表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
55/209

第51話 魔法探偵の窮地

 

 ハーネイトたちはミカエルの案内のもと迷霧の森の中を走っていた。すでに時間帯は夕暮れ時を経て夜に入り、テコリトル星が霧と森を薄らと照らすも森の中はかなり暗く、以前よりも霧の濃度が上昇し見通しは最悪の状態であったが、それでも4人は障害物をやすやすとよけつつ森の中を進み続ける。


「このまま進めばあと一時間半くらいで着くと思うわ。ルーフェと教団のある街ベストラは近いから」


「わかった。引き続き案内を頼む」


「しかしこの程度の霧なら、ハーネイトは軽々と突破できそうなのに」


 自身に飛行魔法をかけて地面を軽やかに飛翔しつつ、率直な疑問を彼にぶつけるミカエル。実際ハーネイトの魔術師としてのレベルは非常に高く、魔法耐性もそれに応じて高いはずと感じていたが故の質問であった。


「この霧の中に入ると頭の中から声がしてね、それが不気味であまり近寄りたくなかった。それが理由だ。今も正直まずいかも」


「幻聴の類いかしら。確かにこの霧は、そういった現象も起きなくはないほど魔力が濃いわね」


「確かに濃いよね。魔力でお腹一杯になるわ」


「でも、違う気がする。ああ、はっきり分かった」


「さっきのって? 」


 ミカエルの質問に、うつむいたまま彼はこう答えた。


「城にいたとき、みんなが先に部屋に戻ったあとに、はっきりとその声が聞こえた。すごく怖い、冷たい声が」


「まさか、何かに取りつかれてる? 」


「それはないわ。まず外からハーネイトの体にとりつける悪霊はいないわよ。自らセルフ成仏するのがオチでしょう」


 霊感が非常に強いリリー曰く、うっかり取り付いてしまった悪霊がかわいそうなくらいに彼の退魔力は凶悪らしい。


「そうなると不思議よね。何が原因なのかしら」


「本当に困った話だ。おい、この先の方から人の声がしないか? 」


「確かに今したな。……我が眷属よ!どれどれ、触手たくさんな魔物が前方800付近にいる。それと女の子2人か、ん、もしや忍の里の奴らか? 」


 ヴァンは気を集中させ、周囲の微生物を利用し無数のセンサーを生み出す。それで叫び声が聞こえた周辺を微生物センサーに探らせる。


 すると魔物が人を襲っているのが遠くからでも手に取るように伯爵は状況を理解した。わずかな数の微生物で実行でき、世界のあらゆるところを監視できるこの能力は破格だが、本人曰く疲れるのであまりやりたくないという。


「仕方ない、ヴァンが見つけた人を助けにいくか。進路上にある以上避けられないし忍の者なら戦力のためにもな」


「確かに見過ごすってのは後味悪いわ。どちらにしろこの先にベストラはあるんだし、私もやるわ」


「さて、ご飯の時間だ。醸して喰らってやるぜ!ハーネイト、先に先行する」


「俺もだ、ブーストオン! 」


 2人はスピードを上げて森の中を激しく疾走する。魔力を、空気をまとい、さながら荒れ狂う風のごとく木々を駆け抜けるその姿は目の良い者でも視認することは非常に困難なほどであった。


「ちょ、待ちなさいよ! 」


「仕方ないわね。シルバーファング!2人を追いかけるわよ」


 ミカエルは試験管を服から取り出しふたを開ける。すると魔力の煙がミカエルの周囲を覆い、その煙が晴れると巨大な白銀の狼が現れた。前にハーネイトを捕まえた際にも呼び出した、彼女お気に入りの召喚獣である。


「ウォォォォォン! 」


「ファングに乗るわよ。さあ! 」


「あの時の大きな狼ね。分かったわ」


「乗ったわね?さあ飛ばすわよ!このまま突っ走ってシルバーファング! 」


「ガルルルル、ウォオオオン! 」


 2人はファングの背中に乗りしがみつく。すると白銀の狼は猛スピードで森の中を走り出す。銀色の風が森の中を吹き荒れるように、ハーネイトを追いかける。


 その頃、先に到着したハーネイトと伯爵が、叫び声のあったところに辿りつくと、二人の若い女性が伯爵の情報通り、触手が無数にある魔物に行く手を阻まれていた。


「大丈夫か! 」


「その声は、ハーネイト様! 」


「ハーネイト様! 」


そこにいた女の子2人は、忍専の学生である凜音と紅葉だった。彼女らは先日試験を受けており、中盤で2人に吹き飛ばされた忍たちである。彼らの顔を見て不安に満ちていた表情が消え、笑顔が戻る。


