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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第3章エルフの里編
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勇者創造神に会う

 次の日。

 アルメイダ公国を出立する日だ。

 とはいえ、何度も王都に戻っているのであまり感慨は無いのだが。

 しかし、エルザにとっては本当の意味でこれから俺達と行動を共にする日である。

 感慨もあろう。


「・・しっかりな、エルザ」


「・・任せて」


 エルザは無表情でVサインをしていた。

 随分軽い挨拶である。

 まぁこれが今生の別れになるわけでも無いのでこんなものであろうか。

 俺達はザダに別れを告げて王都のサタン邸に転移した。


 転移した先は地下の一室である。

 ここに全受信型汎用転移魔法陣を用意しているのだ。

 俺はもう魔法陣を利用する意味はないのだが、エミリア達はもちろん、転移魔法陣を渡しているエルザも魔法陣無しには転移魔法を使えない。

 なのでエルザに少しでも慣れてもらおうと、わざとこの部屋に転移する事にしたのだ。


「・・どんな屋敷なのか楽しみ」


 エルザはこの部屋と地下訓練場以外にこの屋敷を知らない。

 そして、地上階の屋敷の様子はあえて伝えていない。

 屋敷をしっかり案内するのはこの日にしようと決めていたからだ。

 転移魔法陣の部屋を出ると、そこは地下訓練場である。


「・・やっぱり凄く広い」


 地下訓練場はこの屋敷の敷地内ほぼ全域に限界まで掘ってある。

 広いのも当然である。

 惜しむらくは空間拡張の魔法陣を刻めないことだろう。

 あれはヤマトのオリジナルなので俺には扱えないが、なんとか別の方法で習得したいものだ。


 地下訓練場を出ると、そこはエントランスホールである。

 エントランスホールにはシスとリシルが並んで待っていた。


「「おかえりなさいませ」」


 2人が声を重ねて腰を折り、挨拶をした。

 それに俺達はそれぞれ挨拶を返していく。


「エルザ様。お初にお目に掛かります。この屋敷で侍女を務めさせていただいております、シスと申します。どうぞよろしくお願い致します」


「・・私はエルザ。よろしく」


 シスとエルザはこれが初対面であるので、挨拶を交わしていた。

 ここも上手くやってくれればいいが。

 まぁシスは優秀なので心配する必要はないだろう。


 その後もエルザに我がサタン邸を案内する。

 1階部分の食堂に浴室に応接室、そして2階部分の居間、各人の私室に俺の研究室、最後は寝室だ。


「・・立派な屋敷。素敵」


 エルザはこれから自分が住む屋敷に満足顔であった。

 エルザに空き室の中から私室を選んで貰う。

 エルザの部屋はララの部屋の隣になった。

 部屋も選んだところで最後に紹介しなければならないものがいる。

 俺達は屋敷の前庭にエルザを案内した。


『おお、お前達。帰ったか』


 ガゼルを背中に乗せて丸まっていたケルベロが俺達を見つけるとすぐさま飛び起き、突進してきた。

 そして3つの頭で俺とエミリアとララの顔をベロベロと舐め始めた。


「ケルベロ、ガゼル、ただいま」


「ケルベロ舐めすぎよ」


「ケルベロちゃんくすぐったいです!」


 3人でそれぞれの頭を撫でくり回す。

 いつもの戯れ合いが終わると、やはりいつのまにか横にいたリシルが俺たち3人に蒸しタオルを渡してくれた。


「エルザ、紹介しよう。我が家の番犬のケルベロだ」


 俺は顔を蒸しタオルで拭きながらエルザにケルベロを紹介した。

 エルザとケルベロはお互いをじっと見つめ合っていた。

 そしてエルザがゆっくりと真ん中の頭に両手を差し伸べる。

 ケルベロはエルザが撫でやすいように頭を下げた。

 ゆっくりとケルベロのフサフサの毛並みを味わうように撫でるエルザ。


「ケルベロ。エルザもこれからこの屋敷に住むから、仲良くしてな」


 ケルベロは俺の呼びかけに三つの頭でバウッ、と吠えると、全力でエルザに甘え始めた。


「・・かわいい」


 エルザはフサフサのケルベロの毛並みにご満悦であった。

 普段の無表情さからは珍しく至福そうに表情を蕩けさせていた。


 さて、エルザの案内が終わったので、今度はアルカ神殿に行かなければならない。

 何せ創造神アルカディアからの呼び出しだからな。

 全員でアルカ神殿に向かう。

 エルザは王都はもちろん初めてなので、キョロキョロと興味深そうに周囲を見ながら付いてきていた。

 今度ちゃんと王都を案内してやろう。

 そう思いながら東街商業街を歩いていると、アルカ神殿に到着した。

 エミリアが心付けを修道女に渡し、全員で中に入った。

 相変わらず真っ白な建物である。

 祭壇へと行き、膝をつき手を組む。


 さぁ、来てやったぞ、創造神アルカディア。

 すると、やはり目の前が白い光で埋まっていった。


 次に目を覚ますと、あの白い部屋であった。

 そして目の前には苦笑気味の創造神アルカディア。

