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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第2シーズン ハーネイト&DG連合VSヴィダール・ティクスの邪神
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第83話 古代人が作り上げた都市・ミスティルト到着


 ハーネイトたち一行はそれから森林地帯を抜けて、ヴィストラ砂漠平原をベイリックスで駆け抜け、途中些細なトラブルはあれど無事にミスティルトシティのすぐ近くまで来ていた。

 

 この砂漠平原は正確には荒野ではあるが徐々に砂漠化が進行している領域であり、通常の砂漠と違うのが、最高気温が最大で30℃程度までしか上がらず、最低気温がマイナス3度から15度と夜の寒さが他の地域に比べ尋常ではないという点であった。


 そう言った地形的背景も含めこの砂漠周辺にしか生息しないとある生物が数種存在するという。ハーネイトも以前調査したことがあるが、その時の記録はアクシミデロ星における生物研究の歴史においてとても貢献したといわれている。


 またこの砂漠の中央部に存在するミスティルトシティは今はほとんどいないという古代人により作られたハイテクな都市であり、文明度が機士国よりも進んでいる箇所も多く存在するほどに発達していた。


 このような中規模の都市が、北大陸に3つ、東大陸と西大陸に1つずつ存在しているといわれ人口も多く、異世界から転移してきた人も多く暮らしており非常に栄えている都市でもあった。


「到着したぞ。本当に、いつ見ても古代人の技術力は驚きを禁じ得ない」


「機士国よりも立派な建物ばかりだ。すげえ。風魔、あのでかい塔の群れ何かわかるか?」


「あれはビルよ。はるか昔の人の技術で、建物を高く作り上げたのよね。今だと難しいかも」


「魔法工学を使えばどうにかだが手間はかかるな」


 ハーネイトたちは巨大なビル群がいくつも並ぶ街の中央部を見ていた。この街に拠点を一応構えている彼はともかく、リシェルと南雲は古代人が作り、そして彼らがいなくなってからも形状を何百年も維持していた建物群を見て率直な感想を述べた。


「すごいわ、こんなところがあるなんて」


「この星に、ここまで立派な都市があるなんて。驚いたわね。これならいろいろできそうだわ。ハーネイトさまさまだわ。魔女の森から離れてよかったわよ、こんなにすごいものを見られるだなんて」


「ミカエル姐さんはしゃぎすぎです。しかし私たちは森から出たことがほとんどなかったので、目に映るものすべてが新鮮です。もっと、旅をしたいかも。こういうところもまだあるのですよね」


「わああ! 本当に立派な建物ね。ここの規模なら補給も安心そう。ハーネイト、早く街にいこう!」


「そうだなリリー。では向かおうか」


一行は簡単な手続きののちミスティルトシティの中に入った。このミスティルトは探すのが地形や気候上難しいところであり、商人や冒険者以外にはあまり知られていない街ではある。


 この星全体が広大すぎるという理由もあるが、特にここは知る人ぞ知る良い拠点である。そのためハーネイトと召使3人以外にここを訪れたものは皆無であった。

 

 それはDGの人たちも同じであり、シャックスとリリエットはその光景に目がくぎ付けになっていた。何よりDGも古代人の都市に関しては存在を殆ど把握しておらず、さらに拠点として今回重要な場所であることがわかってくるだろう。


「さて、久しぶりにきたがここはいつも通りか。流石砂鯨たちだ。元気に泳いでるね」


 ハーネイトは街の先にある広大な砂漠で、砂の中から勢いよく飛び出し砂煙を纏いながら大きく空を舞うクジラを見ていた。

 

 それは砂鯨といい、縄張りに入ったものはすべて捕食するかなり気性の激しい大型の哺乳類でありこのエリアにしか生息していないという。


 ハーネイトはこの砂鯨たちとは友達のようなものであり、以前から彼に身についていた動物会話の能力と彼の純粋な心に、鯨たちも心を通わせるようになったという。こうしてあらゆるものを仲間にしてしまうのが彼の能力であるが、問題は彼自身がその力に無自覚ということである。


「まさか、あのでかい砂漠を泳いでいた化け物か?」


「いかにもそうだが。俺の友達みたいなものだ」


「本当に節操ないな。何でも仲間にするとかいくらなんでもおかしいだろ! ユミロとシャックスとリリエットの件も含めてだが、もし3人が潜入工作員だったらどうするんだい相棒」


「えー、だっていつの間にかそうなっているというか、本当に成り行きなんだ」


 ヴァンの指摘にハーネイトはあくまで成り行きでそうなったと高い声でそう反論する。それに呼応するかのような形で、砂鯨たちが甲高い声で鳴き彼らを笑わせる。


「あの鯨たち、会話聞こえてんのか? にして本当に恐ろしいぜ、相棒は」


「裏切った時は残念だけど、300回ぐらい一瞬で切り刻む……? それともお手製の魔獣料理を胃が破裂するまで食べさせようか。これでも尋問や拷問は魔法警察時代から得意だったし」


「だいぶ素が出ていませんかマスター」


「あ、あっ……ごほん」


 ヴァンに対し、ハーネイトは死神が乗り移ったかのようなおぞましい表情を一瞬だけ見せて裏切り者に対する処遇を伝え、その後満面の笑みでその表情をごまかした。


 それに南雲が指摘し、彼は顔を赤くしていた。里の方である程度素の姿を見ていた彼だが、まだこれも猫をかぶっているのではないか、実はかなりの天然ではないかと南雲は忍の感を張り巡らせていた。


