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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第1章 第1シーズン 宇宙からの侵略者DGvsハーネイト遊撃隊
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第16話 フラフムの宿にて


 町の人たちが集まっている中から、ハーネイトたちに向かって歩いてくる老人、彼の名はリュジス・クライロ・フォンゼルといい、このフラフムで街長をしているという。


「それなら私の宿で休めばよい。貴殿方は命の恩人だ。案内しよう。それと肉の振舞い、感謝いたす」


「どうしますか? 」


「お言葉に甘えよう。リシェルもいいか? 」


「はい、早く休みたいっすね」


「では、案内の方、よろしくお願いします」


「ああ。こっちじゃ。ついて来てくれ」


 リュジスはハーネイト達を宿屋まで案内し、部屋まで連れていくと部屋に入ったハーネイトたちに対しそう言いながら深々と頭を下げる。


「部屋の作りこそ簡素だが、ゆっくりはできるだろう。先程は助かった。住民を代表してお礼を申し上げる。ハーネイト様、それとリシェル、エレクトリール殿。ありがとうございました」


 ここは小さな町な故資源も乏しく、できることは限られると彼は言うも、ハーネイトはそんなことを気にしないでくださいと言わんばかりににこっとしながら謙虚に彼に接する。


「いえいえ、頭を上げてください。偶然通りがかっただけですから。しかし危なかったですね。襲撃も、あの爆発もですが、冷や汗をかきましたぞ」


「同感です、正直戸惑っていますよ」


 ハーネイトは先ほど起きたことを思いながら彼にそう話しかけた。まさか敵が手下を駒としか思っていないような存在だとは思わず、彼は若干動揺しているのを冷静になって隠していた。


「そうですか、しかし振る舞いと言い噂にたがわぬ謙虚ぶりですなあ。ああ。前はこんなことはなかったのだがな。この前も似たようなことがあってのう、その時はそこのリシェル殿が追い払ったからよかったが。今回はどうなることかと思ったわい」


 リュジスは2人に、ここ最近の出来事を話しながら温かいココアを用意し振る舞う。こういったものがあるのも、転移現象によって異世界から流れついた植物や書物の恩恵であり、いかにこの世界の住民がそれを利用しているのかが見て取れる。


「しかしハーネイトさんのあの一撃、見事でしたね。青い光線がとても幻想的でした」


「あれほどの魔閃ません、あいつらあの一撃食らって生きている方があり得ない威力だった。ハーネイトさんは本当に魔法使いだったのですね」


「それでも一応、名前が通っているからね。あれ、リシェルも魔閃のこと、分かるのか」


「え、いえ。本で読んだだけですよあはは」


 ハーネイトはリシェルの言葉について尋ねるも、彼は笑いながらごまかそうとしていた。


 魔閃は確かに魔法使いにしか扱えないものの、正確にはその魔法使いの中にもいくつか種類があり、その1つに魔銃士と言うものがかつて存在してした。


 ハーネイトはその魔銃士が極めた魔閃を独学で習得したのだが、このせいで一部の魔法使いからは警戒されていた。それは、魔銃士と言う存在が相当な異端児であったことも理由に挙げられる。


「しかし済まなかった。外に出ている間にこの様とは、俺も解決屋としてまだまだだな。猛省せねば」


 リシェルは、先ほどの件も含め未だ至らないところがあったと反省してややうつむいていた。もっと強ければみんなをより安全に守れるのにと悔しそうにしていたのを見たエレクトリールは彼の隣にきて声をかける。


「解決屋として?リシェルさん? 」


「あ、ああ……。実はな、数年前旅に出たのは、ハーネイトさんのような解決屋になりたくてそれで旅を始めたんだ」


「私のような、か。仕事を始めてから、同じようなことをする人が増えてきた。バイザーカーニアにも、そんな奴ばかりきていた。そしてそれを目指す者もまた現れたか。懐かしいな、あいつらのことも思い出す」


 ハーネイトは本格的に解決屋の仕事を始めてしばらくして、4人の男と1人の少女に会い親交を深めた。そのことを思い出し、少し目を瞑る。旅を始めて、最初に友と呼べる存在に出会った彼らは今頃どこで何をしているのだろう。近いうちに会いたいと彼は考えていた。


