聖女の戦い
ララは辟易とした気分であった。
目の前の筋骨隆々な吸血鬼の男。
その男は自身の名を三将が1人、ゼクトと名乗っていたが、この男、とにかく暑苦しい。
ララの攻撃を受けてはポージングを取り。
ララに攻撃をする前にポージングを取り、攻撃をした後にもポージングを取り。
そもそもなんでポージングをするのか。
その間に攻撃が出来るのではないか。
だが、この男。実力は確かである。
「はっはぁ!"魔力砲"!!」
ゼクトが魔力の塊を殴って砲弾のように飛ばしてきた。
高速で飛んできたそれはララに直撃した。
しかしララの姿が揺らめくと、掻き消えた。
「ふむ!また分身か!」
ララは"ミラージュ"を使ってこのゼクトの戦法を観察していた。
本体は"ミラージュ"を使用するのと同時に"インジビブル"を使用して姿を隠している。
この男、どうやら自分が指定したものを殴る事が出来るらしい。
先程も空気という不定形のものを殴っていたので、恐らく当たりであろう。
"精霊化"をしている自分に物理攻撃は効かないが、ゼクトに直接殴られれば致命傷を受けてしまうかもしれない。
「"シャイニング・レイ"」
ララの分身の1体から光の上級魔法が放たれた。
「むんっ!"超硬化"!!」
ゼクトはポージングを取りながら魔法を唱えた。
するとゼクトの筋肉がガチガチに硬化した。
そしてララの魔法がゼクトに直撃する。
「効かぬわぁ!」
そしてララの魔法は硬化したゼクトの肉体に弾かれてしまった。
そしてまた自らの筋肉を誇示するかのようにポージングを取る。
いい加減にしてくれとララは本気で思った。
「さて、そろそろ遊びは終わりにしよう!」
ゼクトはそう言うと、姿を消しているララの本体に肉迫してきた。
「姿を消している事は最初からわかっていたぞ!」
ゼクトが拳を振りかぶる。
ララは咄嗟に両手をクロスし、ガードの体勢を取った。
「無駄だ!"魔力撃"!!」
ガードの上からゼクトの大きな拳が振り下ろされた。
バキバキという音を立ててララの細腕は砕け折れ、衝撃は内臓をグチャグチャに破壊した。
ララはゴポリ、と血を口から吐き出し、その身体は折れた棒切れのように吹き飛び、壁に激突した。
「はっはぁ!これで終わりだなっ!さて、それではジーダの加勢にでも」
「誰が、終わりだなんて言いましたか?」
ゼクトが声のした方を見ると、ララが立ち上がっていた。
折れた腕も、内臓も、全てが回復していた。
唯一、血を吐いた胸元だけが血に濡れていた。
「"リフレッシュ"」
ララが魔法を唱えると、その血に濡れた胸元すらも綺麗に直ってしまった。
おかしい。ゼクトは思った。
あの一撃は確かに致命傷であったはずだ。
この少女は実体は無いようだが、自分は実体のない存在でも殴り飛ばす事ができる。
それに殴った時には確かに実体を捕らえる感覚があったし、腕も内臓もグチャグチャに破壊されていたはずである。
「なるほど!さては貴様も吸血鬼だったのだな!」
ゼクトはそう結論付けた。
「違います」
ララは吐き捨てるように言った。
ララは"精霊化"している時、ある魔法が使える。
それは、名を"自動回復"という。
特級治癒魔法である"神の光"を待機状態で保持させておき、致命傷を受けた際、意識の有無に関わらず自動で"神の光"を発動、傷を治癒する。
今回もその魔法により致命傷を回復したのだ。
「・・貴方は遊びは終わりだと言いましたね」
「ん?」
「私も同感です。この城への被害を考えて戦ってましたが、もう気にしません」
そう言うと、ララは魔力を急激に高めた。
「"ミラージュ"」
ララが右手をゼクトに向け魔法を唱えると、そのララの右手にいくつもの"右手"の幻影が重なった。
「はっはぁ!また受け止めてくれるわ!"超硬化"!!」
ゼクトはポージングを取り、"超硬化"の魔法を唱えた。
ゼクトの筋肉がガチガチに硬化する。
「これを受け止められるものなら、どうぞ」
そう言ってララは魔法を唱えた。
「"エンシェント・レイ"」
光の特級魔法"エンシェント・レイ"がララの右手から放たれた。
今までは城の被害を気にして上級魔法を放っていたが、それはこの男には通用しない。
ならば、自身の最大威力を誇るこの魔法を。
更に合計10本分の右手で、10発一気に放つ。
ゼクトは一瞬その魔法に拮抗したが、すぐに押し負け、消し飛んだ。
光の極光はそのまま直進、王座の前の壁に巨大な風穴を開けた。
「ああ、後で文句を言われそうです・・」
ララは溜息を吐き、他の仲間達の戦いを見守る事にした。




