第200話 後日談と皆が1つになる時
ハーネイトと伯爵が帰還してから数日後、ミスティルトシティのBKが所有している大会館にて機士国、日之国、レイフォン騎士公国などの代表とBK、魔女の森、魔銃士ギルドなど各魔法組織及びハーネイトが出資しているゼペティックス民間救助会社などの代表などが集まりハーネイトが代表としてある会議を行っていたのであった。
「ということで、今日集まって頂きましたのは」
「相棒であるハーネイトがある組織の立ち上げについて話があるということだ」
「新しい組織っすか? アル・ザードとは違う組織っすか?」
なんでも以前立ち上げた対侵略者対策組織となっているアル・ザードの活動を更に拡大しつつ今後想定される脅威に対抗するための組織に再編するという話に多くの人が関心を寄せていた。
しかしDGの脅威はもう過ぎ去ったのにと思う者も中にはいたが、殆どの人はその新たな脅威を理解していたのであった。
「そうだな、活動内容と言えばアル・ザード、血徒再葬機関の活動を合わせつつマースメリアなどで目撃され被害を出した実体なき霊龍への対策、討伐、調査などを行う組織、世界龍封印機関の立ち上げを行う、それが今日の会議の話です」
ハーネイトはソラより正式に世界龍こと旧支配者を封印しつづける機関、世界龍封印機関の4代目を正式に継いで活動することになったと伝えた上で、組織が行うべき仕事の内容とそれに参加する者がいるかどうか意志表明をしてほしいという内容であった。
「天神界か、そこに行って何を知ったのだ若よ」
「世界龍封印機関、それは先述の通り幽霊龍、それの本体である旧支配者と呼ばれる存在を監視し封印を施し続ける組織。その代表の座を私は現代表ソラから実質的に引き継いでその座につき、行方不明になっている第2、第3代の代表及び初代代表であるドラギスと名乗る者の捜索を行いつつ、オベリスという結晶を集めこの先起こるかもしれない脅威に対処する、そういう方針でこれから動けと言われました」
ミロクの質問に対しハーネイトは詳しく天神界で起きた出来事を全員に話したうえで、この先脅威となる霊龍に対する対策が重要になることを話したうえで転移してきた存在に対する監視もそれに並行して行うため活動内容を広げ多くの人の命と未来を護るために動くことを伝えたのであった。
しばらく会場はざわつくも、既に霊龍の被害はリリエットたち元DGやBK、ゼペティックス、忍専などの勢力が抑えているとはいえ出ているため今こそ1つになって脅威に対抗する組織を真に造り上げる時だと最終的に意見は1つにまとまるのであった。
DGとの戦いで、強大な脅威にはみんなで手を取り合い戦うしかないことを分からされた各国の代表たちはそれを束ねて前に導くハーネイトとその仲間に対し感謝しつつ自分らも民の命と生活を守るために可能な限りのことを行い世界龍封印機関にも支援を表明したのであった。
「幾度となくハーネイトには助けられたからな。我が国の軍人たちも意志は固い、何かあれば協力は惜しまなく行うぞ」
「立派になったもんだなハーネイト、そうだ、俺たちも海での戦闘は誰にも負けん、それ関連で何かあれば言ってくれ」
「カラクリ兵器の開発もそうだが、龍に対抗する装備の開発も他の国々と併せて行いたいものだな」
「此度の活躍は子供たちから聞いておる。我らも脅威に対抗するべく勇猛な騎士たちに組織に加わるように言っておこう。お主ならば、預けても安心じゃろうハハハハ」
「皆さん、本当にありがとうございます。龍との戦い、終わりがないのかもしれません。それでも私は今こうして集まっている皆さんとの思い、約束、今までのことを護りたい、今ある世界を全て護りたい。そのために戦います。どうか、ご協力のほどよろしくお願いします!」
各国の代表の言葉に、ハーネイトは涙を見せつつも龍と戦う意志表明を述べ、会場内は拍手の音に包まれたのであった。
「んで、俺たちにそれに入って欲しいというのか」
「私たちはあくまで救助会社ですからね。でも、龍の話は聞いていますしこれから災害対策が忙しくなりそうですねハーネイト様、ゼペティックス社長」
「強制はしない、ゼペティックス。しかし、あの霊龍は今後あらゆる場所で目撃数が増え多くの被害を与える可能性がある」
「マスター、その霊龍を倒すため、某らもその組織に所属した方がよいのですか?戦忍にできることは戦うことだけですが」
「できれば、な。ヴィダールでないけど龍の力を宿す存在、それがこれからカギを握るというがそれを見つけ出し保護しつつ龍が起こす事件の介入と解決を行うことになる。でも、私は誰も縛りたくなんかない。自由な風が吹くようにしたいから」
その後ゼペティックスと南雲たち忍専の者からの質問にそう返答し、あくまで世界龍封印機関に入るのは任意であり強制は決してしないと強調してそれを全員に伝える。
