第203話 秘密の遺跡と2人の電霊:オリギス・オリギーナ
力を奮えなくなったハーネイト、しかしミレイシアはそれも見越し、すでに対策を打っていた。それは自身の持つ人形使いとしての力、技術を教えハーネイトを人形、いや霊形使いとして導くことであった。
霊形戦機と呼ばれる対龍兵器。その運用を支えるAI、オリギスとオリギーナと呼ぶ少年少女の姿をした電霊はハーネイトをこれから新たに支える存在として傍に寄り添い続けるのであった。
それから2週間近くが経過した。その間に起きた事件はハーネイトの代わりにヴァンとミロク、フューゲルが指揮を執り他組織との連携も含め被害を最小限に抑えていた。
その間に南大陸にあるハルクス龍教団のある街ベストラでは教団の本部である協会にて2人の男女が話を静かにしていた。
「遂に時が来たのですね、お兄様」
「ああ、しかし噂を聞いたが想定外の事態だ。内なる力、その恐怖に屈してしまうとは……全く、手のかかる孫だな」
その男女とは、以前魔女誘拐事件の際に関わったセフィラと、龍人化した霧の龍ことウルグサスであった。
彼らは風の噂で聞いた、ハーネイトが戦えない状態だということについて話をしつつある計画に関して、無理があったのではないかと少しの間議論しつつこれ以上静観している場合にはいかない、自分たちが支え彼を導く手伝いをしながらこの先起こるであろうある事態を想定し備えるため、ミレイシアから極秘に受け取った手紙の内容を再確認しつつとある遺跡に移動する準備をしていたのであった。
「周りが勝手に期待をし過ぎて、それに押しつぶされたともいえるのでは?……ミレイシアも動くようですし、そろそろあるべき姿に戻りましょう」
「そうだなセフィラ。今後ああならないように、不測の事態に備えるため」
「何よりも彼のそばで支え続けるため、破滅時計の秒針を進めないために」
すでに次の代表は引き継いでいる、セフィラはもう思い残すことはここにはないと、旅支度を済ませるとベストラを後にしミレイシアがある場所に向かう前にそこに到着すべく急いで兄と共に向かうのであった。
その少し前、ミレイシアは状態のある程度戻ったハーネイトにある話をしていた。自身の隠れ家であり研究拠点について話を初めて行い、そこに同行しあるものを見せたいと伝えたのであった。
「それで、今から私の拠点であるドゥムニアスカ遺跡に向かいます」
「その遺跡は、聞いたことがない。そこが拠点だと」
「ええ、ハーネイト様も知らない技術がそこにはあります。刀を振るえないほどになっても、別の戦い方があることを教えるため今回初めて話しました」
「私が不甲斐ないばかりに、迷惑をかけてしまった」
「それは、私たちのセリフです。私たちがもっと精神的に支えていれば貴方はまだ余裕をもって事態に対処できた、しかし過ぎたことは仕方ないのです。それとこの先起きるであろう事態に備えるためにも、より凶悪な脅威と戦うためにも私の持つ技術は貴方の力になることは確実ですので、ついてきてください」
「分かった、案内してくれ」
ミレイシアはハーネイトを連れ出すとシャムロックから借りたサイドカー付きのバイクを運転し、ミスティルトシティから北東に100㎞以上離れた空白地帯、アムネスドゥスとよばれる場所まで移動した。
そこには数百年前に滅亡したといわれるマッスルニア帝国が存在していたといわれ、その痕跡が遺跡や崩壊した建造物として残っている。そんな一見殺風景な場所の中に、ミレイシアは極秘の研究拠点を作っていた。
自身の操る人形の開発、武装の開発強化などを中心に、様々な技術を集めつつ昇華していた彼女はBKと一部の機士国関係者と提携しとある装備の開発に成功していた。
その装備を紹介するため、ハーネイトをどうにか連れてきたのであった。
拠点は地下墓所にあり、そこに至る石造りの階段を下りた2人は薄暗く狭い通路をしばらく通ったのち、開けた大広間のような整備された空間に足を踏み入れる。
「少々お待ちください。渡したいものを持ってまいります」
「分かった、しかしすごい場所だ。天井に緻密な装飾や絵が……っ、あれ、これ天神界で同じようなものを見たような、ええと」
ハーネイトは以前天神界にてこの遺跡の天井に刻まれている6体の龍の姿の絵とそれを倒そうとする天使と悪魔の絵を見た。
それはまるで壮絶な戦いの記録の様であり、悪魔の絵を見て思わずフューゲルに似ているなと思い、天使の方はシルクハインなど天神界の人たちと似ているなと思い少し笑みを浮かべつつミレイシアを待っていた。
すると彼女が部屋の奥にある階段から下りてきて、ハーネイトの元に駆け寄ると1台の通信端末らしき機械を手渡した。
「ハーネイト様、これがCDDと私が名付けた、私が操る人形、いえ、正確には霊形と呼ばれる存在を使役し運用する動作環境を内蔵した最新型の霊形戦機運用デバイスです」
「霊形? 」
「ええ、天神界に以前行きましたよね?その際にどこかで龍に似た、しかし違うような巨大な生物を見かけませんでしたか? 」
「えーと、あ、あれかな?犬のような、巨大な幽霊のような存在」
「そうです。それを霊形と呼び、どうもそれを使い霊龍を倒そうとしていた計画がこの遺跡の中にあった記録に記載されていました。ごく一部ですがそれを元に自身の技術もそれが根源であると理解し、いざというときのために開発していたのですが、このような形で教えることになるとは思っていませんでした」
ミレイシアはハーネイトが以前見た巨大な霊的生命体について言及し、それが霊形と呼ばれる存在であり、それを運用し龍を倒す計画があったことを教えたうえで自分なりに工夫し資格があればある程度誰でも使えるように調整したという。
そのあと30分ほどかけてミレイシアからCDDの機能について習い、全てを容易く理解したハーネイトは霊形戦機を実際に呼び出す操作を行う。
「こうして、こうすれば呼び出せると。霊形戦機、招喚! 」
すると捜査していた装置が急に光りだし、周囲を包む。あまりのまぶしさに目を閉じたハーネイトが次に目を開いた時、クリーム色の美しい髪と水色と白を基調とした服を身に纏う身長130センチほどの少年少女がハーネイトの前に立っていたのであった。
「君が、僕を読んだ主様かい? 」
「お初にお目にかかります。私はCDD運用システムナビゲーションAI・オリギーナと申します」
「僕はオリギス。妹のオリギーナと同じくこのCDDの捜査、演算補助などを行うプログラムにして番人さ。今後ともよろしく」
「え、ええ。オリギス、オリギーナ……。よ、よろしくお願いします」
目の前にいる、まるで霊龍が人と化したような少年少女。兄のオリギスと妹のオリギーナ、2人に一礼したハーネイトはどこかで以前2人に会ったような感覚を覚えつつ握手をし、改めて人形使いとしての基本的な所作や戦い方をミレイシアから習うことにしたのであった。
ハーネイトはその後もミレイシアから極秘の特訓を受け、補助プログラムであるオリギス、オリギーナの教えもありミレイシアの持つ技術を運用できるようになり、ここに人形使いとしてのハーネイトが誕生したのであった。




