第189話 ガストリア遺跡:ハーネイトVS血魔人イクテロへモウス
眼が眩みそうなほどに広がる赤い海のような光景、それ見たハーネイトはすぐにそれを引き起こした犯人の名を口にし、血海と呼ぶそれに近づけば引きずり込まれ、それは底なし沼と同質であると告げ注意喚起したのであった。
既に遺跡の一部もそれにより沈みかけており、ハーネイトは規模などを分析し昨日の夜に血海が発生したのではないかと分析する。
「な、な、何なんですかあれは?」
「エレクトリール、君にはまだ、私の昔話をしていなかったな」
「はい、聞いてませんが」
「ある悲劇と争いを起こした連中が、あれを生み出している。行くぞ! 」
「おうよ!」
ハーネイトは顔が引きつって震えているエレクトリールに小声で昔の話を少しして、対処法を伝えた上で今の自分たちならば血の怪物や魔人が生み出した血の海でも掃除できると大きく声を出し味方を鼓舞してから、怒りの形相で藍染叢雲を右手に持ち頭上に掲げると振り下ろし、いつになく表情をむき出しにし構える。
「血徒め……私の怒りを買って、無事で済むと思うなぁ!」
「落ち着け相棒、確かに気持ちはすげー分かるがな」
「いつもより、ハーネイトさんが怒っている……」
「血徒、私の家族の、仇!!!」
「どれだけの命を喰らえば、満足するのだお前らは」
「ミレイシアとミロクもやる気だ」
ハーネイトは全力でカタナを振り下ろし、それによる赤い衝撃が血海に触れると激しい閃光を放ち地面を汚染していた血海が消滅し、先に進めるようになる。
それに続いてミロクは刀から怪物の影を召喚し血海にぶつけこれを消し去り、ミレイシアは魔導人形を3体呼び出すと手にしていた銃で車線上に出現していた血の怪物もろとも血海をまとめて消し飛ばし道を作る。
「まずは遺跡までの道を作るんだ」
「了解ですマスター!」
「シャムロックさんたちはベイリックスの方を護ってもらう関係で支援が難しいですよね。えーと、こうですか?」
「いいぞ、その調子だ」
「はい!では任せてください!」
エレクトリールは手にした槍を頭上で回転させると穂先を天に掲げ、強烈な紫色の落雷を街全体に降り注がせ血海をどんどん分解し消滅させる。それによりできた安全地帯を利用し更に街の内部に進むハーネイトたちは持てる力を出し20分ほどで存在していた血海の約9割を除去することが出来たのであった。
「とにかく、制圧できたな」
「ミロク、他の場所でも被害が出ていないか確認を頼めるか?」
「御意」
血海の制圧がほぼ終わった後街中をもう一度駆け回り確認し、ほかに敵性勢力がいないかを確認した後ハーネイトたちはガストリア遺跡の入口まで急いで走る。
するとそこにはまがまがしい雰囲気を漂わせている老人の姿があった。赤黒い血まみれの服と防具、髭の長く浅黒い肌が印象的なしわだらけの老人は剣を構え、この先にはいかせないと言わんばかりに威圧していたのであった。
「我らの計画を邪魔する者は、この地にて朽ちるがよい!血の魔人であるこのイクテロへモウスが相手になろうぞ」
「っ、しまった」
「いっ、不覚を取りましたわね」
すると叫びながら魔人は剣を地面に突き刺し、血の槍をハーネイトたちの足元から召喚したのであった。
「大丈夫かミロク、ミレイシア」
「大丈夫だ、じゃが油断するでない」
ミレイシアとミロクはかすり傷を負うが、基本的に血の魔人の攻撃は決して受けてはいけない。それは攻撃に付着していた血が体を侵食し、乗っ取られるかもしれないからである。
だがハーネイトならばその傷を受けた人たちを完全に治療し、紅儡化を防ぐことができる。実はミロクとミレイシアも血の呪いを全く受けないのだが念のために彼は2人を治療した。
それから一呼吸をいて、力を出し惜しみしている場合ではないと意識を集中させ、ある力を解放することにしたのであった。
「古文書を読んでいて、オーダインたちの話も聞いてまだ力が別にあることは分かっている。だったら!」
「何をするつもりだ、っ、な!」
「戦形変化・黄雷霊帝 !」
ハーネイトは足で何やら陣を描き、その中央に立つと両腕を天に掲げクロスさせる。すると陣の中に凄まじい電撃がほとばしり、その中から黄色の電撃を纏う鎧を身につけた戦士が現れたのであった。
「一気に勝負をつける!電雷閃嵐!」
「がはっ、何という、力だ」
