第205話 世界の狭間・異境界間へのDダイブ
ハーネイトとヴァン、リリー、そして直属の部下など数10人は以前天神界に向かう際に利用した次元融合装置のあるラー遺跡まで足を運んでいた。
世界の狭間である異境界間と呼ばれる場所、そこは不可思議な電脳空間じみた場所らしくそれに詳しいスプリィーテスとエヴィラはそれを使えば、別の世界で活動している血の魔人や霊龍の調査が可能になるといい、それにはパスゲートと呼ばれる次元の裂け目を登録し安定化させないといけない。
もしそれができない場合別のパスゲートを使うしか元に戻る、別の場所に行くしかなくそうなったら最悪元の世界に戻れなくなる、いわば彷徨える状態となり最悪命を落とすと説明した。
「ということで、私も世界と世界を移動する方法は詳しいの。だけど、正直危険よ」
「危険は承知の上だ、エヴィラ。お前も血の魔人を追うのを手伝ってくれるのだろう?ハーベルを襲った犯人をこの手で見つけ出すまでは……」
日が当たらない遺跡の中は薄暗く、温度も低い。その中を慎重に歩いて装置のある場所まで移動していた一行。エヴィラはハーネイトの話を聞いたうえで移動にはどうしてもリスクがあり個人的には危険にさらしたくはないと伝えるも、ハーネイトの意志は固かった。
「ハーネイト、そうね。私も覚悟しているわ。だけど異境界間は、あの霊龍の活動領域でもあるの」
「何?まさかあれらは別の場所からわざわざ飛び出してきたということか」
エヴィラがなぜ今回の世界の狭間に入り込み目的地まで行き、女神代行としての調査などを行うことに積極的でない理由の1つ、それは異境界間の中は霊龍の活動拠点そのものであり、いくつも龍の巣があったり、群れで移動し不運にも入り込んだものを捕食したりと龍に対抗でき、なおかつ戦闘力のない者にとっては生きて戻れない場所だという。
エヴィラはそれを知っており、仲間の数名が龍の犠牲者になったことも含め、霊形と魔法しか使えない状態のハーネイトが果たして巨大な霊龍と遭遇した際に勝てるかどうか疑問と不安を抱いていたからであった。
「その通りだハーネイト。おそらく、その空間では龍は最大の力を発揮できるだろう。一方で別の世界に飛び出た、出てきた霊龍は肉体を構成する霊量子、もとい龍素が常に漏れ出してしまいそのままでは長時間は限界できないとな」
「そうなのかフューゲル。なぜそういうことを知っているのだ? 」
「知っているも何も、お前が力に目覚めるまで俺達で龍を見つけては倒していたわけだ。だからはるか昔から数は限られてはいたが龍が現れて怪事件をいくつも起こしていた。それを手分けして食い止めていたからその辺りでいろいろとな」
「そうだったのか。……はっ、じゃああの時、あれ、見間違いじゃなければ」
「どうしたハーネイト、顔色がよくないが」
「昔剣の道場にいた際、少し離れた村で妙なドラゴンが街を破壊しているって聞いて駆けつけて、攻撃が通ったのが私だけだった。それでどうにか倒したのだけど、そうだ、マースメリアの霊龍も同じような手ごたえだった……」
「そうか、そうなると目覚める前に既に霊龍を葬れる力があったとなるな。……面白い、だがこれからはもっと凶悪な霊龍と戦うことになるだろう。気を引き締めておけ」
フューゲルらがなぜ霊龍に詳しいのか、その理由を聞いたハーネイトは自分も幼い時に戦った覚えがどうもあるが、その時はどういう存在か分からず困惑していたことを伝えたうえで改めて本格的に霊龍という脅威と戦うための新たな戦いが始まることに若干の恐怖と、それ以上に強く熱い決意を心に宿していたのであった。
「そうだよね。しかし、長時間外に出られないと言って放置ってのは……」
「甚大な被害が出るな。だから倒せる俺達で止めないといけない」
「そうか、やるしかないんだね」
「まあそれは分かるぜ、しかしよフューゲル。お前らもなんで龍の力を宿してんだ? 」
「お前らもそうだが、俺たちの祖先のどこかに、龍と縁があるのだろう。しかし詳しいことは知らない、だから調べるための旅に出ないといけない」
フューゲルはさらに、質問について返答しながら自分たちも分かっていないことが多すぎるといい、特に霊龍、血の魔人などはそうだと考えを述べたうえで調査をするために動かなければならないとそう伝えたのであった。