もし龍との戦いに参加すれば夢を追うどころではない状況に陥るかもしれない、ハーネイトの気風は自由を尊ぶものであり、誰も縛り付けたくない、自分も自由でいたいというのは全員付き合いの中で理解していたため集まった者たちは既にどうするかはほぼ決めていたのであった。
「なら、俺は遠慮なく入らせてもらう。師匠、俺はもっと貴方と旅がしたいんだ。あれを倒すために戦った実績もあるし、問題ないっすよね?」
「わ、私もです! ハーネイトさん、私は貴方に命を救われ、DGの幹部として、組織のNO.2なのに受け入れて、仲間だと認めてくれました。だから、どこまでもついていきます!」
その中でリシェルとエレクトリールはハーネイトにこれからも付き従うといい、どこまでもどんな場所にもついていって支えると彼にそう伝えたのであった。
「私たちはそもそも帰る場所なんてないし、あの幽霊龍だっけ、どうも私の故郷で似たようなのを見たことがあるの」
「それは本当かリリエット」
「地球もすでに、その脅威が迫っているかもね」
「はい、と言ってもここ数年の話の様ですが、実体のない龍が起こす事件については目撃しました」
それにリリエットとヨハンたち元々地球人である元DGの人たちと、元からヴィダールであるシャックスとシノブレード、それ以外で龍の力を宿しているボガーノードをはじめとした面々は別の世界でも龍による事件が起きているかもしれないと言いながら自分たちも龍の力を持ち、今後狙われるくらいなら戦ってやると全員が機関に入る意志を伝える。
「俺たち、それに対抗できるんだろ?いいぜ、どこまでもついていくぞ大将さん」
「わしとミロクはお前のお目付け役じゃな。お前らはどうする」
「無論! 血の魔人の脅威もまだある。それに古文書の話やハーネイト様の話などを聞いていると、どうも魔人と龍にも関係があるような気がするのです」
「私もサインも、それにBKの皆さんも貴方の活動に賛同し協力致しますわ」
ハーネイトを支えてきたミロクたちは全員主である彼の方針に従うまでだと迷いなく組織に参加すると伝え、その後ミレイシアは一旦部屋を出てから2人の黒を基調としたメイド服を来た女性を引き連れてハーネイトの前に立ち、新たなハーネイト直属の部下となるBK出身の魔女たちを紹介したのであった。
「ということで、新たなメイドナイツを私が選抜しました。前に出なさい」
「オフィーリア・ぺルテイシレス・ヴェネトナシアです。お久しぶりですねハーネイト様」
「わ、私はローザリンデ・メルヴィッチ・ファルフィーナと申します」
「アストライカ・リモネナ・ロナスタシアと申します。以後宜しくお願い致します」
「アンドラスタ・チユシェ・ソフィア、です」
ロイ首領及びミレイシアの妹であり碧色の髪を伸ばした、少し垂れ目でおしとやかな長身のメイド、オフィーリア。小柄で赤髪、顔の横で三つ編みにしている青色の目が美しいBK所属のローザリンデ、金髪で理知的な装いを見せる眼鏡をつけた豊満な肉体が目立つアストライカ、最後に緑の髪をポニーテールでまとめたいつもスケッチブックを手にしている殆ど言葉を口にしないアンドラスタの計4名がロイ首領との話し合いの元ハーネイトの部下として移籍することになったのであった。
「ああ、それと俺たちも勿論お前の元であの幽霊龍や同胞を追って戦うことにするが、仲間を紹介したいんやが」
「少しでも仲間がいる方がいいわ」
「はい、リステリアと申します。ハーネイト様ですか、王子が何卒世話になりました」
すると伯爵の方からも1人紹介したい部下がいると言い、すぐに連れてきたのであった。
それは紺色の髪でおかっぱ頭の眼鏡をかけた、愛らしい秘書のようなスーツを着た小柄な女性であった。名をリステリアと呼ぶその微生界人はハーネイトの話を聞いて是非参加したいと意思を示していたという。
「リステリア、君も微生界人、という存在か」
「はい、ですが微生界人も本当は、自分たちの力を憎んでおります。あの、よければU=ONEの力を施して頂けませんか?その代わりあなたの手足として働きます」
「分かった。私に協力してくれ」
「こうも大所帯になるとはな。しかし、課せられた使命を自覚したならここからが正念場だ」
「その通りだぞフューゲル。……龍に憑りつかれたコズモズを解放するためにもな。どうか、清く誠実に進んでほしいものだ、Dの後継者よ」
そうして会議はひとまず終わり、集まったゼペティックス社、魔法秘密結社バイザーカーニア、魔女の森、機士国を始めとした五大国及び騎士の国レイフォンの騎士たち、更にDGの新派に属する霊量士たちや悪魔人フューゲルとその仲間たち、ガルマザルクやギルドマースメリアなど各勢力の人たちが世界龍封印機関という1つの組織に集いハーネイトは4代目龍葬長として活動することになったのであった。