 その5人とハーネイトを合わせ、原初の6人と呼ばれていたその友たちは、それぞれ自身の夢を追いかけ続け、夢をつかんだものばかりであった。


「俺、ルズイークさんの部隊に配属されてから、隊長に気に入られて可愛がられました。そのなかで貴方の話を嬉しそうに、そして寂しそうに話すのです。ガムランの戦いやエルブ海戦の話から、王とハーネイトさんの関係についてまでを」


 リシェルはニコニコしながら、ルズイークから聞いたハーネイトの活躍について、口を止めずに話し続けた。


 ハーネイトが本格的に活躍するまでは、この星に存在する国の多くが戦乱の真っただ中にあり、戦乱時代とも呼ばれていた。それに実質終止符を打ったのも、若きこの男の活躍であるという。


 もっとも、戦乱が終わったのはある脅威。そう、紅儡という血の怪物とそれを生み出す謎の存在によるものでもあったというのも補足しておくが、この脅威も打ち破りハーネイトは英雄として崇められている。


「ルズイークさんはハーネイトさんを気に入っているようですね? 」


「そうですね。ハーネイトさんがフリーになってからも、解決屋として活躍している話もよく聞きました。あの鬼のルズイークが、笑いながら貴方のことを楽しそうに話すのを見て、どんな人なのだろうか気になりました。その中でハーネイトさんの生き方に惹かれていきました。そんな偉大な人が今傍にいて共に活動する。本当に、言葉が出ないほど嬉しいのです」


 リシェルは目を閉じ、今までの想いを馳せながらハーネイトに今日起きたことについて、人生の中で一番感動したと伝える。


「そこまで、とはな。リシェル、解決屋としても活躍したいなら、私と共に活動を続ければよい。何が必要で何が足りないかが理解できるだろう。この先の戦いも含め、きっと貴重な経験になる」


 そう優しくリシェルに話しかけ、ハーネイトは右手をリシェルに差し出す。


「何より、遠距離戦に対応できる仲間が欲しかったからな。どうだ?リシェル? 」


「はい。これから戦わなければならない敵がいます。兄貴と姉貴のことも心配です。そしてハーネイトさんと共に戦いながら修行したいです。どうか、お願いします。ハーネイト師匠! 」


 リシェルは、ハーネイトが差し出した右手に、自身の右手をガシっと重ね、握手をしたあと、ハーネイトに深く礼をする。


「ああ。了承した。常に精進だ、リシェル」


「はい! ご指導ご鞭撻、よろしくお願いします」


「リシェルさん。本当によかったですね」


「未来の世代が育つ、か。良いことですな。ハーネイト様、そういえば戦いとは? 」


 リュジスがお茶を入れながら二人のやり取りを見て微笑ましく思いながらも、気になったことを尋ねる。


「いや、ここ最近の異変について調査などを行っているのですがね。何か気になることでもありますか? 」


「いやな、若い人たちがこうして各地を回っているのはあまり見たことがなくてのう、気になったのだ。先ほどの件も含め、妙な胸騒ぎがしますぞ」


 彼の言葉に返すように、ハーネイトはリュジスに、事の経緯を詳しく話す。DGが再びこの地に降り立ったこと、そして魔獣の襲撃件数が増えたのもそれに関連があることを説明する。


「ということで、私たちは仲間を集めて今動いているのです。機士国の解放のためにです」


「そのような事態になっていたとは。あれは噂ではなかったのだな。ハーネイト様、機士国を取り戻すために、乗っ取った奴等を倒す、ということですな?DGか、まだ存在していたとはな」


「そうです。早く奴等の蛮行を止めないといけないのです」


 ハーネイトの静かに、しかし力のこもった声を聴きリュジスは少しだけ考え込んだ。そして口を開けてこういう。


「そうか、その話を聞いて、私らも無関係ではないと感じた。もしまたこの村を訪れるのであれば支援を致すとしよう。実は私の親族が、機士国の近くで暮らしているのです。今は無事のようですが、この先どうなるかわかりませぬ。支援くらいしかできないのが歯痒いのですが、できることをこの街を上げて行いたい」


