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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第2章アルメイダ公国編
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聖女の戦い

 ララは辟易とした気分であった。

 目の前の筋骨隆々な吸血鬼の男。

 その男は自身の名を三将が1人、ゼクトと名乗っていたが、この男、とにかく暑苦しい。

 ララの攻撃を受けてはポージングを取り。

 ララに攻撃をする前にポージングを取り、攻撃をした後にもポージングを取り。

 そもそもなんでポージングをするのか。

 その間に攻撃が出来るのではないか。

 だが、この男。実力は確かである。


「はっはぁ!"魔力砲"!!」


 ゼクトが魔力の塊を殴って砲弾のように飛ばしてきた。

 高速で飛んできたそれはララに直撃した。

 しかしララの姿が揺らめくと、掻き消えた。


「ふむ!また分身か!」


 ララは"ミラージュ"を使ってこのゼクトの戦法を観察していた。

 本体は"ミラージュ"を使用するのと同時に"インジビブル"を使用して姿を隠している。

 この男、どうやら自分が指定したものを殴る事が出来るらしい。

 先程も空気という不定形のものを殴っていたので、恐らく当たりであろう。

 "精霊化"をしている自分に物理攻撃は効かないが、ゼクトに直接殴られれば致命傷を受けてしまうかもしれない。


「"シャイニング・レイ"」


 ララの分身の1体から光の上級魔法が放たれた。


「むんっ!"超硬化"!!」


 ゼクトはポージングを取りながら魔法を唱えた。

 するとゼクトの筋肉がガチガチに硬化した。

 そしてララの魔法がゼクトに直撃する。


「効かぬわぁ!」


 そしてララの魔法は硬化したゼクトの肉体に弾かれてしまった。

 そしてまた自らの筋肉を誇示するかのようにポージングを取る。

 いい加減にしてくれとララは本気で思った。


「さて、そろそろ遊びは終わりにしよう!」


 ゼクトはそう言うと、姿を消しているララの本体に肉迫してきた。


「姿を消している事は最初からわかっていたぞ!」


 ゼクトが拳を振りかぶる。

 ララは咄嗟に両手をクロスし、ガードの体勢を取った。


「無駄だ!"魔力撃"!!」


 ガードの上からゼクトの大きな拳が振り下ろされた。

 バキバキという音を立ててララの細腕は砕け折れ、衝撃は内臓をグチャグチャに破壊した。

 ララはゴポリ、と血を口から吐き出し、その身体は折れた棒切れのように吹き飛び、壁に激突した。


「はっはぁ!これで終わりだなっ!さて、それではジーダの加勢にでも」


「誰が、終わりだなんて言いましたか?」


 ゼクトが声のした方を見ると、ララが立ち上がっていた。

 折れた腕も、内臓も、全てが回復していた。

 唯一、血を吐いた胸元だけが血に濡れていた。


「"リフレッシュ"」


 ララが魔法を唱えると、その血に濡れた胸元すらも綺麗に直ってしまった。


 おかしい。ゼクトは思った。

 あの一撃は確かに致命傷であったはずだ。

 この少女は実体は無いようだが、自分は実体のない存在でも殴り飛ばす事ができる。

 それに殴った時には確かに実体を捕らえる感覚があったし、腕も内臓もグチャグチャに破壊されていたはずである。


「なるほど!さては貴様も吸血鬼だったのだな!」


 ゼクトはそう結論付けた。


「違います」


 ララは吐き捨てるように言った。

 ララは"精霊化"している時、ある魔法が使える。

 それは、名を"自動回復(オートリジェネ)"という。

 特級治癒魔法である"神の光"を待機状態で保持させておき、致命傷を受けた際、意識の有無に関わらず自動で"神の光"を発動、傷を治癒する。

 今回もその魔法により致命傷を回復したのだ。


「・・貴方は遊びは終わりだと言いましたね」


「ん?」


「私も同感です。この城への被害を考えて戦ってましたが、もう気にしません」


 そう言うと、ララは魔力を急激に高めた。


「"ミラージュ"」


 ララが右手をゼクトに向け魔法を唱えると、そのララの右手にいくつもの"右手"の幻影が重なった。


「はっはぁ!また受け止めてくれるわ!"超硬化"!!」


 ゼクトはポージングを取り、"超硬化"の魔法を唱えた。

 ゼクトの筋肉がガチガチに硬化する。


「これを受け止められるものなら、どうぞ」


 そう言ってララは魔法を唱えた。


「"エンシェント・レイ"」


 光の特級魔法"エンシェント・レイ"がララの右手から放たれた。

 今までは城の被害を気にして上級魔法を放っていたが、それはこの男には通用しない。

 ならば、自身の最大威力を誇るこの魔法を。

 更に合計10本分の右手で、10発一気に放つ。

 ゼクトは一瞬その魔法に拮抗したが、すぐに押し負け、消し飛んだ。

 光の極光はそのまま直進、王座の前の壁に巨大な風穴を開けた。


「ああ、後で文句を言われそうです・・」


 ララは溜息を吐き、他の仲間達の戦いを見守る事にした。

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