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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第3章エルフの里編
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勇者精霊に嫌われる

「それでは私は用事があるので席を外します。ディスター殿、ここまで送ってくれてありがとうございました」


 そう言ってユーリはさっさと歩いて行ってしまった。

 その様子をリーラは酷く残念そうに眺めていた。


 色取り取りの魔力の光を周囲に漂わせるエルフの少女リーラに案内され、俺達はエルフの里をユグドラシルの方向へと進んだ。


 エルフは今姿が見えるのは殆どが女性であった。

 エルフは女性が多いのだろうか。


「女性ばかりね。エルフは女性が多いの?」


「いいえ。昼は男衆は警備担当以外は狩りに出ているの。女衆は昼は家事と薬作りなどをしているわ」


 同じ疑問を抱いたのか、エミリアがリーラに尋ねた。

 リーラはさらに冷淡な口調で答えた。


 このリーラという少女はユーリと話していた時はあんなに感情豊かであったというのに、俺達と話す時は酷く冷淡な口調で話す。

 俺達が余所者だからと言われればそれまでだが、それにしてもあまりにも態度が極端なので気になった。


「この魔力の光達は一体何なんだ?」


「あら、貴方は()()良いのね。その割には・・随分と嫌われている様子だけど」


 リーラは俺に対してはエミリア達と接するよりも更に冷淡に、言い換えれば、少し見下したような口調で言った。


「これは精霊よ。まだ姿を顕現する事も出来ないような力の弱い子達だけど。聖樹の近くは純度の高い魔力が集まるから、精霊が自然と集まるの」


 リーラは俺を、正確には俺から逃げるように離れていく精霊達を見ながらフン、と鼻を鳴らした。


「精霊は本能的に人の善し悪しを見分けるわ。だけど、こんなに精霊に嫌われる人間は見たことがない。貴方、精霊にこんなに嫌われるなんて、よっぽど悪い人間なんじゃない?」


「ちょっと、貴女、幾ら何でも失礼なんじゃない?」


 エミリアが明らかに怒った口調でリーラに釘を刺した。


「事実を言ったまでよ。だけど、気分を害してしまったのなら謝罪するわ」


 全く謝罪する気のないような口調でリーラは言った。

 俺は彼女に何か恨みを買うような事をしたのだろうか。

 俺はそんな事をした記憶は無いのだが。

 それに精霊達に嫌われる理由にも検討がつかない。


「大体その魔力の光っていうのは何?私には見えないけれど」


 どうやらエミリアには精霊が見えないようである。


「普通の人間には見えないでしょうね。エルフは精霊と共に生きているから、そういったものに敏感なの」


「私には精霊、見えるみたいです。綺麗ですよね」


「・・私は見えない。残念」


 ララには精霊が見えるようだ。

 光の精霊であるオウラと契約しているのが影響しているのだろうか。

 それにララの周囲にはリーラほどではないが、沢山の精霊達が集っていた。


「聖女ララ、貴女はとても精霊に好かれているのね。こんなに精霊に好かれる人間は珍しいわ」


 リーラはララには幾分か優しげな口調で言った。

 なんとなくだが、この少女は精霊に好かれている度合いで人に対する態度を決めているような気がする。


「それに比べて勇者は。精霊が見えるほど鋭敏な癖に精霊に嫌われるだなんて訳がわからないわ」


 酷く見下した様子で言うリーラ。

 やはり精霊に嫌われるのと同様に俺はこの少女に嫌われているらしい。

 はっきりと理解した。


「なるほど。人の旦那捕まえて悪人だなんだと。いい度胸じゃない」


 エミリアは酷く頭に来たようで、リーラにずんずんと歩み寄った。

 ララとエルザも頭に来ているようでエミリアを止める様子はない。

 なので、俺がエミリアの首根っこを掴んで止めることにした。


「落ち着け」


「なにすんのよ!あんたあんな事言われて悔しくないわけ!?」


 エミリアは犬歯を剥き出しにして怒っていた。


「お前は国際問題にでもする気か」


 リーラ・ユグドラシル。

 ユグドラシルの性を持つという事はすなわち、彼女はハイエルフだ。

 ハイエルフはこのエルフの里を治める一族。

 ヤマト王国で言えば王族だ。

 もちろん向こうの態度も問題だが、こちらとしてもこれを殊更に強調して槍玉にあげるのはまずい。

 こんな事で万が一エルフとヤマト王国が仲違いしてしまったら事だからな。

 今は魔族を打倒するために力を合わせる時だ。

 普段のエミリアならこれくらい理解してそうなものだが。

 俺が馬鹿にされて頭に血が上ったらしい。


「・・ごめん。冷静じゃなかったわ」


 エミリアは俺の言葉を受けて落ち着いたようだ。


「それにな。お前達ならともかく、初対面の人間にどう思われようが俺にとってはどうでもいい」


 精々味方になれば良いかな、くらいの認識である。

 たとえ味方にならずとも敵にさえならなければどうでもいい。


「そう、そうよね。貴方ならそう思うわね」


 そう言ってエミリアは深い溜息を吐いた。

 リーラはその一部始終を横目に見ていたが、やがてフン、と鼻を鳴らして前に向き直った。


 さて、これは前途多難だな。

 最長老であるシュリ・ユグドラシルはこうでないと良いが。

 俺は心中で溜息を吐いた。

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