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最強魔王が異世界で勇者になりました  作者: 湯切りライス
第1章ヤマト王国編
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魔王家族会議をする

 その後は諸々の挨拶を行った。

 まずは宰相であり、ララの父であるノーチスに。

 ノーチスは改めて俺たちを祝福してくれたが、今までのラビエラの所業を聞くと激怒していた。

 "あいつぶっ殺してやる"とはノーチスの談である。思わずエミリアが止めなければ本当に神殿に乗り込んでいきそうな剣幕であった。

 そんな父親の様子にララは嬉しそうに笑った。

 ララは家族とは壁があったと言っていたが、父の愛を感じられたのだろう。

 結局"ただでは済まさない"というところで落ち着いたノーチス。俺としてもあの男には腹立たしい思いがあるので、ぜひにお願いしたいところだ。


 国王であり、エミリアの父であるルーガートには夕食の席で報告した。

 ルーガートは"エミリアさえしっかり愛してくれれば問題はない"と言い、俺たちの仲をやはり祝福してくれた。

 そしてここでも今までのラビエラの所業を話し、ノーチス同様に怒りを見せたルーガートからはやはり"ただでは済まさない"とのお言葉を頂戴した。

 国王と宰相というヤマト王国の2トップである。俺は政治的な事には詳しくないが、それでもあのラビエラという男が敵にしてはいけない人間を敵にした事だけはよくわかる。文字通りただでは済まないだろう。


 さて、俺たちであるが、今後の事を話し合うために俺の自室に集まっていた。

 差し当たっての議題はララの事であろう。

 ララは俺の妻となるため、既に神殿を出てしまった。そしてその夫となる俺は現在王城に居候している。言えば当然ララも居候する事はできるであろうが、そういう問題ではない。

 俺は考えた。


「家を買おうと思う」


 理由はいくつかある。

 一つ目は次期女王の夫になる俺がいつまでも居候の身分ではまずいという事。

 まだ正式に発表はされていないが、どこから漏れたのか既に俺がエミリアと婚約者となった事は知れ渡ってしまっている。

 その上更に側室を持ったばかりか拠点すら持たない、というのは世間体的にもまずい。

 次の理由としては、自分の拠点を持てば、そこに転移魔法陣を設置できるという事。

 これから旅をするとして、王城では人の目があるので転移魔法陣は使えない。その点自分の拠点なら思う存分使えるだろう。室内に直接転移してしまえばバレる事はあるまい。

 当然周囲的には旅に出てる予定なので大っぴらには帰れないが、それでも自由に帰れる、というのはとても有利に働くだろう。

 以上の点から、俺は家を買う事に決めた。


「そうね。お金も無いならまだしも。お金はあるものね」


「王都の内街に家を持てるだなんて。素敵です」


 エミリアとララも賛成してくれているし、これはもう決まりだろう。

 ちなみに、王都の内街に家を持つ事は貴族達の中では力のある証なのだそうだ。なぜ人族はそういう無駄なところで見栄を張りたがるのか。昔から謎である。


「明日不動産屋に3人で行きましょうか」


「良いですね!家を選ぶなんて初めてです!」


「ふふ、私も初めてよ。楽しみね」


 この二人はこの短時間ですっかり仲良くなっていた。エミリアは社交辞令も得意だが、本来の人格としては飾らぬタイプの人間である。ララとの相性は良いのだろう。それにエミリアも心を読まれる事を気にしていない。俺との関係無しにでも出会ってさえいればこの二人は良い友人になれただろう。


「さて、次の議題だが、ララ。魔眼を制御してみようか」


 そう、次はララに魔眼の制御方法を教えるのだ。


「私にできるでしょうか」


「大丈夫だ。そこまで使い慣れているなら、後はやり方を覚えるだけだからな」


 そもそも俺の常識からすればこんなに問題なく使えているのにオンオフだけ出来ないなんて驚きだ。聞いてみるとこの世界の人間は魔眼を持つ者はララのようにずっと使いっぱなしか、眼帯などをして物理的に目を塞ぐかのどちらからしい。

 この世界は前の世界と比べて、すごく似通っているのに、全体的に少しずつ遅れているような印象を受ける。

 ヤマトは人類の進化とはつまり戦争の歴史だと言っていた事があった。

 前の世界はこの世界よりも魔族と人族は激しく争っていた。結果的に和解できたが、その辺がこの技術の進歩の差に現れている気がする。


「じゃあさっそくやってみよう。まず目を閉じてくれ」


 そう言うとララは目を閉じ、なぜか口を尖らせた。キスをせがんでいるのだろう。

 どうやらエミリアとララの間にはいくつか決め事がなされたらしい。

 お互いに遠慮しない事。片方がやってもらった事はもう片方も同じようにやってもらう事などなど。これが円滑にこの関係を進めていく為だというのでこればかりは任せる他ない。俺は俺でこの二人を平等に愛する努力をするのだ。

 と言うわけで先程、昨日エミリアにしたようにララにもキスをしたのだ。それでまたせがんでいるのだろう。もちろん今は魔眼制御の練習の時間なのでその願いは無視する。


「自分の魔力の流れを追ってくれ。魔眼に魔力が流れているのはわかるか?」


 やる事は簡単だ。普段魔眼に自然と流れている魔力の流れを切ってやれば良い。それだけで魔眼はオフの状態にできる。目を瞑らせたのは魔力感知の感度を少しでも鋭敏にする為だ。