「オベリス、それを集めればソラは全てがわかると言った。それにドラギスという存在に会うのも必要だ、その上で龍の力を持つ存在の実態調査がまず基本的にやるべきことなのは分かっている」
「ん、何かあるのか相棒」
「ああ、あるのだヴァン。今までの説明がつかない事件の数々と血海、血の怪物事件、更に霊龍と思わしき存在を目撃した人たちの証言などをここ数か月集めた。それを照合して分かったことがある」
そんな中腕を組んで後頭部に当てているヴァンは真剣なまなざしでハーネイトを見つつ、今回の調査に偉くやる気があることについて理由を確認した。
「こう言いたいのでしょ、血の魔人は龍の力を放っている、それは龍に操られているかもしれないと」
「そうだ、エヴィラ。特に霊龍の目撃証言の後、血海事件などが増加しているのが実に8回もあった。無視できない話だ、何か関係があるはず。だから女神代行としての仕事に血の魔人という謎多き脅威の調査、活動目的などを調べ正体に迫る必要が出てきた。だから異世界人の話を聞いて少しでも手掛かりのある場所を捜査せねばならない」
ハーネイトが理由を述べようとしたがそれをエヴィラに言われてしまい戸惑う。しかし彼らの言う通り実は霊龍の出現後血海による呪血テロ、血の怪物による襲撃テロなどがしばらく増加することが調査で判明してきたという。
だからこそその関連を調べ、どういう存在かをこの際はっきりさせ対抗策を出そうと考え行動したのであった。
「そうね、それをきちんと調べないとまたああいった脅威が起きるよね、師匠」
「俺様も、まだ思い出せない記憶が沢山あるはずなんやが、もしかするとこの度で思い出せるかもしれへん。まあハーネイトのお目付け役も含めて俺はいくぜ」
「お目付け役ってもう、それでメイドナイツ、バトルバトラーズ、それにエヴィラや龍の力を宿した人たちにお願いがあります」
本来の目的の旅、それに合わせ個人で課題、問題がありそれを解決できたらいいなとハーネイト、ヴァン、リリーは同じ考えだと認識したうえでゲートの登録作業を手伝っているミロクやリリエットなどに対し、感謝の言葉を送ってから各員やるべきことがあると作戦を伝えたのであった。
「有無、我らも調査に参加し、情報を集めろということですな」
「まあいい、退屈しのぎにはなるか」
「サインは全く、まあ良い。我らも調べるか」
「では、わし等も別働で調べるとするかのう。ハーネイトよ、何かあればすぐに連絡をするのだぞ」
「はい、スプリィーテスさん」
そうして全員の今後の行動方針が定まった後、エレクトリールとスプリィーテス、フューゲルは遺跡内の装置を操作し、パスゲートを登録して出入り口の情報が消えないように処置を施したのち、ディメンションダイビングを行うための準備に入る。
ゲートの情報が無事に確立され、その影響からか今まで次元融合装置が赤く光っていたのが青白く輝くようになり、準備ができたことを知らせた。
「さあ、女神代行ハーネイト・スキャルバドゥ・フォルカロッセ、出撃する! 」
「女神代行か、まあ確かに代行やな。本人があの体たらくじゃあれやが今まで何があったかを確かめるにはやるしかあらへん、つなわけで、サルモネラ・エンテリカ・ヴァルドラウン、推参だぜ! 」
「2人のサポートは私がするわ。それに元々地球人だし、案内も兼ねて里帰りと行きましょう」
女神ソラからの依頼を受け、ハーネイト、ヴァン、リリーは先行して調査に向かうことにした。続いてミロク達も調査を行うといい、3人は先に行っているといい、青白い光の門の向こうにわたっていったのであった。
取り合えず、ここまででこの物語は一旦終わりということになります。
様々な戦いを経験し、その中で謎の女神ソラから自身の出生の秘密と今まで起きた事件、歴史を知りたいならばオベリスシステムの復旧のためのオベリス探索、ドラギスという龍頭の戦士の捜索、霊龍の調査と討伐、更に龍の力を宿した存在の調査という4つの依頼を受け女神代行として活躍し、活動の中でさらに多くの人たちと出会い成長して、世界の真実を知ることになるのでした。
これが次の作品に続く流れです。
今まで脳内に出てきた世界を文章にして書いてきましたが、これからもそういう活動を続けて願わくば物語の最後まで執筆して完成させたいです。
現在今までの話について見直し、誤字などの確認を再度行いつつ説明不足などの部分を補充して書いております。なので気になった方は再度読み返してみてください。




