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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第17話 GISと魔獣の研究者・ボルナレロとの再会

 フラフムの宿で休息をとっていたハーネイト、そこに訪れたのは、かつて機士国で知り合った研究者、ボルナレロであった。


「待てボルナレロ!おいっ! 」


ハーネイトは逃げるボルナレロを追うため魔法で瞬間移動し、慌てていたボルナレロの前に素早く立ちはだかり、彼もそれに驚き足を止めざるを得なかった。


「なっ……!魔法転移か」


「――ボルナレロ、久しぶりだね。少しやつれた? 」


「……あ、ああ。ってそれはこちらのセリフだ。表情を取り繕っても疲れが出ているじゃないか、お前こそな」


 彼は以前のいつも悪態をつくほどに元気なボルナレロを覚えていた。しかし今の姿にその面影はなかった。そしてとても気まずそうに彼の視線から目をそらしていたのであった


「やはりボルナレロには見抜かれるか」


「ふっ、少し顔に出やすいところがあるからなハーネイトはさ」


「やれやれ。しかし、あれからずっと連絡が取れなかった。心配したんだぞ、ったく」


「済まなかった。あれからいろいろあってな、ハーネイト。面倒なことに巻き込まれてしまった」


「どうした? 何かあったのか?きちんと教えてくれ」


 ハーネイトは敢えてユミロから聞いた話を切り出さずにどうしたかと尋ねる。その言葉に彼は動揺していた。


「俺は、ハーネイトに会わせる顔がなかった。だから」


「それはなぜだ、らしくないぞボルナレロ?いつも元気に研究に励んでいた君に何があったんだ」


「ハーネイト、実は私が行っていた研究が敵に利用されているのだ。それに気づくまで、結構な時間を要してしまってな」


 ボルナレロはあの出来事があってからのことに関して1人で悩んでいたのである。何も知らずに上司の話に乗ってしまい、結果的にかつて侵略戦争を引き起こした連中の手助けをしてしまったことに関してであった。


「そっか。うん。そういうときもあるよね……。ねえ、ユミロのことは知っている? 」


「あ、ああ。仲間に引き入れたのは監視装置越しにみたよ。昔から用兵術の奇抜さは変わらないようだな」


「いつの間にかああなるんだよね。まあいいけど」


「はは、そうだな。なあハーネイト、話をしたいんだ。近くのベンチに座って話を聞いてくれるか? 」


「ああ、いいよ。こちらもある頼みがある。……それとなんか眠れなくて」


 こうして2人は街の端にある小さな広場でベンチに座り話をした。ボルナレロは深く息を吸い、すぅーっと吐いた後どこか悲しげな瞳でハーネイトを見つめ、機士国を出てから起きたことを一部始終話したのであった。


「ああ、それは大変だったな、本当に、何もかも滅茶苦茶だ。もう、そういう時こそ早く連絡すればよかったのでは」


「確かにそうだったな。いきなり計画や組織の凍結とかふざけた話にもほどがある。本当にハーネイトが王様になってくれれば私らも安泰なのだがな。あの時研究の重要性を分かってくれたのは、ジュラルミンとハーネイトぐらいだったよ」


 ボルナレロはそう言いながら、ハーネイトに特製のエナジードリンクの缶を渡した。それをハーネイトは少しずつ口に含み味わっていた。


 機士国に身を置いていた時によく飲んでいたドリンク、その味を感じ、缶を見つめていたハーネイトは昔話をしばらくの間ボルナレロと交わしていた。


「すまないな、ん。まだまだあの国王さん若いですから、これからですよ。それと機士国王、ある魔法使いに操られていました。魔力反応の証拠が出ていましてね。これがそのレポート。見てみて欲しい」


「どういうことだ。どれどれ、確かにこれはそうだな。だとすると今までのことはすべてその外道の掌の上で踊らされていたのかよ。やはりあの女は魔女だったのか。くそったれ、畜生。不甲斐ないな、私は」


