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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第23話 城内への案内と休暇から帰るメイドたち


 ハーネイトらはとっさに身構えるが、彼の姿がはっきりわかる距離まで来ると彼は静かに刀を鞘に納めた。


「ご無事ですか!夜乃一王!賊に襲撃されたと聞いて駆けつけようとしましたが、無事だったようで何よりです」


男は王の前に来ると、息を切らしながら体を曲げて呼吸を整えようとする。


  彼は、八紋堀影宗という軍人である。いわば日乃国に仕える侍であり、王様の腹心でもある有名な家の出の男である。特殊な剣術「文斬流」の使い手であり、かつてハーネイトと王の前で試合にて勝負した際にも、ハーネイトとほぼ互角の力で名勝負を繰り広げ賑わせたという。


 そんな八紋堀は気さくさの中に厳格な風貌も垣間見えるが、中身は意外と緩いところがあり、また異常な味覚の持ち主である。


 それは夜之一からも注意されるほどであり、唐辛子を食品にかけて食べるという辛党である。


 また彼は秘密の畑を作り、そこで危険な激辛作物を生産しているという。ハーネイトも一度彼の家を訪れ畑に案内されたが、唐辛子を試食した瞬間口から火を吐くが如く悶絶し気絶したという。


 一応ハーネイトも激辛料理は好きで、八紋堀とは激辛友として各地で辛い料理を食べ研究する中だがそれでもその破壊力は常軌を逸していた。


「ああ、この通り無事であるぞ。しかし慌て過ぎだ、八紋堀」


「はあ、すみません…な、隣にいるのはハーネイト殿ではないか! おおお、久しいなあははは、それで、殿を助けてくれたのはまたもお主だな?」


 八紋堀はハーネイトに気付き、興奮して声を上げる。数年ぶりの再会に彼は嬉しさを隠せずにいた。


「うむ、ハーネイトと隣にいる彼らが私を助けてくれたのだ。危なかったところだった」


「誠に申し訳ありません、ハーネイト殿。またも殿を助けてくださるとは、頭が上がらないですな。おお、お主らも済まなかったな。名を何と申すか」


「リシェルと言います。ハーネイトさんのもとで修行しています」


「私はエレクトリールと申します。ハーネイトさんの旅に同行している者です」


「そうかそうか、リシェルとエレクトリールか。改めて感謝いたす。おかげで助かりましたぞ」


 八紋掘は深々と彼らに礼をして。王の左隣に並びながら歩きだした。


「はは、とにかくこの国の王様が無事で何よりっすよ。しかしこの様な事件はよくあるのですか?」


「実は過去に2回あった。以前も、たまたまこの国を訪れていたハーネイト殿に救われておるのだ」


 八紋掘はそうして、ハーネイトに関する武勇伝やお話をリシェルとエレクトリールに熱く語りだしたのであった。


「ハーネイトさんはやはりすごいですね」


「あれから親交が深くなって、たまに夜乃一王から依頼を引き受けたり、こちらも支援を受けたりしているんだ。しかし夜乃一王、先ほどあなたを襲った奴らは、同じく日乃国の出身のように見えたが、新たな勢力が現れたのですか?」


「ああ、そうなのだ。しかも、あれに関わることかもしれん」


 夜乃一は最近起きている事態を説明する。夜乃一は親交の深い機士国王の意見に賛同し軍縮を行おうとした矢先、反対派が手を組始めたという。


それは半年ほど前に起きたことであるという。そして、その集団は一つの組織を作り、八頭ノ葉と名乗るようになったという。


「八頭ノ葉と名乗ったやつらは、代々この国の防衛に関わってきた武人が中心となって組織を作り上げているようだ。軍縮で利益が減るのを怖れたのだろう。謎の勢力と最近は手を組んでいるとかな」


「まさかその勢力もドグマ・ジェネレーションズとかじゃ、ないですよね? 八紋堀のおっさん」


「お主らも知っておるか。ハーネイトもあの侵略事件のことを、よく知らないかと思っておったがの」


「事務所を構えている街の老人たちから話は聞きました」


 リシェルの発言を聞き八紋堀の表情が変わる。機士国の異変が、ただの内乱ではないことはすでに把握済みであった。そして、約20年前に起きたDG来襲事件についても話をする。


「若い世代はともかく、わしらの世代になるとあの出来事は多くの者が今でも覚えている。血の怪物や血海事件と同じくな」


「そうなのですか。私の故郷が襲われたのは今回が初めてでした。しかしそれ以前から本当に、奴らは多くの星で暴虐の限りを尽くしてきたのですね」


「そういうことであるな、エレクトリールよ。あの戦いは、局所的とはいえ多数の死傷者を出した。あんなことが二度とあってはならん、ハーネイト」


「そうですね。幾つもの星を滅ぼしている以上、その危険度は言葉では言い表せないですね。八紋堀さん」


「恐ろしい奴らだ。速やかに退去してほしいと願うばかりだ。さてと、もう城につく。話の続きは後でだ。入ったら案内の者に従い動いてくれ。旅の疲れをとるとよい」


 一行は巨大な城の門を通り、坂道が続く城内へ入っていった。ハーネイトにとって、数年ぶりに城に足を運んだが、相変わらずきれいに整備されているなと彼は感心していた。


 そうして彼らが城に入ったころ、日之国から200km以上離れた、DGの拠点の一つではボルナレロが、もう1人の白衣の男と口論になっていた。


「だから、人間を魔獣化させなくとも、この私の技術で魔物を操れば計画に支障はないだろう。貴様のやることは危険すぎる。現に戦闘員が力に耐えきれず爆死したではないか。兵器に必要な要素の一つ、安定性がないだろう」