ハーネイトの放つその電撃の嵐は、血の魔人であるイクテロへモウスの肉体に凄まじいダメージを与え、攻撃が終わると同時にその場にいた魔人は膝をついてふらふらしていたのであった。
「っ、そんなばかな、このわしが……だが、もう賽は投げられた。既に龍の力を宿すものが生まれておる以上、もうわし等では止められん。あの龍を、止めようにも止められない」
「どういうことだ」
「お前も、お前らも踊らされているにすぎん。我らを生み出した者にな。だが、フハハ……よもやこんな場所にいたとはな。つまり1つの希望も見出した、そこのお前ら、同じ魔人だろう」
「ああ、確かにな」
「U=ONEの力を、龍に憑りつかれた魔人たちに施せ、そうすれば計画の全てを壊せるはずだ。わしはこの場を去るが、Dの後継者を探し出せ、あるいは力を引き出してやれ。わしが言えるのはそれまでだ」
イクテロへモウスはヴァンとエヴィラ、ハーネイトの方を見ながら辛そうに、あることを伝える。それは彼等がある者の手のひらで踊らされているかもしれないこと、1つの希望をハーネイトたちに見出しそれがこの先起こるであろう事件を止めるカギになるだろうと伝えてからその場から瞬時に消えたのであった。
「どういうこと、なのだ?」
「意味深な言葉だが、まずは先に遺跡の中にある古文書を回収した方がよいだろう。DGの者が来ていないのは幸いだった」
「ですね、では中に入りましょう!」
その後ハーネイトたちは遺跡の中に入り、地下の奥深くにある一室にて古文書を回収することに成功し脱出、ベイリックスまで戻ると早速出発準備の指示をハーネイトは出したのであった。
「とりあえず第2の遺物を回収できた。これも解析してみよう。では、機士国まで移動してそこで休息をとることにします」
「分かったっす師匠」
「はあ、緊張しましたあ」
「南雲たちも別の遺跡の攻略に行っているんだっけ?」
「そうだな。あの方向音痴は大丈夫なのか?」
「だから忍連合が総出で動いているのだリシェル。他にも、バイザーカーニアの方でも遺跡回収を行っているという。明日には連絡が入るだろう」
実は遺跡の攻略、調査に関しては別にハーネイトは依頼を出しており、南雲たちが属する忍専門学校ことシノセンの若き戦忍たちが古文書ではなく転送装置を強化するための機材を回収する役を任されているという。
また魔法秘密結社・バイザーカーニアの方は魔導機械による潜水艇を使い海中遺跡の方にて調査を行い、もうすぐ古文書の回収が終わりそうだという連絡が届いているという。
「それなら、思ったより早く終わりそうですが遺物の解析はどうなんですかね」
「あまり進んでいないな。だが、新たな物を開発できそうな感じがする」
各方面の報告を聞きミロクたちは頷き、この調子でDGよりも先に回収し破壊されないようにしないといけないと言い、リシェルとエレクトリールは解析などについてどこまで進んでいるかを確認する。
するとハーネイトはある話を切り出し、今後の戦いにおいてあらゆる面で大きな戦力となり、それだけでなく日常生活などにも大きく発展をもたらす装置の開発が出来そうだとある図面をベイリックスの中にある机の上に広げ見るように促す。
「無限に動く動力機関?」
「でもそれって無理がある話では」
「周囲の霊量子を取り込み、放出し続ける装置の情報を得た。問題は素材の方だがどうにかして見せよう。上手くいけば君たちの武器強化にも使えそうだ」
ハーネイトはミスティルトシティにあるホテル&事務所がある施設の地下にて遺跡から回収したデータを分析していた。
その中には霊量子を利用したエネルギー機関の設計図があり、素材を揃えるのが骨が折れそうなものの、それが出来れば今まで開発した魔導機械に使用している魔導機関を遥かに上回る性能を誇る物が出来そうだとニコニコしていた。
その図面には、霊量機関という名前が記載されていた。ミロクやミレイシアはそれを見て驚くも、ロイたちと行動を共にしていたのが意外な形で役に立っていると実感し研究者、開発者としても才があるハーネイトに対し流石だと評価していたのであった。
「いいっすねそれ。楽しみにしてます」
「どんな風に使えるか考えましょうね」
車内で話が盛り上がるなか、道中で血の怪物の集団に襲われるがこれをハーネイトが戦形変化で一気に蹴散らし、それから数時間後、ハーネイトたちは次の遺跡についての話をしていたのであった。