プロローグ
初投稿です。どうぞよろしくお願い致します。
「お疲れ様でございました。魔王様」
「あぁ」
傍に立つリシルから冷たいタオルを受け取り、顔を拭う。
彼女はどこぞの異世界人の勇者から悪影響を受けて以来、「これが従者の正装です!」などと言ってフリフリのメイド服に身を包んでいる。
先程の俺の演説を受けて、城下では臣民達が声を大にして魔王様万歳と繰り返している。
これでやっと、永きに渡る人族と魔族との戦争は終わったのだ。
先代魔王も先々代魔王もそのまた前の魔王も人族と血で血を洗う戦いを続けてきたが、なぜ殺し合わねばならぬのかと俺は疑問を持ち、同じ疑問を持っていた人族の異世界人の勇者と幾度となく戦いを続け―――ついには和解する事が出来たのだ。
俺自身にも半分人族の血が入っているし、見た目も人族とほとんど変わらなかった上に、その特殊な生い立ち故に人族も魔族とさして変わらないのをこの目で見る事ができた。
また、あの勇者も異世界人だったからこの世界の常識がなく、いい意味で魔族と争う現状を疑ってくれていた。
それらが合わさってこの現状が生まれたのだろう。
その後魔族・人族にそれを説明し、理解してもらうためには色々とあったのだが、それは置いておこう。
「これからは魔王様がお望みになられた平和な時代が始まりますね」
「―――そうだな」
そして、その平和な時代に俺のような"化物"は必要ない。
「んじゃ、今日はもう休むよ」
「かしこまりました。お休みなさいませ、魔王様」
しばらくしたら魔王を誰かに継がせて隠居でもするか。
そんな事を考えながら、眠りについた。
◇
目が覚めると、そこは白い空間であった。
見渡す限り白い部屋。床も天井も壁も全て白。家具や扉や窓も見当たらない。
身体を動かそうとしても、まるで金縛りにあったように指一本として動かない。
視線も正面から外せず、これはどうしたものかと思っていると、視線の先に1人の女性がふわっと唐突に現れた。
女性は白いベールに包まれており、風もないのに腰まで伸びる艶やかな金髪はサラサラと揺れている。
顔は俯いていて口元しか見えないが、どこか悲しげな様子が伝わってくる。
その女性は両手を胸元でキュッと結ぶと、口をゆっくり開いた。
「偉大なる魔王よ。どうか私の世界をお救いください」
一体何を―――そう思った瞬間、視界が徐々に光に包まれていき、やがて目の前が光でいっぱいになった。