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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第47話 ハーネイトの存在を知ったDG幹部たち


「さてと、今回全員に集まってもらったのはある男についての話だ」


 ハーネイトと彼の部下たちが活動している中、DGの方にも動きがあった。


 DGの最重要拠点である、5角形の白い建物内にある大会議室、そこには以前幹部たちが集まった時以上に多くの人間や異形の存在が集結しており何でも緊急に会議を開くということで、普段は顔を合わせない人たちも一挙に集っていたのであった。


「諸君、この男の姿を見たことはあるかね?」


 ゴールドマンが威圧するかのように集まった全員に話しかけながら、偵察機械兵が撮影したハーネイトの写真をプロジェクターで公開した。


「いいえ、見ておりません」


「ああ、この男でしたら見たことがあります」


 戦闘員や幹部たちがざわざわと話し出す。そしてゴールドマンがさらに話を続ける。


「そして貴様らもすでに知っておると思うが、執行官が一人、シャックスと上級幹部、ユミロとボールズ、戦闘員ボッグズとレコミグナイス含め14人が行方不明となっている」


「ゴールドマン様、戦闘員の件につきましてはこちらも報告が上がっています」


「そうか、彼らはどうしたのだ?」


「彼らは、あのデモライズカードを戦闘中に使用した後、自爆したそうです。肉片の一つも残っていなかったということです」


 下級幹部ハルードと言う白衣を纏った不思議なメガネをかけた男が、部下からまとめた報告書を読み上げた。その事実にゴールドマンは表情を変えて歯を食いしばっていた。


「何だと! あの機士国の連中に作らせた霊界人識別及び強化用のアイテムでそうなっただと。彼らからそのような説明は聞かされておらぬがどういうことだ」


「もしかすると彼らも私たちを罠にはめようとしているのではないでしょうか」


「ほう、なぜそのように考えるのだ徴収官、ミルミガ」


 彼の発言に非常に大柄で肌が浅黒く白いコートを着ているミルミガが説明を述べる。


「まず一つ目にこちら側に引き入れた研究者集団のうち、魔獣研究部においてどうも不穏な動きを見せる人物が数名いるとの報告が上がっています。そしてその中に、このデモライズカードを製作したハイディーンと言う男の名前があります」


「ほう、それは面白い話だ。それで他には?」


 ゴールドマンは不敵な笑みを浮かべながらミルミガの話をじっくり聞く。


「はい、2つ目はその効果についてです。確かに変身後の霊量子検査では著しい上昇が見られましたが、その上昇量があまりにもおかしいと言いますか、並大抵の霊界人では即座に死に至るようなものでありました。それにより霊量子の許容量に肉体が耐え切れず、爆散したのではないかと考えております」


「ほほう、それはいつ調べたのだ?」


「つい最近の話です。しかし彼らから渡された試験結果とこちらの測定結果では大きな幅がありました。これらのことからもこちらを騙している可能性があると考えました」


 ミルミガの話を聞き終わったゴールドマンは少し黙り込んだ後、彼の意見に同感しながら個人的な感想を述べる。


「そうかもしれんのう、よもやそうしてわれらを陥れようとするとはこの星の連中は命が惜しくないのかね? 全てを奪い尽くし我らの者としてくれる」


「しかし、人間たちの結束も他星の人間より非常に高いです。何より、それが1人の男によりもたらされている」


 今度は部屋の奥にいた藤色の短髪で体の所々を鎧で覆った少女がゴールドマンの話に乗る形で話を切り出した。彼女はリリエットといい、かつて共に戦った友達の霊を借りて戦闘を行う、一見寡黙で儚げな雰囲気を見せる少女剣士であった。


「それが、例のこの男と言うわけだろう? おい、この中で何か知っていることがあれば話せ」


「か、彼はユミロと戦った記録がこちら側のデータに残っております。それと各地でこの男、ハーネイトと呼ぶ男が有名でして。彼の存在が私たちの崇高な作戦を邪魔している可能性があります」


「それは、忌々しき事態だなパラディウムよ」


 ゴールドマンの問いかけにボガーノードが慌てて椅子から立ち上がり彼の方を向いて早口で説明を行った。


「そうですな。しかしこれは我らにとっても好機であります。霊宝玉には、1人の強者の魂が必要です。幾億の魂は集めても、もう1つの材料がない以上、その男は使えるかもしれませんなあ」


「流石だな、確かにそういう考えもある。しかし用心しろ。可能性として話すがそのハーネイトと言う男はこちらの幹部と戦い幹部たちを戦闘不能、あるいは味方につけている可能性もあるという。あくまでそのような話が報告として挙がってきておるということだ。くれぐれも用心するのだな」


「はい、ゴールドマン様」


「了解しました。引き続き捜索と調査の方に当たります」


 そうして会議は終わり、各員はまた各地に飛んでいき侵略活動と遺跡の調査に向かっていた。そんな中1人の男が部屋から出ずに虚ろな表情を浮かべていた。


「シャックス、お前はどこに行ったのだ。俺の友よ。そしてユミロ、誰よりも優しくて気高い男。ああ、探しに行けるのならば探したい。しかし……。ハーネイトか、どんな男か改めて気になる。フューゲルが遭遇した手ごわい男、それがもしそいつならば覚悟しねえとな」


