第191話 ロキナ・ウル遺跡と懐かしい戦友との再会・2
「遺跡の中から声が聞こえました」
「リクロウの声だな」
「だけじゃないわ、ガイナス様も無事のようですが何かに追われているみたいですわね」
「相棒、急ごう。なんかまずい感じがするで」
その直後に石や金属でできた砂漠の中に佇んでいるロキナ・ウル遺跡の地下に繋がる入口の奥から声と人影が近づいてくる。どうも追われているようでハーネイトとヴァンはすぐに移動し2人の姿を視認した。
「前よりも手ごわすぎる!あの時戦ったのよりも何もかもが強化されている感じだ」
「どうにか抜け出したが、って何と!」
「創金剣術・剣葬!」
「雑魚は全部醸してやる!戦闘微術・菌蝕!」
血の魔人が生み出す怪物の群れに追われていたリクロウとガイナスは遺跡より脱出し、それを見たハーネイトとヴァンの放った恐ろしい威力を誇る攻撃により怪物たちが倒れたことで難を逃れることに成功し、ロウレラと合流することができたのであった。
「おおう、怪物たちが一気に消えたな」
「す、凄い、ってこの声、まさか!」
空からの攻撃がうまく決まり、ミレイシアたちの所に戻ったハーネイトはすぐにリクロウと目が会い彼に抱き着かれ驚くも元気そうにしているリクロウの姿に思わず微笑んでいたのであった。
「お久しぶりですハーネイトさん!」
「リクロウか、久しぶりだな」
「はい、おかげさまで」
「ギルドのみんなは元気にしているか?」
「いつも通りですよ」
ハーネイトは抱き着くリクロウの頭を撫でながら昔あったときとあまり変わらないその人懐っこさに安堵しつつ他のギルド員についても大丈夫かと尋ねる。
「ガハハ、今日はついておるな。久しいな、魔導王ハーネイト!」
「お久しぶりですガイナスさん」
すると今度はガイナスが近寄り笑いながらハーネイトの頭をわしゃわしゃと撫でまわしつつ立派になったもんだとまるで父親のように接しつついつの間にか各地で魔法の英雄王として崇められるほどになった彼の功績を称えていた。
そのあと遺跡の中で何があったのかをハーネイトは2人から事情聴取する。どうも遺跡の内部を調査していたところ外部から血の怪物が入り込み、遺跡内で逃げながら戦っていたがどうにか出てこれたという。
「それで、その話は本当か?」
「はい、DGと名乗る組織の人たちはあの血の魔人に内部から操られている可能性が高いです」
「確かにあの魔女もそうだったが、そうなると益々面倒なことになるな」
その際にDGの幹部の一人と交戦しこれを撃破、その際に得た情報などからDGの中には血の魔人の操り人形こと紅儡になっているものが少なからず存在するのではないかという話になり、以前の事件も含め魔人の力に手を出したかそれとも最初から体を利用されているのかもしれないと話をまとめる。
「んで、そこの青髪の兄ちゃんと金髪の女の子、それに茶髪の銃を背負った少年は、ハーネイトの仲間か?」
「ええ、皆さん頼もしい仲間です」
「そうか、ぜひ名前を聞かせて欲しい。ああ、俺はマースメリアにて冒険ギルドのリーダーをしているガイナス・アブラギッテン・ハルゲルトだ」
「俺はヴァルドラウンだ。まあよろしく頼むでおっさん」
「エレクトリール・フリッド・フラッガです!ハーネイトさんに助けられ、共に戦ってきました」
「機士国出身のリシェルっす。まさかギルド長のガイナスさんとこうして会えるだなんて、サイン欲しいっす」
するとガイナスは見慣れない数名のハーネイトと共にいる仲間の方に歩み寄り、名前を尋ねる。各自自己紹介をし、ガイナスも名前を明かし自己紹介しながらいい仲間が出来たなと嬉しそうにしていたのであった。
「がはは、いいぞ。後でな。ふうむ、他にも知らない顔ぶれがいるようだが後でだ。そうだ、リクロウ、あれを」
「はい!それとサインさんから古文書について捜索するようにといわれ、確保しました!」
そんな中リクロウはガイナスの指示で懐に入れていたハーネイトやサインから依頼されていた古文書の回収は無事に終えたことを伝えそれを手渡しし、ハーネイトから感謝され思わず顔がにやけていた。
「おお、でかしたなリクロウ」
「はい!ハーネイトさんのお役に立ててうれしい限りです」
「わしもお前らと会えてうれしいぞ。だが、少しやつれておるな」
「大丈夫、ですよガイナスさん」
そんな中ガイナスはハーネイトの表情にどこか影を感じ、何かあったのかと問うも気丈に振る舞おうとする彼に対し正直につらいことを打ち明けるのも大切だと説く。
血徒再葬機関という血災に対応しそれに関連する事件を追う組織の代表に幼くしてならざるを得なかったハーネイトの気苦労は誰にも測れない、それを分かっているうえでガイナスは彼から聞き出そうとする。
「あの、私自身の謎について、少しずつですが分かってきて」
「謎か、ずっと前からそれを知るために旅をしていたのは聞いていたが、っと済まない。ギルド員から連絡がきたのでな、失礼。何?街の方で巨大な幽霊が暴れているだと?」
「ガイナスさん、一体何が」
「カルナヴァンからの連絡で、マースメリアの東門付近にて謎の紅い幽霊みたいな龍が現れて暴れていると報告が来たのだ」
ガイナスは通信機器越しにギルド員の1人であるカルナヴァンからマースメリアにある4つの門のうち、東門にて幽霊のような巨大な龍が突然現れ、光のブレスや踏みつけ攻撃で門や周囲にある監視塔などを破壊しようとしているという連絡を聞く。
それを聞いていたエレクトリールはマースメリアの方を見ると指さして確かに赤くて巨大な龍が見えると言う。
「もしかして、あれじゃないですか?」
「ここから見えるとは」
「急ぐぞ皆!」
「ええ、いきましょう!」
その場にいた全員がそれを目撃するな否やベイリックスに東条氏、シャムロックも龍を見ており全速力でマースメリアまで戻ると、東門の近くで暴れている霊龍を止めるため全員で戦いを挑んだのであった。