表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第二章 天神界の秘密と古代人&武器商人の不気味な盟約
199/209

第195話 ハーネイトVSDG幹部・コティナティクス



「2人がDGの戦闘員に捕まっているようだな」


「早く、助けに行かないと」


「ああ。私が前に出る。指で合図を出したら全員隠れつつ攻撃を行ってくれ」


「まあええや、分かったで」


 ハーネイトはヴァンたちに対し手の合図でDGの戦闘員たちを倒すか無力化してくれと指示を出すと咄嗟に茂みから姿を現す。だが赤髪の男は手にしていた光剣でミコーンとイグザルドを切り捨てようとしていたのであった。


「知らないなら価値はない。この場で……」


「させるか!」


 しかしその攻撃はハーネイトにより阻まれる。剣を愛刀で受け止め鍔迫り合いながら双方にらみ合う。


「貴様、何者だ……何と、既に禁断の存在が生まれていたとはな」


「どういうことだ」


「一旦、双方に剣を引こう。思っていた以上のことで我も戸惑っておるが……ほう」


 赤髪の男は険しい表情でハーネイトの顔を見つめつつ、戸惑いを隠しきれずにいた。しかしそれはハーネイトも同じであり彼の提案に思わず乗ってしまい双方距離を取り、一旦剣を収めたのであった。


「いいだろう、分かった。だが2人は関係ない」


「好きにすればいい。用事があるのは貴様だ」


 赤髪の男はハーネイトの言葉に対し、ミコーンとイグザルドはもう好きにすればいいと伝え解放してやると2人を拘束していた電子鍵を解除しハーネイトはその隙に2人を安全な場所に逃すことができた。


 すると静かに赤髪の男はハーネイトにある大事な話を切り出したのであった。


それはハーネイトも知りたがっていた、ソラから言われていた離反したヴィダールに関する話でありその全てを一言一句彼は聞いていたのであった。


「我はかつて、あるものと志を共にしていた。しかし、あの恐ろしい龍の力をそのまま使い戦闘力に変える存在の開発を知り、結局離反することになった。大方、何も知らずに他のヴィダールを倒し力を食らいつくせと言われているだろう」


「なっ、もしかしてソラ……のことを?」


「そうだ、ソラがあの技術を生み出さなければ今頃こんなことしなくても済んだ!」


 それから男は悔しそうに、今までの話をハーネイトに伝える。


 彼は古来より生きるヴィダールの一族であり、ソラから離反して逃げてきた勢力の一員だという。


 何故そうしたのか、それはソラが倒すべき龍の力を使って龍を封印する兵器を作り出そうとしたことにあり、その計画により生み出されたPという存在が暴走した際に身に余るほどの恐怖を感じたこと、それを静めるために2柱のヴィダールが命を賭して封印したことも含めそういう存在を平気で作ろうとするソラの行動が理解できなかったと震えながら話を続ける。


「ソラ、か。彼女は危険だ。恐らくお前の体を乗っ取り世界の土台と化している龍をすべて倒し、今在る世界を破壊するだろう。お前は今のままでは、その計画に利用される。それを阻止するためにDGは動いてきた。だが組織の巨大化でそれもままならなくなったがな」


「巨大化?」


「お前のような存在を監視するために多くの勢力を取り込み利用していたが、そのせいでDGという存在は徐々に本来あるべき姿から変貌し多くの命を奪う存在になっていた」


 それからDGの成り立ちについても話をし、何故このアクシミデロに来たのかについて龍の力を使う存在を見つけ抹殺、あるいは捕獲することにあり第一次DG戦争は失敗したため準備をしてもう一度来たという。


「もしかして、誰がその龍の力を行使する存在か分からず怖かったから?」


「それもあるが、それは見抜ける。しかし認識の違いというべきか、いや、利益に走って私たちの行動理念を傘に悪事を働く者も増えていたというべきか、それを止めようにも、止められないところまで来ていたのは無念だがな」


「どんなに初めは崇高な信念を掲げていても、長い間を経て変わることもあります」


「DGもその定めに抗えなかった、のかもしれんな」


 男がなぜハーネイトを見て狼狽したのか、それは探していたその龍の力を使う存在を目にしたからであり、どれほどの脅威になるのか分からず冷や汗をかくほどであったという。


「しかし、そういうことだったのか。私が……私のような存在がいるから、皆不幸せになるの?多くの人が、生物が理不尽に傷つかないといけなかったの?何でだよ!私、生まれてこない方が良かったの……?」