 ふむ、今回は腕くらいなら動かせそうだ。

 しかし相変わらず顔や下半身は固まったままだ。

 まぁいい。俺の考えてる事が彼女には伝わっているのだ、会話くらいは出来る。


『よく来てくださいました。偉大なる魔王よ』


 この世界での魔王はスペルビアだがな。

 この世界での俺は勇者だ。


『それでは以後は勇者と呼ぶ事にしましょう』


 好きにしてくれ。大した事じゃない。

 それよりいくつか聞きたい事がある。


『時間は限られていますが、良いでしょう。お聞きください』


 まず、俺が奴ら"生粋の"魔族のように敵に回る事はあるのか?無理矢理人格を変えられたりしてだ。


『ありません。貴方は私の加護を受けていますので、彼女も直接手出しは出来ませんから』


 ふむ、次だ。

 魔族はなぜ人族を滅ぼそうとする?


『それが()()の願いだからです』


 ()()とは誰だ?


『今はまだ、それを言うことは出来ません』


 何故言えない?


()()にこの場所をまだ勘付かれる訳にはいきません。なので、言えないのです』


 なら良い。最後の質問だ。

 憤怒の王イラから魂の宝玉とやらを得た。その時にヤマトの声がしたが、あれは幻覚か?


『いいえ、幻覚ではありません。彼は魂の宝玉にある魔法をかけました。あれは、彼から貴方へのメッセージです』


 そうか。なら俺からの用事は終わりだ。

 いずれ話せる時が来たら全て話してくれ。

 たとえば、何故俺をこの世界に呼んだのか、とかな。


『はい。いずれ、全てを話せる時は来るでしょう』


 そう言って創造神アルカディアは微笑んだ。


『それでは、偉大なる勇者よ。貴方にお告げを授けます』


 そこで創造神アルカディアは一度言葉を切った。

 そして、再びその美しい声で言葉を紡いだ。


『聖樹ユグドラシルを守ってください』


 その言葉を合図に視界がまた白く染まっていった。


 そして次に気が付いた時に視界に広がったのは、やはりエミリアの顔であった。


「あら、戻ってきたかしら?」


「ああ、戻ってきた」


「おかえりなさい」


「ただいま。とりあえずここを出よう」


 ここでは注目を集め過ぎる。

 俺としても今起きた事をまとめておきたい。

 俺達は早足で神殿を出ると、サタン邸へと帰った。


 夕食の席。

 俺は先程あった事をエミリア達に話した。


「という事は、ディスターが"生粋の"魔族達みたいに急に敵に回る事はないのね」


「ああ。そこは創造神アルカディアのお墨付きを貰ったから大丈夫だろう」


「それは何よりだわ」


 エミリアはそう言って安堵の溜息を吐いた。

 俺もその可能性が消えて一安心しているので、同じ心境だろう。


「創造神アルカディア様はこれまでの事から考えると、その()()と呼ばれる人物と敵対しているわけですよね」


「恐らくそうだろうな」


 そして、その()()と呼ばれる人物が魔族を使い、人族を滅ぼそうとしていると。


「・・()()というのは一体誰?」


「単純に考えるなら、神に敵対するような人物なのだから、同じ神とかそれか悪魔の類じゃないのか?」


「それはいずれアルカディア様が話してくれるわけでしょう?今は考えなくていいんじゃないかしら」


 そうだな。今はより重要な事がいくつかある。


「まず、ヤマトからの伝言が幻覚ではない事がわかった。ヤマトは俺に大罪を倒し、魂の宝玉を集めるように言った。ならば俺は言われた通り大罪達を倒して魂の宝玉を集めようと思う」


 あのヤマトが俺に残したメッセージだと、創造神アルカディアは言った。

 不特定多数の誰か、ではなく俺にだ。

 何故ヤマトが俺もこの世界に来る事を知っていたのだとか疑問は残るが、あのヤマトが無駄な事をするとは思えない。

 ならば、これは何か意味のある事なのだ。

 俺は1200年前に生きた友の言葉を信じる。


 それに、そうでなくても奴ら"生粋の"魔族である大罪達は人族を滅ぼそうとしているのだ。

 それだけでも十分敵対する理由になる。


「そうね。人族を滅ぼすだなんて、絶対にさせないわ」


「私達で守りましょう!」


「・・頑張る」


 エミリア達もやる気十分であった。


「で、そこからお告げに繋がる訳ね」


「聖樹ユグドラシルを守れ、ですか」


「・・エルフの里、楽しみ」


 観光ではないんだがな。

 それでも楽しみだという気持ちはわかる。

 エルフの里は迷いの結界に閉ざされた秘境だ。

 資格あるもの以外は近付くことすらできない。


「お父様に話して、正式な訪問という形にするのが一番かしらね。でないと"通行証"を借りられないから」


 普段迷いの結界に閉ざされるエルフの里であるが、実はヤマト王国とは交流がある。

 ヤマト王国の王族には"通行証"と呼ばれる御守りが、エルフの里の王族であるハイエルフより渡されているのだ。

 "通行証"があればエルフでなくともエルフの里に辿り着く事が出来るのだ。


 とりあえず明日、ルーガート王に会い、この話をする事となった。

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