すぴー、すぴー」
まったく起きない…
こういうところは、昔から変わらないな~
って、そうじゃなくて、本当に動けない。
私はモゾモゾと抜け出そうとするが、ガッチリとしたホールドから逃れることができない。
「……逃げちゃ…いや」
「んぎゅ」
寝相が悪いのかさらに強く抱きしめられる。
それと同時に、今度は頭ごと抱きしめられてしまう。
私の顔面は、やわらかいクッションへと沈んでいく。
「ん゛!…ん゛ん゛!」
ぐる゛ぢぃ、このデカ乳がぁ。
お胸で!お胸で窒息するぅぅ。
「……ん…..あれ?私どうして….あ!ごめん!」
「ぷはぁ、はぁはぁ…はぁはぁ」
死ぬかと思ったよ。恐ろしいおっぱいだ。
いや、それよりも…
「はぁはぁ…ふぅ~、どうして寝ちゃっているわけ?」
「あんたが気持ちよさげに寝てたからさ、私も寝たくなっちゃって・・・・・つい…」
ついで私は死にかけた訳か、なんて恐ろしい子なのでしょう。
とりあえず、もういいや・
ん、唇に違和感が…涎でも出てたのかな?
そう思い、唇をポケットティッシュで拭う。
「あれ?私、色付きリップとか塗ったかな?というかこの色、カノちゃんのいつも使ってるやつじゃない」
「へ!いや、それはきs …じゃなくて!…そう!
あんたが寝ている間に塗っておいたの!最近、乾燥してるから唇が荒れたら駄目と思ってね。だから、別に私の唇のリップがあんたに着くような事はしてないから。安心して」
「そ、そう。ありがとう」
そんな、捲し立てられると逆に怪しいけど。
言ったら怒られそうだ。
「あ、そうだ!今日さ、うち泊まりに来なよ」
分かりやすく話しそらした。
「え、今日?」
それは急すぎでは・・・・・
「そう、着替えならあるしさ」
私とカノちゃんは、昔からお互いの家によく泊まりに行く程仲がいい。だから、服とかお互い相手の家に置きっぱなしだったりする。
と言っても、半年前の中学三年の冬が最後だったかな。
「わかった、じゃあお邪魔しようかな」
「あいよ、私もそろそろ限界で・・・い、いや、なんでもない!ほら、いくぞ!」
なんだか、不穏な空気が…
あ、そうそうっと振り返らずに言うカノちゃん。
「今日は家、親居ないから」
「わかった!じゃあ今日は、はしゃいでも大丈夫だね!!」
「こいつわぁ駄目だわ…」
はぁっと、なぜかため息を吐くカノちゃん。
私、変なこと言った?
おまけ…
カノ編
「もう…寝たのか…」
私の膝がよかったのか、幼馴染はすぐに眠りについてしまった。
それでも尚、私の手は撫でるのを辞めない。
こうして寝顔を見ると、お泊りをしていた時を思い出す。
もう、半年はしてないけどな。
「お前が誘ってくれないからだぞ」
幼馴染の頬をつつきながらつぶやく。
昔からお泊りに誘ってくれたのは、こいつからだった
高校生になってから、忙しいらしく誘ってくれなくなった。
ちょっと寂しい…………かも
最近なんか、私以外のやつとも絡んでるみたいだし。
私は昔から、不愛想で友達なんていなかった。でも、こいつは私が不愛想に接しても、めげずに話しかけてくれて………それで私もだんだん、心を許せて…
それで私は、いつの間にか………
「なのに、お前は他の女のとこ行くとか言うし」
今度は私からお泊り誘ってみようかな。
こいつなら、喜ぶに違いない。
何となく幼馴染の頬を緩くもむ。
流石に嫌だったのか、逃げるように膝の上で寝返りを打つ。
さらさらした茶髪が揺れる。
整っているが、きれいというより、幼さがある可愛い顔立ち。
「かわ…いい」
やばい、抱きしめたい。
抱きたい………いや、だめだ。
でも、我慢が……
「……抱きしめるだけなら…いいよな」
そうだ、膝枕の報酬として……ということにしよう。
私は気が付くと、幼馴染を抱きしめて横になっていた。
心臓が爆発しそうなくらい、動いている。
幼馴染が、心音で起きてしまわないか不安になる。
息遣いが間近に聞こえ、自然と目がそちらに向かう。
きれいな鼻の形と、その下のぷにぷにした唇。
「……唇」
視線はもう釘付けになっていた。
ちゅっと、リップ音で私の意識は現実へと帰ってくる。
「……っは!……え、あ」
幼馴染と顔を離すとともに、溢れる感情からあげそうになった声を抑える。
わたし…今…キスした?
キスできてうれしいとか、全然唇の感触わからなかったとか色々あるけど。
それと同時に、罪悪感がこみあげてくる。
「……最低だ、私」
意識のない相手に、こんな。
そうは言いつつも、また視線は唇に吸い寄せられる。
“もう、一回しちゃったし。二回も三回も変わらないよね”
これは誓いなのだ、私の物にするというね。
「お前は誰にも渡さないから………ん」
誓いという名の、キスを楽しんでいるうちに私は眠ってしまっていた。
この後、いろいろばれそうになり焦ることになるのだった。
評価・感想等 頂けると嬉しいです。