 その話を聞いたハーネイトは、どんどん元気がなくなり青ざめる。それを見た男は本来始末するべきか捕まえるべき相手なはずなのに無意識に彼に近寄ると抱きしめたのであった。


 それは、このヴィダールも内心他の仲間の言うことに疑問を抱き、しかも力に怯えているような感じを見せる若きヴィダールを見て思うところがあったからであった。 


「……それはお前のこれからの振る舞い次第だ。不幸せにするか、それとも幸福にさせるかは力の扱い方で変わる。そんな顔をするな。確かにお前は今のままでは脅威になるが、力の全てを支配し運用できるならば我らの不安も杞憂に終わる。それを切に願うし、多くの離反した者もそう思うだろう」


 男は静かにそう伝え、ハーネイトをなだめようとする。本当は龍の力を凄く強く彼から感じ怖いはずなのに、彼からはソラのような慇懃無礼で偉そうな態度を感じず辛い中でも懸命に生き抜いてきたことが伝わってくる。


 それにある期待を抱き、彼は彼なりに言葉を贈ったのであった。彼はソラが生み出した存在であるが彼女とは違う。その気質に賭けようと男はそう考えたのであった。


「お前は、今のその心を忘れなければその内なる龍の力を統べることができるはずだ。強く心を持つんだ」


「は、はい……それは、はい。力をどう使うか、ですよね。あの、名前を聞きたいのですが」


「我が名か。いいだろう。コティナティクス。ヴィダールの一員だった者だ。DGを生み出した、ソラから離反したヴィダールの1柱だ。それとそちらも名乗れ。最後の計画、それにより生み出された者よ」


「ハーネイト・スキャルバドゥ・フォルカロッセ、です」


「ハーネイト、それが最後の兵器の名前、というわけか」


「最後の、兵器?」


 男は自身をコティナティクスと名乗り、ハーネイトも名乗りに応じるとそれを聞いたコティナティクスは思わずそう呟く。


「何だ、知らないのか?」


「自分のことだって、知らないことばかりでそれを知るために旅をしているのですが」


「そうか。では質問だ。既にソラ・ヴィシャナティクスに会っているか?」


「割と最近、会いました。正直恐ろしいと全身で感じる、とんでもない存在でした」


 質問を聞いたコティナティクスは、静かに頷くと覚悟を決め コティナティクスは背中に背負っていた大剣を手にし構えると、力を改めて見てみたいと決闘を申し出る。


「会って、何を言われた」


「裏切者であるヴィダールを倒せと、でも、そんなことしたくない。あの幽霊龍と戦ったから分かる、皆手を取り合ってあれを倒すために、戦うべきだって」


「そうか、DGを、離反したヴィダールを抹殺するためにここにいるわけでは決してないのだな?」


「勿論です。むしろ、もっといろいろ教えて頂きたいですし、ドラギスを探すのを手伝ってほしいのです」


「そうか。それを他のヴィダールも知ればDGは存在理由を失うかもしれん。皆ソラから離反したことについて負い目も大なり小なりあるし何をされるか分からないと怯えてもいる。しかしそれを聞いてほっとしたぞ。いい目をしているな、若きヴィダール」


「そう、ですよね。それと古文書の回収を代わりにして来いと言われ、この遺跡に最後のがあると聞いて来ました」


「そうだったのか。他のヴィダールから聞いたがそれを消却しろという命令も出ていた。何でもそれを知ることで大変なことが起きるという話を聞いていたが、我はそうではないと思っていてな。それと他の遺跡でも同様の物があることと回収している邪魔をしている者がいるという話も聞いていたが、お前だったのだな」


「はい。しかし1つ気になることがあるのです」


 ハーネイトはあくまでコティナティクスに対し敵意はないと意思表示をしたうえで、何故ここに来たのかも話をし彼も来た理由を話す。その中でハーネイトは古文書に書いてあったことからある点が気になりそれを確認しようとしていた。


「気になることか。それは我もだよ。だが、果たして、龍の力を制御できているか試させてもらおう。済まないが、それだけがどうしても気になる。刃を交えながら話すか」


「っ、やる気ですか」


「ああ。それで力を見せてみるがいい。あの計画が間違いかどうか、この目で確かめる!」


 それに驚くもすぐに愛刀を手にし切っ先をコティナティクスに対し構え真剣な表情で双方睨みあう。


「計画って、何なんですか!」


「我を納得させたならば、教えられる範囲で教えてやろう。さあ、来い!」


 コティナティクスは先手を取り、ハーネイトに対し地面を破壊するほどの飛ぶ斬撃を放つ。それを回避するもハーネイトは飛び上がったコティナティクスの剣による叩きつけ攻撃を受けるが龍の力を引き出しこれを防ぐ。