 いつもと違った正装で会議に参加したボガーノードは、執行官であり旧来の友人であるシャックスの行方を心配していた。それから何度か話したことのある、同じ志を持つ巨人ユミロのことも気にしていたのであった。


「探そうにも、上司は研究員の監視の命を受けているから動けないな。下級幹部はつらいな。力を出し惜しみしなければよかったなと思うのは、こういう時だ」


 彼は暗い表情のまま部屋の天井をしばらく見続けていた。そしてもう1人の少女、リリエットも外を窓越しに眺めながら憂いていた。


「どうすれば、父さんを止めることができるのかしら。あの事件以降父さんは人が変わってしまった。元に戻ればだれも傷つく必要なんてなくて済むのに」


 彼女は昔と今の父を比べ、変わってしまったなと嘆き、どうすれば元に戻せるのか終始悩んでいた。


「……それとハーネイト。元気にしていたのね。あれからもう何年たつのかしら。立派にやっているみたいだけれど……そうだ、会いに行けばもしかして! 覚えていてくれているといいのだけど」


 そう彼女は考えると、部屋を勢いよく飛び出し、建物の外に出るな否や駆けだしたのであった。


 万に一つの可能性をかけるなら、幼馴染というか修行仲間でもあったハーネイトがカギを握るかもと彼女は確信し、早く彼に会おうと行動を移していた。



 それを目で追っていた、桃色の髪をたなびかせた赤いレオタードドレスを纏ういかにも貴族の令嬢じみた風格を漂わせる若い女性は、ハーネイトの写真を再度確認しつつ少し悲しげな表情を見せ、もしかすると探していた存在なのではないかと考え部屋を後にし、彼について調べることにしたのであった。


「あの日からもう何年たつのかしら、希望の神子の話を妹から聞いて、それであの事件……無事に成長できたみたいだけど、そろそろ仕掛けるときかしらね。ドラギスが生み出した後継者、それを導き守る。私はそのために今まで生きてきたのだから」


 この女性こそ、ハーネイト本人が知らない秘密を知っているカギとなる存在であり、のちに伝説をいくつも作り出す人ならざる人、魔人の1人でもある。



 一方で場所は少し変わり、DGの幹部がいる施設の中央にある吹き抜けの空間には異様な建造物が立っていた。それは天を見上げなければ頂上が見えないほどに巨大であり、魔物の骨や川、死者の肉で構築されている魔城と呼べるものであった。


 その城は2つの塔と1つの中央塔があり、その中央塔の最上階に今回の事件を引き起こし、DGを陰から操る魔法使いがこれまた悪趣味な、無数の髑髏でできた椅子に座り、部下であるボロバーホという老いぼれた魔法使いの報告を聞いていた。


「ハーネイトという人物が我らの計画を邪魔しています。セファス様、どうなされますか?」


「面白いではないか。我らが駒の何人かがその者の配下に下っておるのだろう。ちょうどいい。霊宝玉の完成には、強者の魂が必要だ。フハハハ、手間が省けたじゃないか」


 不気味な椅子に座った、黒いフードの女が不気味な声で笑いながらボロバーホに話しかけ、命令を下した。


 彼女の名はセファスオスキュラスという黒魔導士である。悠久の時を生きる古代人の魔法使いでもあり、死霊魔術と精神系の魔術において右に出る者のいない、非常に厄介な存在である。


 彼女もこの星の出身であり、また高い霊的能力者でもある。そして現在DGを裏から操っているといわれている。


「手下に加えるか、強引に捕らえるか。ああ、それと裏切り者の討伐に向かわせている二人の幹部を利用し、メッセージでも伝えようかねハッハッハ」


「そうです、か。承知いたしました。セファス様」


 そういい、ボロバーホは手にした杖を支えにし歩きながら部屋を退出した。


「ハーネイト……うっ、どこかで聞いたことのある……言葉だ」


 彼女の盛大な笑い声が城の外まで響き渡っていた。しかし強力な隠蔽結界によりそれが外に漏れ出ることはなかった。そのあと彼女は何かを思い出そうとして苦しんでいたのであった。


 その頃天神界の方でも動きが見られ、2人の男性が話をしていた。


「おお、オーダインがアクシミデロについに降り立ったぞ」


「慌てるなシルクハイン。勝負はこれからだ。下手に騒ぐと女神が目を覚ますかもしれん」


「す、すみませんお爺さん。転送に失敗し、よりによってDGの総司令部のある星に送ってしまったが、よくやってくれた」

 

 はるか遠くの地にいるオーダインから特殊な通信を用いてその報告を聞いたシルクハインたちは作戦も大詰めになってきたと感じ期待を寄せていた。


 女神の行いを冒涜し機嫌を損ねる連中を成敗すること。それが自身らの使命である。そうして彼らは元居た世界で研究した以上に努力と時間を重ね、究極の存在を作り上げたのである。


「ほっほっほ、しかし首尾よくDGの戦力を削ってくれたなオーダイン。後はハーネイトを探し出し、協力してDGの息の根を止めるだけだ」


「そうすれば、世界の滅亡は防げるんだ。他の世界も含めてな」


 彼らの切なる思いは通じ、見事勝利を収めるのか。女神のいる世界からシルクハインたちは息子たちを応援し祈ることしかできなかった。

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