 彼はハーネイトから渡された報告書を見ると、歯を食いしばりながら表情を暗くした。それに対しハーネイトはフォローの言葉をかけた。


「仕方ない、敵は恐らく精神操作及び呪術系特化の魔法使い。私の術式を解除できるほどの魔法使い。ボルナレロ、己を攻めてはいけないよ。むしろ私のミスだ……」


「ふうむ、しかし起きてしまったことは仕方ない。魔法犯罪を取り締まるお前ですら厄介な相手、なんだろう?魔女には嫌な思い出もある、って言っていたよな。しかし、となると対応をどうするかだ。逆に、今の私の立ち位置はおいしいかもしれない」


「分かっているよ。こっそり全データ回収する腹積もりで? 」


「ご名答、流石だ。かつてこの星を攻めに来たやつらの力がどれほどか、私も調べたい。それをハーネイトたちに渡そう。事情を知った今、国王に罪はない。悪いのはすべて、洗脳をかけたあの黒づくめの女だ。……それと私は自由行動の許可証持ちだ。この程度大したことはない」


「フフ、ボルナレロらしいな。しかし、困っているとわかっていたら無理してでも研究場所くらい用意できたものだ。資金もあるしな」


ボルナレロはハーネイトの言葉を聞いて本当かと疑う。以前から彼が資産家であることは知っていたが、そこまで研究者のことを考えているとは思っていなかったからであった。


「それは本気なのか? 」


「本気だよ。でないとこんな話切り出さない。地図を活用して仕事の効率性をあげてみたり魔法と連動させてみたりしたいんだ。DGを倒すために、ボルナレロ。貴方の力がどうしても必要なのだ」


ハーネイトのその言葉に、偽りはないと感じボルナレロは更に質問する。そして彼が考えた対DG用の作戦内容を聞くと、フフっとボルナレロは笑い快諾したのであった。


「そう、だな。しかしハーネイトは不思議なやつだ。なあ、前にいった地理情報のARGISというシステムは、あんたならどのくらい評価するか?いくら出してくれるか? 」


「あのシステムか、素晴らしいものだ。軽く今の総資産の約半分、まあ2兆9250億マルクぐらい払ってもよいくらいだよ」


「そ、そんなにか。というかどれだけ資産を持っているのだ。軽く国の1つくらい作れるぞ。てかそれで半分とか、頭がくらくらしそうだ。一個人が持つ資産にしては多すぎだろ! 」


「まあ、そうだよね。仕事して、投資や出資して、お金が減るどころか増える」


ボルナレロはハーネイトの資産、資金のあり方を恐れ眼を丸くした。そして桁違いの資産量を改めて聞いた彼は、この目の前にいる英雄が評価規格外の存在であることに改めて気づかされた。


 しかしそれについてボルナレロは、今までの実績や活動から考えありえなくはないと分析した。そして、自身の研究をこれほど評価してくれるハーネイトに対し彼はある提案をした。


「ハーネイト、改めて言うが今はやつらのことをもっと探って情報を集めたい。魔法使いのことと、他の部署で行われている研究についてだ。特に機械部と兵器部、そして魔獣研究部をね」


「そうか。確かに今のボルナレロにしかできないな。敵の懐に入って一切合財奪う。遠慮はいらないよジャド」


「久しぶりだな、その名前呼びは。それと他に強制されて研究を行っている研究者がまだいる。それについてもすぐに情報を送る。頃合いを見計らって、全員助けだしてほしい」


「ああ、それまでにこちらは戦力を再結集させる」


 ボルナレロはさらに、自身よりも劣悪な環境下で働かされている同業者がいることを告げ、見つけたら助けてほしいとハーネイトに伝える。


「頼んだ。機士国のエージェントたちも動いているというが、どうなるか」


「私たちも情報収集をさらに強化したいのだが協会の内通者と連絡が取れないし、BKも別件を抱えているようでな」


「ハーネイトはまず仲間を集めて、あの外道連中を早くぶっ飛ばして戦力をがたがたにしてくれ。魔法探偵と解決屋、そして魔剣士の名に懸けて、力を見せつけるんだ。それと、仲間たちの救出、頼んだ」


「分かった。お互い最善を尽くそう」


 ハーネイトの言葉を聞き、安心しながらボルナレロは夜空を上目遣いで見ていた。


「そうか。さすがだなハーネイトは。それと、試作品だがGISレーダーシステムと発信器だ。あいつら私が各地に置いている擬装した観測装置に気がついていない」


  ボルナレロはそういうと、ハーネイトにタッチパネル式のモニターと6本の発信器を渡した。以前共同で研究をしていた際に開発していたものであり、それを彼が大事に管理していたことをよく覚えていた。


