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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第68話 ヴァンの恐るべき力とハーネイトの再起動


「この菌帝剣こと、サルモネラ・グレートソードの切れ味、とくと堪能しやがれってんだ! 」


 そう叫ぶとヴァンは、上空から急降下しながらその大剣を軽々と片手で操り、ヴァンオーヘインの胴体まで届く強烈なV文字斬りを繰り出した。


「サルモネラ・ヴァイラスエンド、ぶっ醸してやるぜぇ! 」


 ヴァンの手にしている濃灰色の大剣は、自身や周りから集めた微生物を限界まで凝縮し、物質化したものである。その性質上、対象に触れた瞬間その剣を構成している微生物にその部分を分解され食べられてしまうという代物であった。

 

 何よりも恐ろしいのは、ヴァン以下微生界人がこうして形成した武器は、特定の力、つまりシャックスたちのような霊量子、龍の力と言う力がない限り一切の防御が無効になるというところであった。


 また、相手の防御も微生物で喰らい尽くして自身の体力に変換する。ハーネイトもヴァンとの初戦でこれを見誤り致命的なダメージを受けている。


 ハーネイトが多種多様な能力を適材適所で最大限に運用するのに対し、ヴァンはシンプルイズベストを地で行く戦いをするという違いがあったが、どちらにしろ相手からすれば悪夢そのものである。


「グッ、ガアアアアアアアアッ! 」


 攻撃が当たる瞬間にその部分を食われ、痛みも感じず、徐々に体の組織が崩壊していくのを自覚したヴァンオーヘインは、その事実に耳をつんざくほどの咆哮をあげる。その声は天日城まで届くほどであった。


 本来この魔獣は物理に強く魔法に弱い。そして氷と風が弱いという特徴があるのだがヴァンはそれを一切無視して大ダメージを与えたのだ。これがヴァンの脅威の力である。


 「早くくたばれ。せいぜい栄養分にして吸収してやる」


 ヴァンは勝負あったなと確信していた。しかし彼はこの手の巨大魔獣が備えている、厄介な能力の存在をまだ知らなかった。ヴァンオーヘインはその場から動かず、突然大量の息を吸い込み始めた。それは森の中にあるものすべてを巻き込み吸い込む掃除機のようであり、八紋堀も重心を低くし防御態勢をとるが今にも吸い込まれそうな状態であった。


「ぐぬぬぬぬ!ふん! 」


 八紋堀は暴風に耐えつつ、さらに文斬流「二束三文斬り」を繰り出し、その吸い込みを止めようと斬撃を3回放つ。それはすべて魔獣に直撃してダメージを与えるも、次の瞬間魔獣の体は急速な勢いで再生しつつあった。


「なんだと!俺の眷属ですら食い尽くせねえのか。いや、方法はあるはずだ」


 ヴァンが考えていたその時、城の方から強烈な魔力反応と紅色のレーザーがヴァンオーヘインの胴体や足をぶち抜いた。


「やはりハントっていうのはこういうものだな。最高だぜ」


「油断するな孫よ。あれの再生能力は尋常ではない。足元から狙え。動きを止めれば時間稼ぎにはなるはずだ」


「あいよ!爺さん。……魔閃ディスティロ発射! 」


 そのレーザーは城の屋上にいたリシェルの砲撃によるものであった。魔銃士としての才覚を発揮しつつあった彼は、アルティメッタ―に魔力を込めてそれを収束し発射したのだ。


「ギェアアアアアアアア! 」


 リシェルの一撃で胴体に穴が開くヴァンオーヘインは痛みからか少しふらつき始める。更に第2射、第3射が城の方からまっすぐ放たれ、紅色の魔閃が両足に直撃する。3発とも有効弾であり、ヴァンオーヘインは巨体を支えるのが困難になっていた。


「そこだ、俺が更に動きを止めてやる、闇忍法・影針陣! 」


 森の中から南雲の声がし、茂みの中から高く彼が飛翔する。そして魔獣の影に向かって黒い魔法弾を空中から地面に向けて発射する。その弾が影に触れた瞬間、黒い影の針が無数に現れ、ヴァンオーヘインの表皮を貫き動きを更に封じた。


「昼間だったからよかったぜ。さて、動くなよ」


「やるじゃねえか南雲。風魔と言い忍者勢は面白いな。相棒が見ていたら、きっと頼もしいなっていうだろうな! 」


 風魔や南雲の攻撃を見て、ヴァンは集まった人たちのレベルの高さを素直に褒めていた。


「追いつきました。ユミロ、リリエット、再度連携攻撃で足先を破壊するのです!震えろ。フルンディンガー!」


「永断の、斬撃! 」


「映えろ、桃色輝夜紅姫!斬連飛衝フラレッド・セスパーダ


 ヴァンたちの近くまで来たユミロたちが、落下しながらそれぞれがヴァンオーヘインの足元を完全に崩そうと大技を繰り出した。その一撃は見事命中し、行動の自由を奪うだけでなく再生能力にも影響を与えつつあった。


「わ、私たちはここでいいよね兄さん? 」


「そうだな、不測の事態に備え門を守るぞ」


「私も来ちゃいましたけど、ここからあれでも撃ちましょうかね」


「エレクトリール、何をするつもり? 」


 その頃アンジェルとルズイーク、エレクトリールは西門の周辺に待機し、不測の事態に備えていたのである。しかし彼女も血が騒ぎ戦いたくなったのか今いる場所から強烈な電撃を浴びせようとしていた。


「いや、エレクトリール。直接魔獣に攻撃した方がいいかもしれん。何をするのかはわからんが、もう少し前に出た方がいいだろう」


「持ち場は私たちと、向こうからきている侍たちに任せて。いきなさい」


「ありがとうございます。では! 」


 エレクトリールは雷槍をもち、魔獣めがけて森の中を猛スピードで駆けていった。


「ん、ああ……っ。はっ! 」


 ハーネイトはいきなり上体を起こしながら目覚めた。そして夜之一とアレクサンドレアルの顔を見る。


「起きたかハーネイト! 」


「心配したぞ、今巨大魔獣が日之国の近くにいる。しかしいけるか? 」


「……なんとか。しかし、力が胸の奥からあふれてくる感じだ。って、魔獣?ああ、本当にいるな」


 まだ少し眠りから覚めていないハーネイトは2人に戦えることを伝え、魔獣の方を見る。そしてヴァンたちが戦っているのを見た。


「ヴァンオーヘインか、あれは倒し方の順番があるんだ。ヴァンはそれを知らないはずだ。もたもたしていると受けたダメージを放出する」


「なんだと!むやみな攻撃はまずいのかあれは」


「その通りです」


「それで、その放出攻撃の威力は分かるのか? 」


 アレクサンドレアルはハーネイトに訪ね、夜之一がその攻撃威力について質問する。


「小さい街なら一瞬で吹き飛びますね。射線からして、被害がこちらに来るかも。ヴァンに花持たせつつ、確実に倒すなら」


 ハーネイトはヴァンが戦っている真意を見抜いた。あれも自身と同じ活躍をしたい。前からそう言っていたなと思いだし、ならばたまにはそういう熱いやつを裏方から支援する彼の得意とする魔導師のスタイルで戦うことを彼は決めた。

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