第201話 辺境の街にて起きた呪血テロ事件
第2次DG戦争を終結させた後、ハーネイトたちは新たな脅威と戦っていた。それに比例し以前から起きていた呪血テロ事件も増加しており関連を調べつつ事件の介入、解決を行っていた。
そんな中ハーネイトとヴァンは北大陸の辺境の街にて起きた呪血テロ事件に介入したのだが……
(久しぶりの新規の投稿です。ハーネイトに降りかかる災難、それにより力を奮えなくなった英雄は別の手段で再起を図り、呪血テロを起こしているとされる血の怪物を生み出す血の魔人の調査及び世界の狭間に巣食う霊龍の討伐と並行し、別世界で活動している魔人の情報を手に入れた一行は龍の力を宿す人間の実態調査と合わせ地球に向かうのであった)
長い戦いの末にDGを実質的に機能停止させることに成功したハーネイトたちであったが、別の脅威と戦うことになる。
それはマースメリアを襲った実体なき龍、霊龍であった。アクシミデロ星の各大陸で目撃され数々の街を襲っている様々な色の霊龍は、様々な怪事件を起こし多くの人の命を危険にさらしていた。
それらが起こす事件への対応にしばらくの間追われつつ、アル・ザードとして再編成された脅威対策組織は国家間の垣根を超え事態の収拾に必死に取り組み、3か月をかけてようやく沈静化したという。
「あの日以降出現し続けてきたあの霊龍……天神界で遭遇したのも合わせ、あれは脅威にもほどがある」
「ああ、しかしそれだけやないで相棒。またあの血の怪物を生み出す魔人の目撃報告と、呪血テロや血海が発生しとるで」
北大陸で起きた霊龍が起こした街への襲撃事件を無事解決したハーネイトとヴァンは、ある高層ビルの屋上から街を見下ろしつつ最近起きている新たな脅威、事件に関して話をしていた。
「龍の活動に比例して、今まで沈静化していた血海災害が各地で再び増加している。何か関係があるのだろうか、あの遺跡で戦ったイエロスタ、か。そういえばあれからも霊龍と同じ力を感じていた」
「せやな、しかし俺らもその霊龍の力ってのを使えるわけやし、なんやろな、どこかで何かが繋がっているかもしれへんで」
「現に私も、あの戦形変化という力で龍の力を纏って戦っているわけだ」
「先ほどの戦いでも青い龍の力か、それで街を襲っていた赤い霊龍を氷漬けにした挙句飛び蹴りで粉砕してたしな」
ハーネイトはここ数か月で幾つもの異変が起きていることを確認しつつヴァンに話し、霊龍の力を宿す者が意外といること、その中にはフューゲルという悪魔、りリエットをはじめとする霊量子という力を運用できる能力者などもおり、どこかでその霊龍と自分たちが何かつながっているのだろうなと思いつつ、その力がないと霊龍に傷1つ付けられない事実を実感していた。
先ほど戦いを終えたハーネイトとヴァンだが、2人とも霊龍の力を使えることを理解し、しかもその力を使った、纏った攻撃以外は全部吸収されることも戦いの中で把握しておりハーネイトは氷の青い龍の力、ヴァンは闇の黒い龍の力を身にまとい、街を襲い建物などを食べていた霊龍を見事撃破したのであった。
「……この力なしに霊龍は倒せない、だけど何故、この力を宿す存在が少ないけれどいるのかが気になる」
「せやな相棒。それを突き止めるのが1つの目標やと思うで。あのソラという女神の代行としていろいろやらなきゃあかへんし、その活動と結び付けて解き明かしていけば真実が分かるかもしれへん」
「そうだな。これからもっと忙しくなる……龍の活動だけでなく、血の海を作り多くを飲み込み呪い、奪う存在。紅儡と呼ばれる生物を改造した怪物を生み出す血の魔人の正体についても、私たちは知らないといけない」
「ああ、分かっとるで相棒。俺の失った記憶を取り戻す旅も合わせて謎を解き明かそうや」