「ああ、肝心なことを伝え忘れていた。転送石の調子が非常に悪い件と、今回の事件に関連がないか調べて欲しいのだ、ボルナレロ」


「だったら、今渡したそれが打開策になるかもしれん。微弱な魔粒子の乱れが原因かもしれないと私は考えている。この通信具なら魔磁気嵐の影響は最小限に抑えられる。通信は戦術を支える重要な要素だ、うまく使え」


「分かった、使いこなしてみせるよ」


 ハーネイトはようやく、本題である話を彼にした。すると魔粒子を用いた工学研究のプロである彼はある仮説を立てていた。


 それを聞いたハーネイトは、敵がこの星生まれの魔法使いならば魔粒子の反応を各地で収集すれば彼らの居所がすぐにわかるかもしれないと提案する。


「確かに、大掛かりな装置、いや、演算装置があればこの星のどこかにあるやつらの拠点を炙り出せるな。その乱れを拾えればの話だが」


 ボルナレロもそれはありうると考え、その上で渡した装置も駆使してデータを集めてみればどうだという。さらに研究するための拠点を用意してくれるならすぐに膨大な観測結果を調べ上げることも余裕であると告げる。


「いいのか?大事なものだぞ」


「構わんよ。事が済んだら本格的に力を貸す。研究技術を一番高く評価してくれる人のために働きたい。それにお前の頼みなら、快く引き受ける。俺の力を信じてくれるからな。本当に、お前と出会えてよかった」


「ああ、私は高く評価している。早く共に研究したい。地図を使ったビジネスをな」


 ハーネイトはボルナレロについて本当に優秀な科学者と評価していた。やや口が悪いのとせっかちなところがあるものの、先進的な研究は彼にとってどれもが興味を惹き支援せずにはいられないほどの魅力に満ちていた。


 その中でも地図にリアルタイムで情報を更新し情報をまとめるARGISという地図運用システムは、彼の解決屋稼業にとって大きな助けになるだろうと考え、最も重要視していた。

 

 そして試作品とはいえシステムの一部を受け取ったことでハーネイトはまるで子供が欲しがっていたおもちゃを手に入れた時のような嬉しいそうな顔をしていた。その満面の笑みを見るのが、ボルナレロを含め多くの人が癒しでもあった。


 強大な脅威を容易く倒す戦士の面と、誰もが癒される優しい一面。そのギャップが彼の最大の武器なのかもしれない。ボルナレロはハーネイトをそう評価していた。


「そのためにも、ハーネイトに勝ってもらわないとな。決心はついたよ。ありがとう。必要だといってくれて、本当に嬉しかった。また会おう、かけがえのない友よ」


「気を付けてね、ボルナレロ。研究拠点の方はミスティルトの方で用意しておくから」


「ああ、頼んだぞ」


 ボルナレロはそうして暗闇の中に消えていった。本当は引き留めて、ついてきてほしかったがそれでも、彼の決意を止めることはできず、きっとまた無事に会えるとハーネイトはそう信じていた。


 彼が各地で多くの人に好かれているが理由の1つに、いいことについて気持ちを率直に、純粋に伝えることができるという面が挙げられる。魔法の師匠ジルバッドの教えは魔法以外にもあり、その教えを受けたからか相手の気持ちを量ったうえで必要な言葉をかけることについても天才的であった。


 悪く言えば弱みに付け込むという見方もあれど、彼にそのような邪心は特になく、純粋な気持ちでそう言っていたのであった。

 

 ボルナレロ達研究者はハーネイトが機士国にいた際、彼に多くの励ましや支援を受けて様々な技術の発展をもたらしたという。


 ある意味カリスマ性と言うか、それ以上にハーネイトは多くの人に好かれやすい体質持ちであるといえよう。一部では狂信的な信者までいる始末にハーネイトは複雑な心境ではあったが、それでも今のやり方について問題はないと彼自身はそう考えていた。


