第185話 残りの元DG集結と作戦準備
「来たわよー緑髪のお兄様?」
「意外と質素だなこの部屋は。金持ちならバーンと贅沢してもなあ」
「まあまあ、人それぞれですからねウッシュガロー」
「だけどよウォークロード。こういうのは一番上の奴が贅沢しねえと下が委縮するんだよ」
「スプリィーテスの輩に案内されたが、ほう……若いがなかなかいい面構えをしておるなハハハハ」
「しかし、3人はともかくわしとドウラは初めてだ。どうしたものか」
「おじいさん、よりによってまじか……仕方ない。全員の話を聞きましょう」
ハーネイトは彼らを見ながら、見たことがない人についてどうしようかと思いながらも、おそらくスプリィーテスが呼んできた人だろうと思い、全員に対し室内のソファーに座るように指示をする。
それから全員座った後、一呼吸おいてハーネイトはとりあえず名前を知っている者から自己紹介などをしてもらうように指示を出した。
「まずエスメラルダから、一応もう一度自己紹介してもらいましょうか」
まず最初に、緑髪の少女が自己紹介をする。彼女はエスメラルダ・ミシェル・サイシアといい、霊量子を操り超常現象を引き起こすサイキッカー的な能力を持つ強力な霊量士である。彼女は過去の生い立ちとDG加入の経緯について話をする。
「私のいた国も、DGに襲われもうめちゃくちゃだったわ。それに乗じて反乱勢力も大暴れで、私の親と兄、妹はそのせいで行方が知れないのよね。たぶん……うん。逃げているときにあのおじさまに助けられ、連れてこられたのがDGだったのよ」
彼女の話を一通り聞いたハーネイトは、DGのような組織をこれ以上好きにさせる者かと思い、握る拳の力を強くする。次にウッシュガロー・バスティアンガーという少々やさぐれた男が名乗りを上げる。
「俺も実はヴァンと同じ生まれの星でな。自然豊かで、のどかなところだったんだがな。星にある資源を狙いに奴らは襲ってきた。戦うすべをあまり持たない俺たちは一方的にやられた。俺もその時に重傷を負い死を待つだけだったが、そこにあのスプリィーテスという爺とミタカが訪れてな、俺を助けてくれたのさ」
このウッシュガローと、既に仲間に加わっているヴァンは同じ星の生まれであることが分かり、ハーネイトは驚いていた。その中で、ヴァルターたちもそうだがスプリィーテスという男が積極的に彼らを助け仲間にしていることを理解し自分ももっとそうでありたいと思うのであった。
「ええ、僕は元々異世界の住民です。どんな攻撃も効かない吸血鬼みたいなのに襲われ、絶体絶命の場面で僕は異世界に飛ばされここに来たようで、右も左もわからない中言葉がどうにか通じそうな人に声をかけたのですが、その人がスプリィーテスさんでした」
次にミタカと名乗る若い男が一礼して自己紹介をする。なんと彼は地球から転移現象によりでこの世界にやってきた人物であり、ハーネイトも興味津々な眼差しを彼に向ける。
「吸血鬼、だと?」
「そうですハーネイトさん。何か気になることが」
「もしかして、その吸血鬼は血徒と名乗ってなかったか?攻撃が効かないと言っていたが」
「そ、そうなのですか。あれが現れた前後に、血の海みたいなのが街を襲って飲み込んで」
「当たりか……別世界にまで被害が」
「貴方はそれを知っているのですね、時間のある時に色々聞かせてください」
ハーネイトはミタカの話から、別世界にてかつて自分を初めとした血の怪物こと血徒が暴れており、それに対抗できる存在を集めたチーム、血徒再葬機関のことを思い出しつつ彼に対し、知っていることを後で全て話すと約束した。
「おほん、あたしゃドウラ・コルニチカじゃ。長いこと盗賊稼業しておったがのう、あの腐れ爺に捕まっての、仕方なく協力関係を結んでおったわけじゃ。だが、話には聞いておる。あんたの活躍についてじゃよ」
問題はスプリィーテスが連れてきたと思われる中年のいかつい女性と、ワイルドな格好をした剣士であった。2人ともハーネイトの話を聞いて、合流したいと申し出てきたようである。
「俺ぁマルクス。マルクス・ガブリエル・オルソミアス。DGで第一突撃隊長をしていたものだが、やべえもの見ちまって暗部に追われていたところを、あの爺さんが拾ってくれたわけだ。DGの研究は、恐ろしいものばかりだ」
