第204話 異世界調査に向けての会議
ハーネイトがミレイシアからCDDを受け取り、霊形戦機と呼ばれる霊形を使った戦闘術の修練に励んだ。
物覚えの好いハーネイトは1か月もせずに完全に、人型の霊形を自分の手足の様に操れるようになった。
「これで、人形使いとしての基本的な技術は身に付きましたね」
「ああ、おかげで新たな戦い方を学べたよ」
「それはとても良いのですが、未だにあの変身術はおろか魔法や剣術も使えませんか? 」
「ああ、魔法は大丈夫だ。医療魔法などを始めとして十分にそれは使える。習っていた時期が長いのか、それはいいのだが他がどうしても、ね。こんな頼りない主人に失望したかい、ミレイシア」
「いいえ、私は貴方の人柄と力に可能性を見出し今まで共に戦ってきました。私も、本当のことを話すとあのような血の怪物と戦うのは怖いです」
ミレイシアの秘密拠点にて話をしていた2人は、今までのことを話しつつミレイシアが本音をもらし、他に共に戦う仲間がいたことが支えになっていたと話す。
ハーネイトもそれは同じだと言い、ミレイシアの手をそっと握る。
「あ、あの……」
「ミレイシア、俺のためにいろいろ動いてくれて、どうもありがとう。今まで通りには戦えないかもしれない、だけどできることをするよ」
「え、ええ。霊形の運用はうまく使えば隠密などにも使えます。他の地域、もしくは別の世界に旅をして活動する上では手の内を隠すという意味で、有益になると思います」
「そ、そうか。手の内を隠す、ね。それでいてかなりの戦闘能力を持つ霊形か。私も修練の中でいくつか改善すべき機能を考えた。それを反映させたい」
ミレイシアに感謝の言葉を伝えた後、ハーネイトは霊形戦機の稼働時間の短さを克服するため、今制御装置に組み込んでいる動力機関をより高性能なものにすべきだと伝え、また武器を召還する装備の開発もエレクトリールの持っているイマ―ジュウエポンの技術を元に導入すれば長時間の戦闘活動を可能にしたり、複数体の使役、運用ができるのではと魔法工学の専門家としての考えを述べ、ミレイシアもそれに協力する形で他の勢力の研究者なども巻き込んだという。
その結果、大気中などに存在している霊量子を回収、蓄積、放出する事実上の永久機関、霊量機関を1か月をかけて完成させ、それを組み込んだ霊形戦機招喚装置はミレイシアがすでに身に着けていたのよりも数十倍以上の出力を出しリミッターを外せば更なる力を引き出せるようになったという。
ハーネイトは新開発した装備を組み込んだCDDを使用し、オリギス、オリギーナのアシストの元世界各地で発生していた魔法犯罪、血の怪物が起こす事件などに介入し全てを解決して見せたのであった。
力を使えなくなった件でハーネイトの噂は各大陸に届いており、不安を抱くものや失望する者も少なくなかったが彼の新たな戦闘術に魅了され、新たに門を叩く者が徐々に増えたという。
「しかし、今のままでは正直困るわね」
「まあ、せやな。やけど、再びあの力を使えるようになるまで見守るしかできねえよお嬢さん」
「言ってくれるわね、まあ、仕方ないわ。任務のこともあれのせいとは言え忘れているあいつらを、私が全部葬ればいいだけのことだわ」
そんな中ハーネイトについて話をする2人組が、調査におとずれた南大陸の北端にある小さな街のとあるビルの屋上にいた。
それはエヴィラとヴァンであり、ハーネイトが実質的に抜けた分を自分たちで対処しないといけないことにぼやきながらも、自分たちは自分たちでとある目標を達成するために動くしかないと共通の認識を確認していた。
「あいつらを、倒すのか」
「ええ、一時期は同胞として、仲間としてDの後継者を探していたわ。けれど、どういう経緯か分からないにしろ龍に操られた仲間たちは私を襲い深手を負わせ、行方をくらませた。しかもあいつらの活動が、本来守るべき対象をひどく傷つけた。それが許せないのヴァン」