「お前ら藍之進のとこにいたやつらだな? 」


「はい!ヴァン様。先日はお世話になりました」


「ヴァルドラウン様、この目の前にいる気持ち悪い魔物、切ってもしつこいほどに再生するのです」


「おうおうそうかい、可愛い子ちゃんたち、後ろに下がってな」


「はい、分かりました! 」


 紅葉と凛音はヴァンの指示に従い魔物から遠ざかるようにジャンプし距離をとる。ハーネイトとともにいるこのヴァンという青年の力もまた、恐ろしいほどであり2人の少女は固唾を飲んで見ていたのであった。


「さて、こいつは別世界からきた魔物、オプタナスだな」


「キェェェェ、キシャャャャャ! 」


 オプタナスは奇声をあげながら触手をしなやかに振るいまくり、周りの木々をへし折ったり枝を吹き飛ばしつつ徐々に間合いを詰めてくる、


 この陸上タコと言えるオプタナスはこの星の生物ではなく、本物の魔獣といえる存在である。不定期にこの世界に流れ込み、生態系を荒らす害となる魔獣である。


 また触手は食用として美味しく栄養価も高く、平均的な大きさのオプタナス一体で標準的なサイズのたこ焼きが2000個近くできるほどの量を持つため中にはこの魔獣を捕獲してほしいという依頼も時々挙がるという。


 しかしこの触手が厄介で数が異常に多く、また粘着性のある粘液や胃酸などを胸と背中にある口から噴出するため捕獲するのにはかなり苦労する。


 つまり攻略法を知らなければ苦戦は必至であるなかなかの強敵でもあるが、魔獣狩りとして何度も戦っているハーネイトならば、いとも簡単に仕留めることができる。


「速やかに倒す。ついでに食材確保のクエストもこなすか」


 ハーネイトは高く飛び上がり、太い木の枝に飛び乗る。そして気配を断ち、オプタナスの背後から奇襲をかけ、その背中に刀を突き立て、急所を破壊しようとする。


 オプタナスは胴体の中にある心臓を一突きすればすぐに絶命するため、気づかれないうちに背後から奇襲を仕掛けるのが基本的な倒し方である。普段ならばこれで勝負がつくのだが、そのときハーネイトはまたも幻聴を聞いた。城の中で聞いたあの声である。


「力ヲ、力ヲ開ケ、認めロ、貴様の、内なる力を!我らが魂を! 」


 またも謎の声がハーネイトの心を侵食し、苦しむ。その声は今でははっきりと聞こえていた。


「ぐ、がっ!なっ……しまっ」


 オプタナスは、ハーネイトが苦しんでいる呻き声に反応し、すかさず背中から素早く数10本の触手を伸ばすと有無を言わさずハーネイトを捕らえ体内に引き込んだのであった


「嘘、だろ?おいハーネイト、返事しろ! 」


ヴァンの声が森の中に響くが、返ってくる反応がない。一時の静粛のあと、ヴァンはまた声を上げる。


「はは、嘘だろ?ハーネイト。早く出てこいよ、なあ! 」


「まさか、ハーネイト様が」


「食べ、られた? 」


その光景を目の当たりにした3人の間に緊張と動揺が広がる。そのわずか30秒後、ミカエルとリリーが伯爵に追いつく。


「女の子は無事ね、ねえヴァン。ハーネイトの姿が見えないのだけど」


「ハーネイトは、あの触手野郎に捕まった」


 平静さを取り繕えない様子を見せるヴァンの言葉に、2人は開いた口が塞がらなかった。


「はああああ?ヴァン、早く助けなさいよ!師匠が! 」


「そ、そんな。嘘よね。ねえ!ハーネイト!返事をして! 」


しかし、ミカエルの声も彼には全く届いていなかった。


「許さないわ。許さない!万象の炎、大いなる力、紅蓮の魔法、フラメティオン! 」


ミカエルは素早く魔法を詠唱する。そして手を突き出し、掌から複数の火炎弾を出して、オプタナスを燃やそうとする。それに対してオプタナスは体から液体を大量に噴出して、火炎魔法による体が燃えるのを防ぐ。


「魔女の間で伝わる魔法が、効かない……っ!なら、大魔法で蹴りをつけてあげるわよ、水面の波紋 凍輪の円環 天地繋ぎ凍てつく十架 銀氷の舞台が終刻告げる……! 」


 ミカエルは我を忘れ、次に氷系統の大魔法、氷架水結ひょうかすいけつを詠唱しようとする。しかしそれは2人のクノイチに止められた。


「待ってください!下手な攻撃はハーネイトさんにダメージが! 」


「それにあの触手魔、苦しんでいますよ。もしかすると」


「ええ、苦しんでいる、わ。しかも尋常じゃないくらいに。ハーネイト、早く出てきて!あんたがこのていどでやられるわけないでしょ、だからっ! 」


彼女らは、もだえ苦しみ粘液をまき散らしている魔物の様子をよく見ていた。なにかが起きている、得体のしれぬ邪悪な空気がそこら中に漂い始めていた。それだけははっきりと全員が理解していたのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