「わかりました!これですね」


「よし、では魔眼への魔力の流れを切るんだ」


「はい、やってみます」


 俺も手を繋いでララの魔力を感知し、制御の補助をする。完全に俺が制御するのでは意味がない。あくまでララ自身が行う制御を少し流れを作ってやりやすくするだけだ。


「できました!」


 ララの言葉通り、魔眼への魔力の流れがしっかり止まっている。


「よし、そうしたら目を開けてみろ」


 ララはゆっくりと目を開け、そして俺と目を合わせた。ぱちぱちと何度か瞬きをし、そして声をあげた。


「心が読めません!過去も流れてきません!魔眼がちゃんとオフできてます!」


 よし。成功だ。ララの瞳の奥にあった魔法陣が消えている。だが、もう1パターン練習する必要がある。


「それでは魔眼を発動してみろ」


「はい」


 さて、発動できたかな。実験するか。

 ララの頭を撫でる。ララの髪は柔らかくて気持ちいいな。手櫛をしても全く引っかかる様子がなく、すうっと通っていく。まるで絹のような髪だ。

 そんな事を考えていると、目を合わせたララがさっと顔を赤くした。

 その瞳には再び魔法陣が。成功だな。


「魔眼発動できたみたいだな」


「・・はい。普段はオフにしておこうと思います」


「よし、これで制御完了だ」


 そう言ってもう一度ララの頭を撫でる。

 ララの瞳からはしっかり魔法陣が消えていた。


「ちょっと。なんでララは赤くなってるのよ」


 するとエミリアが文句を言い始めた。

 おっと。

 ララの頭から手を離し、続けてエミリアの髪を撫でる。


「エミリアの髪も俺は好きだ」


「なっ!ふん、そうでしょ!ディスターはよく私の髪を触るものね!」


「触り心地いいからな」


 エミリアを撫でながら思う。

 二人を平等に愛するというのは大変だ。

 人族の貴族は複数の妻を娶るのが普通だと言う。

 しかし、国王であるルーガートの妻は5年前の魔族大侵攻で既に亡くなったエミリアの母であるカラミナのみである。

 理由を聞いてみると、ルーガートは5年前の戦場に共に出ていたが、カラミナを魔族から守り切れず後悔して、カラミナに操を立てたのだそうだ。

 その当時エミリアはまだ戦場に立てず、母を失い力のない自分を呪ったという。

 それから彼女は努力し、やがて位階序列第7位となるまで成長した。今の彼女の役目は国の筆頭魔法師として、王都の防衛のため王都を離れられないユーリの代わりに国の危機に対応する事だという。彼女は親の死を乗り越えたのだ。

 大したものだと思う。俺なんかは両親の死を乗り越えるのに10年は掛かったというのに。


 さて、では本日最後の議題だな。


「では最後に。ララはもう"見た"から分かるだろうが、俺の力を教えたいと思う」


「あの黒い魔法ね!」


「そう。あれが俺の固有魔法"暴食の王(グラトニー)"だ」


 暴食の王(グラトニー)

 その名の通り全てを喰らい尽くす魔法。

 それは生き物だろうが、魔法だろうが関係なく喰らい尽くす。

 俺の魔法制御領域の大部分で常に制御してなければ、無制限に周囲を食い荒らし始める危険な魔法。

 喰ったものは全て魔力に変換される。そして魔力を使って自身の領域を増大させ、更に喰い荒らしていく。

 この魔法が突如発現したその日に暴食の王は暴走し、両親と住んでいた村の住人全てを喰い荒らし、そこに居合わせた人族の賢者が強制的に魔力を制御するまで暴れ尽くした。

 あの時あの賢者が居なければ俺はそのまま世界を滅ぼしていたかもしれない。それほどに危険な力だ。

 その後10年間、この魔法を制御できるようになるまで俺はひたすらその人族の賢者から魔力制御の術と魔法陣の技術を習った。

 この魔法は俺の魔力制御能力の限界を超えると、暴発する。

 なので俺はこの魔法が魔力を生み出しても暴発しないように常に魔力は全力の半分程しか制御していないのだ。

 そして戦いの時にはその莫大な魔力制御能力でもって身体強化の魔法を使っている。

 だから俺の身体強化魔法は誰よりも強い自信がある。


「俺と共闘する時は気をつけてくれ。もう制御を間違える事は無いと思うが、俺はお前達二人を失いたくない」


「わかったわ」


「わかりました」


 二人は強く頷いた。


「それにしても、それだけ莫大な魔力量をしてるのに、まだ半分だなんて信じられない魔力制御能力ね」


「逆に言えば、それくらいの制御能力が無ければこの魔法は制御できないんだ」


「なるほどね」


 そう言ってエミリアはにやりと笑った。


「つまり、ディスターは無敵ってわけね。魔法も何もかも喰いつくせるわけだから。位階序列1位も納得だわ」


「確かに闘って負けるとは思わないが。搦め手を使ってくるかもしれないし、お前達二人が狙われるかもしれない。俺の目が届くうちは二人とも守り切る自信はあるが、別行動をしていればそれも出来ないかもしれない。とにかく油断はしない事だ」


「そうね。特にララは危険だわ」


 そう言ってエミリアはララを見やった。

 ララは神妙な顔で頷いた。


「足手まといにならないように頑張ります」


「そうだな。ララには念の為強力な物理・魔法障壁の魔道具を作る事にしよう」


「ほんとですか!?嬉しいです!」


 そう言ってララは笑った。

 直近の目標は家の購入とララの魔道具作成だ。

 いずれ王都に来たる災厄とやらの前に準備を整えたいところだな。

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