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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第36話 藍之進からの依頼と古代人の秘めた力?


「どういうことですか?」


 ハーネイトはいきなり表情を変えてきた藍之進に驚くも、まずは冷静に何があったのか理由を尋ねる。


「今から約3か月ほど前だが、機士国へ諜報を行っていた忍たちが惨殺されたのだ。生き残った者の話によれば、同じ忍者にやられたという」


 そう言いながら藍之進の表情が曇っていくのが彼の瞳に写る。

 

 自らの教え子が、同じ忍者の手にかかり無残な死を遂げたことについて藍之進は怒りと悲しみを隠せずにいた。


 彼は未来ある若者に、やさしく、時に厳しく指導をしてきた。そして愛情をかけて若者たちを導いてきた。いわば学生らも、藍之進にとっては家族のようなものであり、それを失う辛さは、彼にとって心の中に空白ができるほどでありハーネイトもそれを感じ、しばらく聞くことに徹する。


「同士討ちか。それとも裏切り?」


「詳細は分からぬが、生き残った忍たちが持ち帰ったその者の武器や特徴から、零と呼ばれるこの里出身の忍が手にかけたというのは断定できた」


 零と言う忍、その忍も藍之進がここに学校を建ててすぐに入った第2期生であり、尋常ではない能力の高さから、裏世界では一種の伝説と化しているほどの存在である。それほどの忍がなぜそのような凶行に走るのか、ハーネイトも考えていた。


「もしかして、敵の支配下?」


「可能性はゼロとは言えないだろうな。やられたのは事実だ。証言から、彼の体の一部が変異し、別の生物のようになっていたとな。……しかもこの里の出身がそのようなことをすれば信用に関わる。もしその零を見つけたら、捕獲するか討伐してほしい。もしあの血の怪物絡みだとしたら、尚のことお主とその仲間にしか任せられん」


「紅儡を生み出す存在、血の魔人ですか、それならそうですね。調査したうえでそれが絡むなら、私が何としてでも」


「ああ、それについて全部そちらに任せる。かつて血の災厄を防ぎ多くの命を繋いだお主の力が絶対に必要だ。ああ、それと受けてくれるならば必要な物があればできるだけ手配しよう」


 更に藍之進が説明する。今回の依頼はそれだけでなく1つは、少しでも多くの若い奴等に経験を積ませたい。この霧の森という世界の外に出て、見聞を広めて欲しいということであった。


 今までのやり方では忍は衰退すると考え、そこで新しい風をこの霧で覆われた里に吹かせることにより、今までの概念を打ち払いたいということ。


 2つ目は、敵に寝返った裏切り者は、自らの手で討たなければならないからということであった。


 それを全て聞いたハーネイトは、何か違和感を覚えたため、何かほかに隠していないか彼に改めて尋ねた。


「しかし、真の目的は逸れにあらず、のような感じもしますがね。2番の理由は里の事情だから置いといても1番のは理由としてはどうでしょうか。各地で情報活動しているものもいるはず、何が狙いかきっちり説明して頂けますか藍之進様」


「確かに、そうですな。南雲はともかく、風魔などは森の外での活動もしとるからの、世界を少しは見とるだろう」


「では、なぜこのような話を私に?」


 幾ら話を聞いても、本質が分からずやきもきするハーネイト。そしてようやく彼らの本音が聞こえてきた。


「いや、お主らの活動に興味があるのだ。他にも数名、里の外で活動しているうちの学生がおるがハーネイト殿が何かをしているということはこちらも把握している。基本的に一匹狼であるお主がなぜ各地で人を集めているか、そしてわしらにも声をかけようとしていたことをな」


「ふう、そういうことですか。仕方ないですね。貴方たちの力、想定以上にすごいですね」


 ハーネイトは、数時間に渡り、クーデターの話やDGに関する話を藍之進に話した。その内容を聞いた彼は時折口ひげを触りながら考えつつ、真剣なまなざしでハーネイトを見ていた。


 この男が、機士国にかつて仕え、幾つも偉業を成し遂げた伝説の男かと。そしてその話は本当だったのだなと納得したのであった。


「ふうむ、私たちが手に入れた情報よりも深刻だな。奴等を野放しにはできん。1月前に、偵察に出した者から聞いた話よりも悪化している。20年前にも、我らが里の人間はDGと戦った。また、あの悲劇が起きるのかと思うと、心苦しい。それと零についてだがDGと何らかの関わりがあるようなのだ。だからこそ、先ほどの話を切り出したのだ」


 藍之進は、ハーネイトから聞いた話を含め改めて現状が如何に危険な状態か、口ひげを触りながら確認していた。また、先述した零の件について、彼に何かしたのがDGではないのかと藍之進は推測していた。