 性格には、彼は戦う時に性格を強引に変える魔術を魔女から習ったため戦闘時のみ攻撃的になる場合がある。また素でも、あまり嫌なことをされまくると戦闘モードとノーマルモードが合わさった状態になることがあるらしい。


「まあいいんじゃない、面白いし。しかし砂鯨にあと鮫みたいなものもいたけど、なんなのよあの砂漠!」


「本当に面白いわね。任務だとこうする余裕もなかったし、こうしてみんなといられるのは楽しいわ」


「あの、風魔。一応仕事……。でも、仲間と一緒に居られて楽しいのはまさに同感だ。しかもこういう場所を訪れることができるならなおさらでござる」


 ヴァンはハーネイトの力の底なさに驚き、リリーは砂鯨をしばらく見ていた。そして若干遊び感覚の抜けていない風魔にハーネイトは優しく指摘する。


「そ、そうですねすみません。忍って基本単独で任務にあたることが多くて、こういったみんなで力を合わせるなんてことは国攻めの時ぐらいしかなかったので嬉しくて。早く終わらせて、ハーネイト様のメイドに、えへへ」


 風魔が笑顔でそう言いながらリシェルやミカエルたちのほうを向く。


「そうか。それなら仕方ないか。しかし仕事はしてもらうからな。って風魔……少しは抑えてくれ。まあ、考えておくよ。計画はしていたし。皆さん、先に情報収集と補給を済ませ、このままガンダス城に突撃する」


「ま、まじすか?」


「中々大胆ですね。最初に出会った頃とは大分いい意味で違ってきましたね」


 そして遅れて車内から出てきたシャックスとリリエット、ルシエルが彼に進言した。日之国での一見以降、調子の上がってきた彼のことは分かるが、少し間をおいても敵は油断をしているから猶予はあると元DGたちは指摘する。


「私は構いませんが、しかしここは1つ休んでからいく方がいいかと」


「ハーネイト義兄様はともかく、他の人たちは疲労しています。いい仕事をするには、休むのも必要です。そうおっしゃっていましたよね?」


「彼女の言うとおりね。まだ猶予はあると思うわ」


「わかった。それならばやるべきことの順番を少し変えるだけだ。いまから自由行動だ、3時間後にこの広場に集まってくれ。それまでに私が宿の手配をしておく」


 3人のその提案にハーネイトは快諾し、ハーネイトは街のやや西側にある巨大な建物を指さす。


「あそこに私の拠点がある。全員私が費用を持つから心配しないでくれ」


「さすがですね師匠。ありがとうございます」


「本当にいいのハーネイト? すごく高そうなホテルだわ」


 リシェルとミカエルは凄まじく嬉しそうな表情をしていた。それに対しハーネイトはそのホテルについて説明をした。


「ああ。というかあそこは私が出資して建てたホテルだ」


「ハーネイトさんの出生もですが、資金の在り方と使い方もすごそうですね」


「それと、あのホテル、ウルシュトラは元々私の事務所があった場所でね。機能は残しているから今でも使えるし敵攻略に関してここが一番どこからでも行きやすい。一応策は色々考えているのでね」


 リリエットがエレクトリールとハーネイトを交互に見ながらそう思ったことを口に出した。またハーネイトは指さしたホテルが自身の元事務所であることを彼らに明かした。


「流石ですな、マスター」


「そうです、ハーネイト様はああ見えて皆さんのために常日頃神経を削いで策を考えているのです」


「そうですな、ってミレイシアさん顔が怖い」

 

 南雲はマスターである彼の手腕を評価していた。それにミレイシアが当たり前でしょうと口を出す。


「では皆さん、しばし休憩を」


 そしてハーネイトは先にホテルのほうに向かい人ごみの中に入っていった。その先で早速熱いファンの声援を全員が聞いていた。


「ではヴァン、いきましょう?」


「ああ。ここでもどんな眷属がいるか調査だな」


「ヴァンも見た目に反して熱心ね」


「うるせいやい」


 そうしてヴァンとリリーは街内観光に出かけて行った。しかしリリーはともかく、ヴァンは少しピリピリしているように見えた。


「リシェルさん、探索しませんか? 」


「ああ、そうしようか。」


「さて、拙者らは偵察をしなければな」


「私たちはどうしようかしら」


「ミカエルとルシエル殿。そういや、ここは様々なお店がある。そしてマルクでもメリスでもほとんど支払える。見ていくといいのではないか?」


 各々がこれからどうしようかと考えていた。するとミロクはミカエルにそう説明したあと、シャムロックとミレイシアとともに、ホテルの方角にベイリックスで移動していったのであった。


「お店見てこよう、かな」


「私も気になるわ。同行、いいかしら」


「まあいいけど。そこの美形ロン毛さんは?」


「私は、そこで何か演奏でもしていますよ。小銭稼ぎでもできれば、なんて。いい街ではよい演奏をしたくなるのです」


シャックスはそういうと先に離れ、その後各自でそれぞれ行動することになった。広場で彼はずっと背中に背負っていたケースから何かを取り出した。それはギターらしき楽器であり、椅子に座るとシャックスは上機嫌で演奏をし始めた。


 彼は静かに、故郷でなじみの曲をゆっくりと弾いていると、次第にそれを聞きに来る人たちが彼を取り囲んでいた。



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