「ありがたい話ですね。必要に応じて、物資の面などで協力をお願いしてもよろしいですか?」


「うむ。明日にでも街の住民に伝達しよう。さて、今日はこのくらいにして、あとはゆっくり疲れを取ってくださいな。では失礼する。良い眠りを」


リュジスはドアを開け、部屋を静かに出た。そしてリシェルたちはベッドに入りどっと疲れが押し寄せすぐに横になった。


「では、そろそろ寝ましょう」


「ああ。今日もお疲れさまだ。おやすみなさい」


 そして今日も、ハーネイトは聞こえてくる声に耳をふさぎながら、寝ようとしていたのであった。


 その不気味な声がはっきりと聞こえてくる。しかもそれは女性の声であった。そう、彼の中にもある強大な存在が隠れており、それが彼に問いかけていたのであった。



 その頃、ボルナレロはフラフムに送った魔獣の群れを確認しに町の近くまで来ていた。小型の機械兵から先ほどの戦闘映像を転送し確認していたボルナレロは、DGの2人が自爆するかのように大爆発したのを見てその結末にしばらく絶句していた。


「ハイディーンの研究、やはり危険ではないか。吐き気がする。戦闘員を変化させ、挙句の果てに爆発させて周囲を巻き込む。外道が。はあ、ふうむ、これからどうするか」


 街はずれから街の中の様子を見ていたボルナレロのもとに、1人の男が向かってきた。


「ほう、研究者さん。調子の方はどうだ? 」


「ああ、フューゲルか。うまくいかないな。魔獣を放ってもある連中がことごとく倒してしまうものでね」


 先日リンドブルクの近くにいたフューゲルが、ボルナレロの様子を見に来ていた。そしてフューゲルにそう言葉を返すと、双眼鏡でハーネイトたちがどこにいるかを探っていた。


「どうした、探し物か? 」


「あ、ああ。まあな。それよりもお主は何をしている」


「俺も、探している奴がいる。あそこの建物の中にな。まあいつでも会えるからいいとしてそれよりも、北大陸で大きな動きがあるようだ。仕事があるのでな、しばらく会えない。研究の方、うまくいくといいな、研究者ボルナレロ」


 フューゲルは街の中にある建物の一つを指さす。それをボルナレロが確認すると、そこにはハーネイトがいた。彼はそう言いながら、急ぎの用があるという。


「ああ、ありがとう。そうか、気を付けていくのだぞ。さて、もう一仕事するか」


「ハーネイトのこと、よろしく頼んだぞ。あいつの友人、なのだろう? 」


「なに?それはどういうことだ、なぜ彼のことを……知っている? 」


 気になったボルナレロがフューゲルに話しかけようとしたが、すでに彼の姿はなかった。仕方なくボルナレロはフラフムの町内に移動し、忍び込んだ。慎重に、そして音を極力立てず侵入に成功した。


「確か、フューゲルの話によるとこの宿だったはずだな。しかしさっきの言葉、引っかかるな」


 彼は忍び足で窓際に近づくと、若い男3人が寝ている部屋を見つけ、気づかれないようにそっと覗く。


「ハーネイト。やっと会えたな。しかし、様子がおかしいな」


 心の中でボルナレロはそう思いながら彼の様子を見ていた。そのころハーネイトはその時、心の中から聞こえる声に悩まされ眠りを妨げられていた。


 彼は夢の中で広大な空間の中に立っていた。透き通る紫や水色で構成された、奥行きが不明瞭な空間である。例えるならば電脳空間と呼べるその空間の中に、あの幻聴と言える声が響き渡るのであった。


「う、うぅ、また声がする…。またここか。何なんだこれは」


「力、チカラヲ求メヨ。汝ハ我ラト共ニアリ」


「ぐっ、じゃあその力とは何だ」


「秘メタル、貴様ノ中ニアル7ノチカラダ。汝ハ世界ノ理、在リ方ヲ変エル者、龍の意思ト因子宿す者也、努々忘レルナ。……そなたの手に、全てガ委ネラレテオル


「世界の在り方を変える、だと?それにまた龍……まさか、あの力と関係があるのか?答えろ!答えるんだ! 」


 しかし、謎の声はそれ以降響き渡ることなく、ハーネイトは夢の世界から引き戻され、目を覚まし、起き上がる。


「はあ、はあ。あの空間は一体……。それと、世界を変える力か。はっ、訳が分からないな。しかし、ますます幻聴がひどくなっていく――」


 ハーネイトは頭に手を当てて少し呻いたあと、どこかすぐれない、嫌な気分を良くするために部屋の窓を開けようとする。ボルナレロはそれに気づき一旦逃げようとするが、その時2人はふと目を合わせたのであった。

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