「そこまでいいますか。私としても、少しでも強い仲間を集めて敵をこの星から追い出したいのです。そうですか……おそらく任務中にDGと戦い、拘束され何かをされたかもしれないですね。もしDGが、あの時のように血の魔人と何か契約でもしていたら」


「その線が濃いようじゃな。それとデモライズカードという危ないカードと関連があるというのだな?」


「はい。今までに何回か魔物に変身したものと戦いました。機士国のある研究者の仕業です。その件も含め、私は王から勅命を受けております」


 彼は改めて、機士国王が命じた作戦について話し、少しでも戦力を集めているという意思表示をする。それについて、藍之進はわずかに笑いながらこう言った。


「ならば、益々うちの忍者を雇った方がよいな。いや、言い方があれだ。その戦いに儂らも参加させてほしいのだ。お主もその腹積もりだっただろう。だったら互いに益のあることだ。それにまたあの惨劇が起きるかもしれない、そうなるとあの怪物に対抗できるよう我が生徒たちに戦闘経験を積ませたい」


 ハーネイトは藍之進の顔をじっと見ながら話を続ける。一見笑っているようにも見えたが、その内に秘める意思は確かなものであった。


「それに零の件もあるし、忍の活躍が広まれば以前のように仕事が来るかもしれん。名を挙げれば今までの忍に対するイメージが変わると、今のわしはそう思っておる。そなたが新たな風を吹かせた、魔法革命を幾度も成し遂げた魔法使いのようにな」


 藍之進がこのようなことをいうのは、過去にハーネイトがいくつも起こした魔法革命についての話に例えて、同じように忍の世界にもそのような新しい風を取り入れたいという主張である。


 魔法革命とは、ハーネイトが旅を始めて2年と少しを過ぎたころに起きた現象である。


 当時自身の出生や異形の力などについて情報を集めていた彼は、旅の道中で魔法を用いて、街や人同士の問題を解決したり、魔粒子で動く機械を考案し、その効率の良さや機能性の良さについて本にまとめたりと、魔法を今までよりも日常的に取り入れて利用しようとしていた。


 昔から、魔法使いはいいイメージがつかず、陰険で何を考えているかわからない、いわゆる変人で危険な人材が集まる集団としかこの世界では認識されなかった。その概念や風習を彼はぶち壊したのであった。


 だがその中には、魔法の神秘がなくなるといい問題視する人も高齢の魔法使いを中心に少なくなかった。しかし時間とともに魔法に興味を持った人が弟子入りしたり、独自に研究を始めたりと魔法に関する研究はわずか数年で100年以上は先に進んだと評価する者も多かった。


 そういう流れの中で、今まで日の目が当たらなかった魔法使いたちも、周りの人から感謝をされ考え方を徐々に変えていったとされる。今ではこの一連の流れはハーネイトの偉大な功績の1つに挙げられている。


 それと魔法に関する功績としては他に、ハーネイトは大魔法について、7行あった詠唱文を効果を増幅させつつ3行まで圧縮することに成功しており、さらに属性を融合させた大魔法も構築したというものもある。


「そのこともよくご存じですね。そうですか……藍之進さんの言いたいことも分かります、が、肝心の学生たちはみんな、そのことに納得しているのですか? 戦いに参加することに」


 この男の言いたいことをようやく理解した。しかし下の者がそれに心から従うのかどうか、彼は気になっていた。


 乗り気ではない人に、無理やり強制させれば事故やミスの元になるからである。解決屋の仕事は時に命がけな以上、彼は改めて確認をしておきたかった。しかしその質問に、藍之進は屈託のないほどの笑顔で大笑いした。


「はっはっは! それは問題ない。むしろハーネイト殿を慕うものが多すぎてこちらも困っているほどだ。お主のことばかり言ってうるさいくらいだ。心配など杞憂だぞハーネイト殿、うちの忍たちとド派手にあのDGと戦ってくれ。そして、零の仇を取ってほしいのだ。血徒再葬機関の代表であるハーネイト殿にな」


「そ、そうですか、はあ」


 その言葉に、どういう意味かと尋ねるハーネイト。ややあっけらかんとしている彼を見ながら、表情を正してから藍之進は口に茶を含み飲んでから落ち着いて話した。


「その通りの言葉だ、お主の活躍が学生の間でも話の種に尽きない程みたいでな。全員、ついていく以上覚悟は決めているだろう。実際に、彼らにも確認をすればよい。そして、思うように生きて周りを従えていけ。ハーネイト殿」


「そうきます、か。確かにそれもそうですね。確かに使い魔とは違った諜報活動にも、暗殺や妨害にもあなた方の学生さんたちは活躍の機会はこれからあるでしょう。そして、学生たちの功績が世に広まれば、いい結果もついてくることでしょう」