最後にマルクスが名乗り、これで残りの今集まったメンバーについて情報を得たハーネイトは、流すように彼らを見ながら思っていることを口に出した。
「こうも一気に戦力が……幸い皆さん個性的なのが……」
「喧嘩売ってるのか?」
「そうではない、ウッシュガロー。戦いにおいては専門性もまた重要、というか仕事全般そうですけど。だからこそどういう戦い方や間合いがいいのかを頭に入れておかないと」
「そういうことか、まあそうだな」
「私はどの間合いでもいけるわよ。サイコキネシスの射程は長いんだから」
「見ての通り、俺はヴァンと同じガンナーだ、あいつと同じ運用で構わねえ」
「私はサポートタイプなのであまり前線には……その代わり、諜報や情報収集は自信ありますよ、ええ」
「にしては大きな剣を背負っているのだな、ミタカさんは」
エスメラルダは超能力者らしく、念力で色々動かしたり、風を起こして攻撃などを行うのに長けているという。ウッシュガローは、背中に担いだ長銃からガンナーであることは明白だが、同じ星出身のヴァンとは戦い方が異なるという。そんな中異様に目立つのはミタカが持っている両端が刃となった大剣であった。
「ええ、仕方なく持たされていますが……故郷では武器を持つことなどほとんどなくてですね」
「支援が得意な感じか、人には得手不得手あるし、適する場所で働いてもらうだけだけどね。それで、貴女は……突撃型?機関銃と包丁のような刃物、の組み合わせか」
「へへへ、そうじゃよ。元々盗賊長いことしてたからねえ、速やかに行動を奪うにはこういうのがいいのさハハハ」
「……確かに、私も相手によっては割と似た組み合わせでやりますからね。んで、マルクスさんは、言わずもがなですね」
「この盾剣で、前線に突っ込んで暴れまわる。そういうことだ」
「あのギルド長と似ているな、マースメリアのアブラギッテン……元気にしているだろうか」
「ほうぅ、俺と同じ武器を持っている輩がいるとはな。面白い」
こうして全員の特技や戦い方について聞いて確認したハーネイトは、戦力の割り振りを後で行うことを決めてから話の話題を変える。なぜDGに入っていたのかということである。
「皆さん、様々な理由でDGに入っていたわけですね」
「そうじゃよ、まあ大体はあのじじい絡みなんじゃがな」
「そうね、ある意味命の恩人だけれども何を考えているか分からないところはあるわ」
「そんでもって、この星出身ってのがな」
ハーネイトは一通りもう一度、DGに加入した経緯を聞き、いかにDGという組織が多くの星々を痛めつけ、悲しみの雨を降らせてきたかを思い知らされ憤りを隠せずにいた。
だからこそ、自分は彼らが安定した生活を送ることができるようにするのが仕事だと思い、それと同時にこれから迫る脅威にどう戦える人たちが集まり、参加してもらえるか仕組み作りも求められるなと考えていた。
「ハーネイトさん、でしたか。今までの分を清算するという意味でも、ここで働かせてください」
「DGを潰すためなら、全力でやるわ。あいつらさえ来なければ、私は家族と一緒に暮らせていた」
「ああ、ヴァンの野郎もいるならついていかねえ理由はねえ、頼むぜ」
「まだ生きている敵の幹部どもの情報を渡す、それでいいか? 」
「大分年を取っちまったが、せいぜい使いつぶしてくれよ。お前みたいな若者が多ければ、わしも盗賊なぞにならんかったじゃろうが」
「では、皆さんの編入手続きをしますのでこの書類に必要事項を書いてください」
新たに加入した、DGに属していた脱退組はハーネイトの軍門に下り、新たな生活を手に入れることができた。形式上の書類を全員がきちっと書き、一通り目を通したハーネイトは、改めて彼らを歓迎したうえで、これからの作戦に関して話をする。
「こちらも情報の整理と作戦準備に時間をとらせていただくので、3日後の昼過ぎに全員参加の作戦会議を開くということでいいでしょうか」
「ああ、こちらも準備をしたいのでね」
「万全の状態で臨めるようにしておくわ」
こうして、3日後の作戦会議に向け、ハーネイトも含めたメンバー全員は各自必要な道具をそろえたり、休息を取ったりと新たな戦いに向けた準備をしていたのであった。