そうして会議はしばらくして終了し、テッサム達が作った会食などを皆が食べ意見交換などを行った後、ハーネイトとヴァン、エヴィラとリシェル、エレクトリール、リクロウはホテルミスティルトの屋上にて風を浴びながら天を仰ぎつつこの先起こるであろう戦いの予感を感じつつ会議の感想などを述べていた。
「まさか、ここまで皆ついてくるとはな」
「あたぼうよ、戦いはこれからが本番やで?DGの奴らはもう俺たちを狙うことはないやろけど、それ以上の存在がこの先仰山出てくるやろうし、気の抜けない日々が続くやろな」
「それでも、未来を護るために」
「今を生きる人たちのために」
「あらゆる世界の安寧のために、私たちの戦いはここから始まるんだ。さあ、行こう!」
ホテル・ミスティルトの屋上にてハーネイトたちは互いにそう誓いあい、過酷な旅が続く事を理解した上でそれでもやるべきこと、成すべきことをやるまでだと意志を固め終わりのない魔人と幽霊龍との戦いに身を投じようとしていたのであった。
そんな中エレクトリールは屋上を降りようとするハーネイトを引き留めある話をしたのであった。
「ハーネイトさん、あの日のこと覚えていますか?初めて会った日のことです」
「ああ、ぼろぼろの状態で事務所に来た時のことか」
「はい、あの時は本当に助かりました。それと、まだ私は隠し事をしていました」
「DGのNo.2、だけでなく?」
「はい、実は私もヴィダールの1柱、なのです」
「何だか、そんな予感は何処かでしていたかもしれない。感じる気がシャックスたちと似ていたし、あの龍ともね」
初めて出会った時のことについて2人は話が進み、屋上に寝そべりながら互いに見合いつつ微笑み、顔を時に紅くして話す中でエレクトリールは少し顔を背け、もう1つ伝えられなかったことをここで打ち明けたのであった。
それは自身もヴィダールの1柱であり、ハーネイトが龍の力を使う存在だということも分かった上でついてきていたということであった。次元力、それはヴィダールの力を持つ者にしか使えないためそれを使うのを見て、その際に活性化した力を感じ彼こそがソラが生み出した存在の1つであると確信していた。
「はい、私たちも長らく自分たちがあの恐ろしい霊龍から生み出された存在とは知りませんでした。まあ、どうも知らないヴィダールと記憶喪失のヴィダールがいるようですが。でも、ソラはそれを知っていて覚えていて、だから龍の力を利用することができると確信しあのようなことをしていた、のかなと」
「みたいだな。その最終版が、この私ということなのだろうか」
それを聞いてハーネイトは怖くなかったのかと問うも彼女は少し苦笑いしつつハーネイトの優しさが強くて他の仲間が言っていた怖い存在では全くなかったことを正直に話したうえで、自分たちも知らないで龍のことを過剰に恐れ、ソラの考えを否定したことを悔やんでいることを話す。
知っていれば、ソラがそこまでして龍の力を使おうとするのかもっと理解できたはずなのにと思いつつ、それでもソラはハーネイトを通じてヴィダールという存在の真実を気付かせようとしていたことにホッとしていたのであった。
「そうみたいですね。でも、ソラのように冷徹で容赦ない存在でなくて良かったです。貴方の温かい心は多くの離反した仲間たちの心を、しかもあのソラという存在をも動かしましたからね。これからは私たちが貴方を支えていきますから、貴方も為すべきことをやってください」
「まだ、戸惑いも多いし受け入れられないところもある。正直、まだ正式に代表の座に就くのは何だか早いかもしれない。だけど、私、やるよ。破滅の未来、ソラが言っていたそれを防ぐために、戦うよ。世界龍封印機関、その4代目代表としてソラの代わりにやって見せる」
「ええ、これからはヴィダールも1つになってあの恐ろしい未来の予言を防ぐため動きますから。ハーネイトさん、貴方はもう1人じゃないですから安心してくださいね」
「そう、だね。……さあ、ここからが忙しいな。エレクトリール、改めて私と共に謎を追おう。ソラが言っていた計画の全貌も含め、龍が出てきた理由や血の魔人という存在の正体を暴くために」
「はい!では行きましょうね、ハーネイトさん!」
「ああ、まずは龍の力を宿すものを沢山探して保護しないとな。それと、予言の神子というのがどういう存在か、もねエレクトリール」
旧支配者である龍の力をすべて運用しそれを封印する、それがハーネイトという存在の為すべきこと。エレクトリールはこれからはヴィダールが1つになりかつて同じ脅威に立ち向かっていた時のように双方動きこれからさらに猛威を振るうかもしれない霊龍の活動を止めるために戦い続けようと2人は誓いあい、その龍に操られている者たちを助け出すために旅を新たに始めようとしていたのであった。