「構わん、力のない奴はそうして死ぬ、生き残れば奴らの言う超人的な存在になれる。いいじゃないか。それならば、貴様のやることも危ないのではないのか?人が魔獣になれば、それに対抗することはできる。姿が変われば、脅威を打ち倒せる」


 2人は拠点内にある会議室で話をしていた。もう1人の男の発言に、ボルナレロは言葉を重ねる。その男の名はハイディーンと言い、彼も昔機士国で魔獣に関する研究をしていた中年の研究者であった。


「しかし、それで戻らなくなった場合はどうするのだ?」


「いや、戻る。何せ私自身の体で試したからな」


「なんて奴だ。昔からハイディーンは強引すぎる。それとたまたま素質があっただけだろうが」


「お前に俺の何がわかるか。少なくともあの男にかわいがられていただろうに。なぜ私の研究は認められないのだ」


「それはあいつがハイディーンの実験が危険であると認識していたからだろう」


「ふざけるなふざけるな! 誰も俺の功績を認めない。俺を妬んでいるんだ!」

 

 2人は意味深な発言をしながら口論を繰り返す。そしてハイディーンはイラつくように部屋を後にした。


「ふん、とにかく、貴様の蛮行は私が阻止する。ハーネイトの代わりにな。私にもできることがある。そうだろう、魔導科学の第1人者、ハーネイトよ」


 ボルナレロはハイディーンの背中を見ながらそう考えていた。実際そのハイディーンの研究は一歩間違えれば凶悪な兵器を生み出すことに、いやそれ以上に恐ろしい結末が待ち受けるだろう。


 ボルナレロの魔獣操作もその点では五十歩百歩だが、少なくとも平和的に、各地で起きる魔獣被害を抑制しながら互いに共存できるようにと考えたボルナレロと違い、魔獣を兵器に利用しようとしあまつさえ人の体を魔獣化させるなどハイディーンはどう研究者の中でも異端であった。


 しかしそれは、ハーネイトに認められたいがために研究を行った結果であった。


 それとこの技術に関してDGは多大な支援を行ってきた。それは、彼らの中にいる霊界人、正確にいればある能力を宿している人とそうでない人を選別するためのアイテムになるというおぞましいものであった。


 その頃ハーネイトたちは、日之国を象徴する「天日城てんにちじょう」の中に入ろうとしていた。


「これが、異世界から来た人たちが作り上げたお城か」


「立派な建物ですね。このような、立派な建物を実際に目で見られるとは」


 リシェルとエレクトリールは辺りを確認しながら足を進めていた。彼らにとっては初めてで新鮮な場所であるため、一歩ずつ足を進めては、周りを見渡していた。


「案内の者が場内の入り口で待っている。後はその者の指示に従ってくれ」


「了解しました。しかし、すごいな」


「こう改めてみると圧巻ですよね」


「私も初めて訪れた時は言葉が出なかった。さあ、案内してもらおうではないか」


 そうして、一行は日之国の城、天日城をしばらく見上げていた。ここまで大きなつくりの建造物は今では数えるほどしかない。その技術の高さにリシェルとエレクトリールは見とれていたのであった。



 そんな中、ハーネイトが日之国に向かう前に時間がさかのぼる。ハーネイトの召使3人は休暇から急いで帰宅する最中であった。ミロクの話を聞いた2人は急いで帰宅する準備を済ませ、街道を走っていた。


「ハーネイト様から来た連絡は緊急性が高い。だからこそ回りくどいような方法で連絡してきた。通信が傍受されるとまずいのかもしれんからのう」


「手紙の内容からして、早く戻って来いということですね。確かに最近の情勢は違和感のある物ばかりでしたからね」


「ええ、急ぎましょう。既に主は救出に向かわれているだろう」


 1人は老齢だが凄まじい闘気を常に体から放出している、執事服を着た男、もう1人はメイド服でなく普段着で、なおかつ品のある服を着こなす青銀色の髪の女性、そしてもう1人は、見るものを絶句させる格好をしていたユミロとさほど変わらない体格の男であった。


 彼らはハーネイトが書いてワニム・フニムに持たせた手紙を受け取り内容を確認するとすぐに休暇、もとい魔獣狩りを切り上げて事務所の方へ足を運んでいた。


「急がなければ」


「あともう少しですわ。救出に成功しているとよいのですが」


「主殿ならきっとやり遂げますよ。うおおお!」


 3人はそう話しながら、街道を猛スピードで走っていた。彼らの走るスピードは尋常ではなく、少なくとも時速80km程度は出ていた。


 そんな彼らには共通して体にある秘密があるという。また3人とも、それぞれが凶悪な戦闘能力を持っており主人であるハーネイトも内心恐れている。


 それと1人で1国を落とせると評価される彼の部下たちは、その性格もまたぶっ飛んでいるものが多かった。それゆえ、ハーネイトは実質的な監視の意味も含め手元に置いている状態である。


 老齢の男ミロクはともかく、他の2人は問題があるためハーネイトは休暇を取る際に先に彼らに休暇を取らせたのである。そうでないと彼はまともに落ち着くことができなかったからである。


 そうして3人がリンドブルグまで駆けつけると、事務所の方に急いで向かったのであった。彼の後を追うため、最凶の三鬼士が再び目覚めようとしていた。



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