 彼も、自身が現在作戦立案を進めており、自身の脚や目による調査がしづらいという現状を理解しており、手足の代わりとなる人材を手に入れるために、危険な霧の森に足をわざと運んだのであった。


また、機士国側のエージェントだけではこの広大な星における情報収集は難しいのではないかと彼は考えていた。そして向こうも自身の力を借りたいと申し出た。まさに渡りに船、彼は快諾してからゆったりとソファーから立ち上がる。


「まずは何人か選抜してみますか」


 ハーネイトはそれから財布を取りだし、中から大金を出して藍之進に渡す。協力関係を結んだ以上、資金を用いて装備や人材の育成に力を入れてほしいというメッセージも込めたものである。


「頭金だが、これでどうだ。一応こちらが雇った扱いにはなるだろう」


「ああ。この金は一旦預かる。しかしこの資金で、ハーネイトとその仲間たちを支援しよう。うちの生徒を、未来の忍たちを、どうか頼む」


 藍之進は席から立ち上がり、一礼をする。予想以上に器の大きい男であることを実感し、彼ならばきっと成し遂げるだろうと確信していた。


「わかり、ました。では明日、採用試験をして連れていく忍を決めます。必要に応じこちらから追加の忍の派遣をお願いします。諜報任務に関しては人海戦術が一番良いですし、全員に準備はしておくようにと伝えておいてください」


「分かった。できるだけ望むようにしよう。この問題は、もはや星全体の人間が力を合わせて解決せねばならない案件になりましたな」


 彼らは、多くの人が協力しなければ、この脅威を退けることは難しいということについて共通認識を改めて確認する。


「だからこそ、奴等の脅威を伝え、戦う同士を増やす遊撃隊を今回設立したのです」


「それも1つの手だな。ああ。先ほどの件は全面的に任せる。それと今日はゆっくりしていくとよい」


「出来れば早く仲間のもとに戻りたいですが……」


「それは分かるが、良かったら忍たちにハーネイト殿の話をしてもらいたい。試験が終わり次第、此処を発つのだろう?」


「確かにそうですが」


「それと、この森とその周辺を包み込む霧についてだが、ある生物が産み出しているのはご存じかな? 」


 藍之進の言った言葉に、反応する。霧を吐く者、あの霧の森を作った要因がいるということは初めて聞いたため、関心を寄せる。


「霧を吐く生物、馴染みがないですね」


「そなたでも分からないことがあるか」


「博識とはよく言われますが、この霧の森以南のことだけはこちらも調査ができず知っていることはわずかです。最近も敵の幹部の1人をこちらに引き込みましたが、私にはある力が宿っているとか。それにあの羽の生えた悪魔に至っては私に真の力に目覚めろと言ってきまして、何だかもう、ね」


「なら仕方ないか、この霧はとある龍が出しているものらしい。そしてこの一帯には他にも人が暮らしているところがある。余裕があればあって調べるのもいいかもしれん。その者たちも龍も、色々物知りと言うし何か悩みの解決策が見つかるかもしれない」


 藍之進は龍についてしばらく話をつづけた。その龍についての情報の中に彼は気になった言葉があった。その龍の具合がよくないという言葉と、それが理由で霧ではなく瘴気を生み出しているのではないかと言う藍之進の推測であった。これについても別に並行して調査すべきかと彼は考えていた。


「そうですか、わかりました。しかし龍か……。先ほども述べたとおり、DGに羽の生えた黒い悪魔がいたのですが、それも私に対し龍の力がどうのこうのと。その霧を生み出す龍とは関係あるのでしょうか」


「そうか、先ほど言った、その古代人に埋め込まれている力も、どうも龍の力だと言う伝承がある。いっその事ついでに確かめに行った方がいいだろうな。今まで、内なる力の正体が分からず悩み続けていたのだろう? 分かれば、その力でより多くを救えるはずだ。それと関係があるかどうかだが、恐らくあるだろうな」


 ハーネイトの質問に対し、藍之進は自分たちも古代人の血を引く者でありそれに関する資料を持っていると言う。その中には、古代人はある実験のために生み出され、特殊な力を埋め込まれて成長し、その力を利用していたと言う文献があることを話す。


 それから、その文献を探し渡す代わりに、忍者たちの面倒を頼むと改めて言い、2人は約束を交わした。


「そう、ですね。では仲間のところに戻ります。明日の日が上る頃に実技試験を行います。戦力として、対大勢に向いた人材を今回は募集しますので藍之進さんは広報の方をお願いします。諜報用の忍者は別に試験をしますがね。あと場所はどこにしましょうか」


「わかった、場所は用意しよう。この学校の運動場でなら戦っても問題はない。後で忍らにこちらから伝える。風魔。部屋に案内してあげなさい」


「はい、藍之進様」


 ハーネイトは一礼して部屋を出たあと風魔の案内で伯爵らのいる客室に戻ったのであった。

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