自分たちにはまだ知らないことが沢山ある、龍のことも、血の魔人という存在のことも、ヴィダールとDGの関係などについても、数えきれないほどにある謎をみんなで解き明かし女神代行としての仕事を終わらせようと2人は意気込み後でミスティルトシティに戻りバーで飲もうと話を付けていた。
その矢先、ハーネイトがワイシャツの胸ポケットに入れていた通信機器に通知が入り、それに出るハーネイトはエレクトリールからある話を聞く。
彼女のうろたえている様子が声で分かり、落ち着かせてから何があったのかを確認する。
「ハーネイトさん、北大陸の最北部にある辺境の街、コズザウンという港町で巨大な怪物が現れたと報告が届きました」
「エレクトリール、現在の状況を知らせてくれ」
「街や住民に被害が出ている模様、巨大な血を流している肉塊が、触手を生やし周囲を破壊していると警備に当たっていた街ギルドの人が報告しています」
現在コズザウンという小規模の街にて謎の巨大怪物が暴れているという。状況はよくなく、現地にいる人たちだけでは撃破はできないと考えエレクトリールは任務を終えている人の中で一番コズザウンに近いハーネイトに連絡した。
「分かった、私たちが一番近いだろう、街の方に連絡を入れていてくれ」
「んじゃ行くか相棒、化け物退治としゃれこむで! 」
話を聞いていたヴァンは余裕のある表情で腕を回しつつもう1仕事だと意気込み、ハーネイトに準備はできていると告げた。
「ああ、速やかに介入し解決だ」
そうして2人はコズザウンまで空を飛びながら向かい、30分ほどで現地に到着した。
すると街の中央部にて全高20m近い、肉の塊が不気味にうごめき周囲に呪血を噴射し汚染している物体を見つけた。
それにより街の中央部を起点に禍々しく赤い血が広がり、血海となっていた。呪血テロ、血の怪物が起こすその汚染侵蝕は多くの人の命を奪い、街を消滅させていた。
呪血領域とも呼べる血海を消せるのはごく限られた能力者に限られておりハーネイトはその力が最も強く、かつて発生した幾つもの呪血テロを解決に導いたとされる。
空からそれを観察していたハーネイトは、まるで巨大な紅儡だと思い今まで見たことがないと警戒しつつ攻撃準備に入る。
「戦形変化・黒翼斬魔!」
「ぶっ醸してやるぜぇ、死菌覇装!」
ハーネイトは黒い霊龍の力を纏い、首元から伸ばした龍翼をたなびかせ全速力で怪物に空から体当たりを仕掛け、街から遠ざけようとすさまじい衝撃でぶつかる。
それにより大きく吹き飛ばされた血の怪物は反撃しようと血まみれの触手を肉塊から生やしてハーネイトを穿とうとするがそれをヴァンが放った微生物の霧弾で防ぎつつ触手を利用しそれを伝い怪物本体を醸して分解しようとする。
しかしそれに抵抗し血のレーザーをいくつも放つ怪物だがハーネイトの黒い龍翼がそれを受け止め防御、しかもエネルギーに変換しお返しと言わんばかりに龍翼が鋭く変形し、まるで黒い暴風の如く振り回し怪物をずたずたに引き裂く。
「蹴りを付ける!行くぞ、終劇決戦戯・黒刺武槍! 」
「今日のランチは手前や!醸せ、死菌染醸っ! 」
2人は速やかにとどめを刺すべく、それぞれの必殺技を使用する。一撃で戦いの劇の幕を下ろさせる切り札、ハーネイトは龍翼を屈折しつつ迫る黒い槍としていくつも肉塊に放ち触れた部分を消し飛ばした。
それに合わせヴァンは力を込めて怪物に対し手をかざした。すると怪物は見る見るうちに腐っていき最終的に微生物に分解され痕跡も残さず消滅したのであった
「ふう、これで終わりか? 」
「だとええんやが、っておい、逃げ遅れたお嬢ちゃんがあそこにおるで相棒」
脅威を排除したのを確認した矢先、街中に1人の少女が取り残されており2人は急いで地面に降りると少女の元に駆けつけたのであった。