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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第一部EX:1 ブラッドル編
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第159話 互いにぶつかる決戦戯(シュペルヴアトゥーク)・グランカルライザーVSソニックエンレイジ


「なっ、お前ら一体何を!」


「先生に、貴様に勝つためにはああ!これしかねえんだよ!」


「やめるんだ!それを使うな、っ、この大バカ者が」


 ハーネイトとシャックスが阻止しようと投げナイフや矢でカードをはじき落そうとするも失敗し、すぐに変身が始まり選手11名は半人半魔の姿になっていた。


「始まりやがったな」


「こっから先どうすんのよ、試合どころじゃないわ!」


「落ち着けリリエット。どうも向こうはああしてまで試合を続けるつもりだ。見てくれ、闘志はまだ消えていない!何より、完全に変化していない。どういうことだ」


 カードにより体が変化していく姿を見たリリエットたちは思わず動きが止まる。


 しかしリヴァイルは冷静に観察し、まだ相手チームは試合をやる気だと見抜いていた。

 

「さあ、続きだ!この力を持って貴様を倒す――!」


「何としてでも戻してやる!」


 エンぺリルは試合続行の意思を示すと変化した10人が一気に走り出した。本来ならば理性も正気も失うはずなのに、向かってくるブラッドラーたちは全員そうではなかった。それは、単純に勝ちたいという意思が魔獣の因子の力を押さえつけ、支配しようとしていたからであった。その答えが不完全な変身状態であった。


 ATたちの突進やMFたちの素早い前線支援がヨハンたちを苦しめていた。先ほどと数倍も力が違う。霊量士たちも先ほどと打って変わって防戦一方となっていた。


「くっ、何てパワーだっ!」


「僕ではとても抑えきれません!」


「これが、デモライズカード、か!」


 圧倒的な野生の力、魔の力に徐々に押されていくボガーたちは、それでも止めようと奮起する。またあのような悲劇を起こすものかと慣れないながらも恵まれた身体能力で対抗してみせる。


「勝負だハーネイト!俺の渾身の必殺技、受けてみやがれ!!!」


「な、全員射線からよけるんだ!」


 そこにエンぺリルが自身の最大奥義を放とうとしてくる。ハーネイトは全員に対し射線上に入るなと命令し、自身はその場にとどまる。


「あの男、ボールを蹴って保持したまま突っ込んできやがる!」


「俺は貴様を乗り越え、天下を取る!グランカルライザーーーーー!」


「受けて立とう、ならばこの私も!伝説の一技、その目に焼き付けるがいい!決戦戯シュペルヴアトゥーク・ソニックエンレイジ!」


 エンぺリルの突進蹴り、グランカルライザーを、ハーネイトはゴールの盾になるように防ぐ形で強烈な回し蹴りを繰り出す。創金術で合金を足に纏い、魔獣の力を得て強大な筋力を手に入れたエンぺリルを受け止めようとする。


「ぐっ、力負けだと!」


「まずい、空中での踏ん張りが弱いな」


「ぐっ、二人の闘気がここまで、近づけないぞ!」


 歴戦のブラッドラーでさえも近づけないほどに、二人のぶつかり合いは苛烈に熱かった。エンぺリルの必殺攻撃、グランカルライザーを止められた選手は全リーグに所属する512名中3人もいない。けれどハーネイトは凶悪で華麗な一撃、ソニックエンレイジで真っ向勝負を挑む。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」


 互いに力を全力で出し合う純粋なやり取り、その光景を見た選手たちはその先を見届けることしかできなかった。


「力のぶつかり合いだ、純粋にな」


「見届けるしかできねえな、これは。だがハーネイト先生、そのまま押し返せ!」


「戦う以外の、あの人の一面。今回の一件でそれが分かる」


「そうねヨハン。彼だって熱い一面はあるのよ。いっけえええええええ!」


 グランカルカイザーを受け止めながらハーネイトは、霊量子を身に纏いそれを噴出することで押し返していく。もはや意地と意地のぶつかり合い。勝負の行方はどうなるか、それがもうすぐ明らかになる。


「これで終わりだエンぺリル!ソニックエンレイジ・ディヴァスターーーーッ!」


「なっ、ぐぉおおおおああああああっ!」


 ハーネイトは勢いに任せ、さらに隠し技であり派生技でもあるディヴァスターを使い、右足を思いっきり振るいエンぺリルを蹴り飛ばした。その一撃でエンぺリルは逆に大きく吹き飛ばされ、自陣のゴールの中に入っていき壁に激突したのであった。


「がはっ、ごっ、はあ、はあ、はあ、なぜ、だ……何故だ…っ!この力をもってしても、敵わねえ、がっ」


「まがい物の、与えられた力だけで何ができる。全く」


 ハーネイトはすぐにエンぺリルの元まで飛んでいき、彼を介抱すると声をかけた。すでに魔獣の影響はほとんどその体から消えていた。エンぺリルは自分で力を制御できるようになっていたのであった。


「一つ言わせてもらうぞ、エンぺリル。ブラッドルにおいて大切なことは何だ!」


「……っ、か、勝つことに決まっている、だろう!」


「それだけじゃあない、チームメンバーで連携し勝利をつかみ取ること、そして純粋にやり取りを楽しむことだ!」


 ハーネイトはエンぺリルがどこかで見失っていた、ブラッドルを純粋に楽しみ、チームのメンバーとともに勝利を分かち合う心を再度説いた。


「危険だと恐れられたこのブラッドルを、私たちは誰もが遊べて鍛えられる球技に作り替えた。その思いを踏みにじるようなことは、許されない」


「……そう、だったな。おかげで誰もが、体を動かして楽しめるようになった、んだったな、へへ」


「ああ。それでエンぺリル。気分の方はどうだ」


「どうにかな、全く……完敗だ。……だが、大切なことを思い出せた、ぜ、先生……俺は」


「初心を忘れるな、何事においても。いつだって戻れる。それと、グランカルカイザー、見事だった。よくぞ磨き上げた。それだけの力があればあれに頼らずとも次世代のブラッドらーを率いられるはずだ」


 いつだって、困難という壁が立ちはだかった時は最初のころを思い出せば打開策が浮かんでくる。成長の伸び悩みで苦労したならば、今一度振り返り問題点を探し改善すればいい。ハーネイトはそう言った自身の考えをもう一度エンぺリルに伝えた。


 その上で、彼の力の結晶であるグランカルライザーの威力は見事だったと称賛したのであった。


「そんでも、まだ敵わねえよ。……やはり、人間の域を超えたなんかなんだろうな、先生……はよ」


「自分でも、まだ頭の整理がつかない。……でもね」


 エンぺリルの言葉の一つ一つがハーネイトに突き刺さる。自身でも気にし続けていたことであり、あの戦いを通じてもどこかで燻っていた気持ち。けれど大事なことを理解したハーネイトは、彼に答えを返した。


「その力を手にしたことにきっと意味があって、成さねばならないことがあるということは、あの戦いで理解できた。たとえ、その道が過酷で辛くても、そう」


「成さねば、ならないこと、か……っ!」


 その時異様な気配を感じハーネイトたちは身構える。と次の瞬間スタンド席の方から白衣を着た男と顔色が悪い兵士たち数十人が銃を構えていた。


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