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神造生体兵器 ハーネイト 二人の英雄王伝説  作者: トッキー
第一部EX:1 ブラッドル編
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第151話 四天王最速の男・サイン・シールシャルート


「フン……!」


「どうしたいきなり!目を覚ませサイン!」


「……っ!」


 ハーネイトはすでにこの男の正体が分かっていた。そう、この男こそハーネイトの昔からの友人で、実質4人目の部下であるサイン・シールシャルートである。しかし様子がどう見てもおかしい。正気を失っているようにしか見えず、ハーネイトはとても困惑していた。


「はあぁっ!」


「相変わらず鋭い蹴りだ、キースさんとほぼ互角だ」


「防戦一方か?らしくないぞ」


「挑発には乗りたくないが、これならどうだ!創金剣術・剣乱ブレイドランブル


 ハーネイトはサインの猛烈な蹴りのラッシュをわずかな動きですべてかわしてみせると宙返りをしながら後方へ距離を取るように飛んで、すぐさま創金術で数本の創金剣を作り出し自身の周囲に展開した。これにより自身の間合いに入ったものを自動的に切り裂く剣の結界を作り出す。攻防一体なハーネイトの好きな技である。


「ハーネイトさん、私たちも加勢しま……っ」


「先生、援護します、ってなぜ!敵じゃあないんですか?」


ハーネイトはハンドサインで手を出すなとリシェルたちに指示した。すでにこの時点でハーネイトも、サインの真の目的を看破していた。


「ふうむ、そうか。アハハハハハハハハハ!」


「……フッ、まあいいか」


 慌てて武器を構えるリシェルとエレクトリールを尻目に、ヴァルターとメッサーは既に何かを察し、どう二人が戦うか高みの見物をしていた。


「でえええぃああああああ!」


「はあああああっ!」


 サインが天井まで瞬時に跳び、逆さまになりながら足に力をためる。それを見たハーネイトは剣乱で生み出した創金剣の切っ先をすべてサインに向ける。とその時、サインは自身が豪速の弾丸と化したようにハーネイトに向かい跳び蹴りをかまそうとした。


 しかしサインの足がハーネイトの胴体をぶち抜こうとした時、すでにハーネイトは紅蓮葬送と創金剣を用いて防御しながら強烈な薙ぎ払いでサインの体を大きく吹き飛ばしたのであった。それに合わせ追撃でハーネイトは展開していた創金剣をすべて射出し壁に激突したサインの周りに突き刺しまくった。


「っ、はあ、やれやれだよまったく。本当にDGの手下になったかと一瞬思った」


「なるわけないだろう全く、……本当に昔からどこか詰めが甘いというか、考えずにやるところは変わらん。そのせいで相当こちらは苦労したのだ」


「っ、その口の悪さも相変わらずだなサイン。だが反論はできないね……」


 サインは大きくよろめきながらも立ち上がり、体についた埃を手早く払いながらハーネイトの目の前まで歩いてきた。すると互いに抱き合い、無事を確かめ合ったのであった。そう、サインは最初から正気など失っていなかったし、DGの手に落ちてもいなかった。すべて彼の演技である。


 ただし彼もハーネイトに対し今回の件で思うところもあり、それについて不満をぶつけるためこういう行動に至ったわけであった。


 けれどそれは、ハーネイトの能力の高さと人柄の良さを認めたうえでのことであり、ただ単に久方ぶりの再会だったためにじゃれあっただけとも言えよう。


「ええ、ええ?敵じゃなかったのですね」


「みてえだなエレクトリール。あの分離したアラフィフと刃男は何か気づいていたみたいだがな」


「無事で、何よりだったサイン」


「魔法協会は再起不能、DGの残党も各地に点在していますがね全く。いくら魔磁気嵐とあの魔女の妨害があったとはいえ、あなたも少しは別の手段で……」


「そうだったね。……返す言葉が本当にない」 


 サインは悪態をつきながらそう言い、ハーネイトは困りながら頭を抱える。昔からこういう関係であり、テッサムやシザッツ、ゼペティックスらの一部の人間にとってはよくある光景であった。最も事情を全く知らないエレクトリールたちはサインのことを誰だお前といわんばかりな表情でそのやり取りを見守っていた。


「はあ、あなたがハーネイトさんの言っていた、旧友さんというあれですね」


「……なっ!なぜだ、なぜだハーネイト!おま、おまっ、あれは最強最悪の戦闘民族、テコリトル人じゃあないか!」


「ええ、ええええ?一目で私のことが?」


 サインは血相を変えて彼女に詰め寄る。そして彼女を見ながら敵意をあらわにする。


「えへへへ、この服を着ていればまあそうですね。でも、私は侵略しに来たのではないです。……ハーネイトさんという素敵な人に出会うために来たのですからね」


「嘘をつくなよ?貴様がDGの中で相当地位の高いところにいたのは把握済みだ」


「サイン、落ち着いて。彼女がいなかったら事件の解決が遅れて、犠牲者が増えていたのだから」

 

 ハーネイトが珍しく荒ぶる彼を止めエレクトリールのことを弁護した。それに彼女はほっとしていた。こうもよくしてくれる人がいたことに、昔自身を助けてくれた男の姿がどうしても重なる。でもそれではいけないと思い、ただただハーネイトの背中を見ていたのであった。


「ったく、さっきも言ったが相変わらずだハーネイト。人の良さが命取りと、今まで何度言ってきたか覚えているか?」


「では、今まで魔印を打ち込み蹴りで倒してきた敵の数は覚えているのかい?」


「質問を質問で返すな」


「何を言う、私はそれでうまくやってきた」


 ハーネイトとサインの妙な言葉の応酬は続く。しかしその内容と反比例し、語気や二人の間の雰囲気はどこか悪友が悪態をつきながら話しているかのようにしか見えなかったのであった。


「確かに、ハーネイトさんは色々お人よしすぎますね。でも、そんなところが好きです。貴方のような強い人が、そういう感じの人でよかったです」


「そうだぜ、サインとかいう兄ちゃんよ!師匠は、魔銃士である俺にも分け隔てなくいろいろ教えてくれたグレイトフルな紳士だ!」


 見たことのない男がいる、しかしその体からあふれ出る気は魔を扱うもの、それに身に着けていた銃からすぐに魔銃士だと察した。新たな仲間が増えたなと思いつつサインはクールな表情を崩さずにハーネイトの方を見る。


「全く、色々と懐かれているな。まあいい、私がいなくてもうまくやれていたようだしな」


「拗ねているの?」


「いや、変わったなと思っただけだ。……これからは正式に、ハーネイトの下に入らせてもらうからな」


「無論だよサイン。……本当に、ありがとう」


「フン……甘ちゃんな貴様を放っておけないからな」


 サインはもはや諦めたような表情でそう言うも、内心はとても嬉しかった。なぜならば、昔のようにまた一緒に、行動を共にできるからであった。


 このサインという人物は本当に出自がややこしい男であり、しかもハーネイトにある点だけ嘘をついていた。異世界、つまり地球から来たのは本当であるが、その実態は転移に巻き込まれ地球に流れ着いた古代バガルタ人である。それについてだけをうまく隠して生きてきたという。彼が地球にいた際は裏社会で生きており、頭の良さから経理系の資格を取ってインテリな極道として生きていたという。その力を生かし、ハーネイトをずっと支えてきたのであった。


 極めつけに、古代人であり龍の因子を2つ持つことが許された適合者でもある。


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