龍鱗鎧エカイーユ!」


「っ、ならこれはどうだ!」


龍光結界ヴァリアル&龍翼ドラグレゼル!」


 ハーネイトは自身の周囲に黄色の光る結界を展開しつつそれを足場にして縦横無尽に龍翼を展開しながら飛び回りコティナティクスを翻弄して死角からの一撃をぶつける。


「ほう、龍の翼に鱗、結界か、がはっ、鋭い一撃だな」


「だけど、まだこれだけではありません!


「ああ、見せて見ろ!力を制御できているか見てやる!」


「……戦形変化フォームアウト!」


 ハーネイトはコティナティクスに対し、きちんと制御できている姿を見せることが彼等の不安を取り除く大切なことだと信じ、地面に印を足で刻むと風と緑を司る霊龍の力を身にまとい、緑色の嵐に包まれ変身した姿を披露する。


緑嵐竜帝ワイヴァス・ヴェルトゥーロス) !!!」


「これが、ソラの言っていた龍の力による龍の封印、それを行うための力か」


「せめて一撃で、行きます!」


「さあ、来い!若きヴィダールよ!」


 ハーネイトは結界を利用しつつコティナティクスの周囲に大嵐をいくつも発生させ動きを封じ、手にしていた錫杖槍に嵐を纏わせて彼に対し突進攻撃を行う。


 それを防御力場で防ごうとしたコティナティクスであったが受け止めきれず、強烈な一撃が胸に直撃し大きく吹き飛ばされ、結界に体を打ち付けるとその場に力なく倒れたのであった。


 ハーネイトは直撃を受けて地面に倒れたコティナティクスのそばに変身を解いてから駆け寄る。すると苦しそうに彼はハーネイトの顔を見ながら微笑みつつ言葉を紡ぐ。


「確かに、今のところは制御できている。それに、離反した私たちをも気遣おうとするとは、な。てっきりソラに洗脳教育されているかと思っていたがそうではない。どちらかと言えば、慕っていたソラの両親に似たものを感じる。Pを封印した2人に。その心の在り方があり続けるならば、私らの不安も杞憂に終わる、だろう」


 コティナティクスは出会ってからのやり取りを通じ、ハーネイトに慕っていた存在の面影を強く感じ、懐かしい気分になったと思ったことを口に出し、その在り方を護れるならばきっとこの先も力を制御し、上手く使うことができるだろうとそう伝える。


「コティナティクスさん、私はどうすれば」


「龍の力を真に制御するには、今のままではだめかもしれん。だが、優しさと強さを最後まで忘れず、誰かのために戦い続けると心に留めているならばこの先どんな試練も乗り越えられるはずだ」


「そうですか。ありがとう、ございます」


 そのうえでまだ未熟なところも多く、終わらない戦いに身を投じる覚悟を説きつつも強さの中にある優しさに触れ、自分の為だけでなく誰かを想い戦うことが大切だと助言したのであった。


「他にも離反したヴィダールがDGとしてここに訪れている。だが、お前のありのままをぶつけてみるがいい。そうすれば方針を変えるかもしれん」


「わ、分かりました。あの、その前に、動かないでくださいね」


 コティナティクスは、ハーネイトに他に仲間のヴィダールがおり彼等を止めるべきだと伝えると、それを承諾したハーネイトは魔法治療で彼の体を治療して元に戻したのであった。


「敵になるかもしれない私を治すとは、優しいが、それが仇にならないことを祈っている。それと、龍の力を使い龍を封印する計画、それによりお前は生み出された。その全てを知るには恐らくソラに会った際に言われたことを成し遂げるしかないだろう。何を考えているか分からんがな」


「色々教えてくださり、ありがとうございます」


「フッ、既に龍の力を宿す存在がいることについてどうなるかと思っていたが、どんな困難の中でも生き抜きソラの操り人形にならずに今を生きていて安心した。どうか、この先の旅路に幸運を祈っている」


「ええ、ありがとうございます。コティナティクスさん」


「他のヴィダールにも、力を見せてやれ。また、どこかで会おう。若きヴィダールの龍葬者、ハーネイトよ」


 そうしてコティナティクスは遺跡を後にし、姿を消したのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