「さて、寝直すかな」


「いいのか、あいつを止めなくて」


「うわわ!びっくりした、ボルナレロのことか。大丈夫だよ」


 そう考え宿に戻ろうとしたときユミロがいきなり召喚ペンから飛び出してきたのであった。一応いつでも出られるようにはしていたが、突然のことだったので彼は驚いていた。


 まさか飛び出してくるとは思わず驚いたが、ユミロの言葉にそう返すハーネイト。昔から長い付き合いであったボルナレロのことを彼は信用していた。


 一度決めたことは決して曲げない心の持ち主。きっとやり遂げてくれるとハーネイトは信じていたのだ。


「もし、ボルナレロと、今後会えなかったらどうする? 」


「そうだな、でもそれはないと思う。いざとなったら強制的に私を呼び出すお守りを持たせたし心配ないよ。今後事務所で働いてもらう予定だし、優秀な人材は何が何でも手元に置いておきたい」


「そ、そうか。よく考えて、いるのだな」


「ええ。そうでもしないと大変なことばかりだからね。ユミロも事が終わったら私と共に働いてもらうからね」


 ハーネイトは緊張が解け、素の状態でユミロと接していた。彼は本来可憐な乙女のような性格でもあり、声もそれに応じて高くなる性質があった。戦いなど似合わない、儚く美しい乙女の男。それが彼なのである。


 髪型やしぐさと相まって、人によっては異性として認識せざるを得ないという。ユミロもそれを感じて、心の中で安心していた。


「それは問題ない。しかし、ハーネイト、死んだ俺の母親に、どこか似てる。雰囲気が」


「え、あ、そう?なんかいろいろ言われるんだよね。うん。もっと男らしくしていた方がいいかなと思いつつも、こっちのほうが気楽なんだ」


「ハーネイト、それでいいと思う。それも魅力だと思う。変なこと言う奴は叩きのめしてやる。ハーネイトのその笑顔、多くの人幸せにするだろう。だから、守る」


 ユミロは時々見せるハーネイトの表情を好きだと言った。なぜこのような事態を引き起こすか、それはハーネイトの出生が大きくカギを握っていた。


 しかし彼はその事実について未だかけらの1つさえも手に入れていなかった。だからこそ、ハーネイトは悩んでいた。しかしユミロの言葉を聞いてそれでもいいんだと思い、胸に抱えていた悩みの1つが少しだけ消えたような感覚を覚え、少し笑みを浮かべたハーネイトはユミロと握手する。


「ありがとう、ユミロ。俺もユミロがそう言ってくれて嬉しいよ。これからも、よろしくね」


「勿論、だ。ありがとう、ハーネイト。あれからずっと、地獄だった。もう親も、弟もこの世に、いない。1人だった俺、寂しかった。だけどもう違うんだ」


「そうだね、うん。1人じゃ、ないよユミロは。ふああ、そろそろ寝ようっか?」


「そうか。では、また何かあれば呼び出してくれ。敵であった俺を助けてくれた恩、一生忘れない」


 ハーネイトがもう一度素の状態でそう言う。そうして、ユミロは光りながら召喚ペンの中に戻っていった。


「さて、今度こそ寝よう」


 ハーネイトは宿まで静かに戻り、窓からそっと部屋に入りベッドに座り、そのまま倒れこんで翌朝まで寝たのであった。


そんな中、別の世界でも永い眠りについている者が存在した。その者は遥か別の世界で、雲海が地面を覆う空に浮かぶ大陸、その中央にある広大な花畑の中で寝ているという。


「むにゃ……、ん……人間……消す……っ、龍の力、集める、災い、故、に――」


 透き通り光り輝くような、栗色のウェーブのかかった長髪。きめ細かい生地でできた穢れなき白き衣に身を包んだ、この世のものとは思えないほどの美貌と体を持つ女性。


 彼女こそが、世界を作り上げ、万物を生み出してきた女神「ソラ・ヴィシャナティクス」であった。500年寝て、5年起きる。彼女のサイクルはそういう物であり、もし彼女が起きているときにその機嫌を損なうことがあれば、その原因を作り出した世界に対し不幸を与えるという。


 ここは天神界。女神ソラの住む世界であった。彼女が目覚めるのはそう遠くない話であり、そうなる前に人類は女神から言い渡された命令を完遂しなければならなかった。


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