「そうか、それは俺もやな。ったく、ハーネイトにはもっと力を引き出してもらわなあかんのに、あの霊形だけやときついで」
「何かあれを利用できればいいのかもだけど。しかし、あいつらの気配が街の奥からするわ。行きましょう」
「へいへい、さっさと片付けてやるか」
エヴィラは自身の過去に後悔があり、そのけじめをつけたいと改めて意思を示し、ヴァンもそれに共感しつつこの先起こるであろうある脅威の出現に対し、本来の力を使い戦えるようになってほしいとハーネイトに対しそう祈り、街の奥にいるであろう血の怪物を生み出している血の魔人の討伐のため移動したのであった。
謎の多いエヴィラという女性、彼女はハーネイトを何が何でも守るため手段を問わず秘かに活動しているようであるが、その思いがのちに厄介な事態を招くことを想定など全くしておらずヴァンもハーネイトのそばに寄り添いつつ彼を何かに利用しようとしていたのだが、それは相当後にわかることであった。
そうしているうちにアクシミデロ星は秋になり、球技ブラッドルのワールドリーグが通年通り開催されるという情報に多くの人が歓喜に沸く中、ハーネイトはというとリンドブルグの事務所に戻り、複数の異世界人からある情報について話を聞き、整理していた。
「私もここに飛ばされる前、血の怪物と呼べるような存在に襲われそうになりました」
「僕も、街をあの妙な怪物に襲われ彼らがまき散らした血は多くの命を奪いました。まるで病か何かの様です」
「この世界以外で被害が出ているとはな、もしかすると別の世界にあいつらの拠点がある可能性が出てきたな」
ハーネイトはミタカとヨハンからこの世界に来る前の話を整理させつつ話させ、その中でどう持ちの怪物に襲われ運よく転移させられここにいるのではと考えていた。
「しかし孫よ、我らも招集して重大な話をするとは何事だ」
「この手紙を読んで欲しい。今まで謎の多かった、血の怪物や血海を生み出す恐ろしい脅威、血の魔人という存在の正体に迫るカギになるかもしれない」
異世界人のほかにも会議、情報収集にはメイドナイツやバトルバトラーたちも集っており、ハーネイトが手にしていた手紙を確認し内容を読み、血の魔人に迫るヒントがあると分析していた。
「てことは、地球に出向いて魔人たちが拠点を作っているとされる場所を調べないといけないわけか。ついでに里帰りできそうだな」
「そうですねミタカさん。僕も、おいてきてしまった両親と妹のことが心配です」
「この手紙が誰のものかは不明だが、現に異世界人である君たちも血海や血の怪物による被害を体験しているならば、脅威はこの世界以外にも広がっているとみていい」
「そうですな、このシャムロック、調査についていきますぞ」
「移動は、あの遺跡にある次元融合装置を使用するか」
「我らしか使えないが世界の狭間に飛び込み、目的地を目指すしかないぞ」
「スプリィーテスさん、それは……」
「やるしかないぞ。さあ、血の魔人という脅威の正体を知るために活動するべきだ」
「では、この手紙に書いてある場所まで移動し、血の魔人に関する調査と並行して、龍の力を宿す人間たちの実態調査なども行います。異存がなければ準備などを行ってください」
アクシミデロでの事件が落ち着いた今、他の戦士や魔法使いたちに任せ自分たちはやらなければならない、女神代行としての仕事をするべきであり同時に血の魔人という脅威を止める為に調査を続ける必要があると全員で確認し、スプリィーテスの提案した方法で異世界に移動するためハーネイト、リリー、ヴァンの3人は先行調査隊として世界と世界の狭間である異境界間へのディメンションダイブを行うことにしたのであった。




